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令和 2年 5月号 197
カツオ銀皮造り刺身
目に青葉、山ホトトギス、初ガツオ
世の中は新型コロナウイルスの影響で人の動きが制限され、経済活動は停滞し、時が止まってしまったような状況となってしまっているが、人間世界のそんな騒動とは無関係に自然はこれまでと変わりなく木々の葉は青味が増し、山では鳥がさえずり、南の暖かい海からはカツオが黒潮にのってやってきている。
下の図にあるように、この5月というのは年間の中でもカツオが日本列島の海沿いに一番近寄ってくる季節であり、近海で漁獲されるカツオ釣り漁船の日帰りが可能となるために、カツオを特に新鮮な状態で刺身や鮨を食するチャンスが多くなる時期でもある。
国立研究開発法人水産研究・開発機構及び国際資源研究所・中央水産研究所が2020年2月3日に発表した日本近海のカツオ春漁予測によると、2018年から今年にかけて黒潮が岸から極端に離れる大蛇行が継続しており、カツオの漁獲にもこのことが影響を及ぼしているようである。
黒潮大蛇行は下の図のように、N,A,B,C,D のパターンがあり、
今年の場合は、以下のようになると予測されている。
この図から判断すると、今年のカツオ春漁は水揚げ量が極端に悪いA型とそれほど悪くないB型の中間の形になるのではないかと見られているようだ。
そして、今年3月中旬から4月上旬まで約1ヶ月間における生鮮釣りカツオの水揚量と平均浜値は以下のようになっている。
カツオの水揚げ量と価格相場の先行きは予断を許すものではないが、世の中の停滞した経済状況からするとカツオの価格が暴騰するようなことは考えられず、それなりに落ち着いた価格で推移していくのではないかと思われる。
カツオの商品化
この季節に日本近海で獲れた鮮度の良い生カツオを扱うのは普通のことであり、水産関係者であればそのことは何ら珍しいことではないと思われるので、これをどのように解体し商品化するかといった工程画像は今更必要ないかもしれない。しかし、もしかすると何か一つでも参考になることもあるかもしれないとの思いで、筆者のやり方を以下に紹介しよう。
カツオの腹皮を分離するまでの解体工程 | |
1,鮮度の良い釣りカツオ | 6,頭部を左手でつかみ、頭部と内蔵部分とを一緒に引っ張り、胴体から外す。 |
2,下身の胸ビレの際に切り込みを入れ、背骨を切り、腹部を三分の一ほどを残して止める。 | 7,胴体部分と内蔵がくっついたままの頭部とを切り離した状態。 |
3,切り込みから肛門まで腹部を縦に切り開く。 | 8,頭部に付いたままの内臓を避けるように、腹皮部分の付け根を切り除去する。 |
4,上身は背骨付近から切り込みを入れ、やはり腹部を三分の一ほど残して包丁を止める。 | 9,腹皮部分が分離された状態。 |
5,腹部の腹びれ部分を切らずに残したまま、肛門まで切り開く。 | 10,腹皮は希少部位の別商品とする。 |
カツオ腹皮の部位は本マグロの大トロと同じであり、カツオの魚体が大きくなればなるほど脂がのって美味しくなるのだが、小型のカツオの場合は腹身が薄く可食部分が少ないために、鮮魚部門ではほとんど捨てられている事実がある。
しかし、カツオの中では一番脂の多いトロの部分だから不味いはずはない。カツオの一大水揚げ地である鹿児島ではカツオ節を工場で作る際に出てくる余剰品として昔から安い大衆品として食べられてきた歴史があり、鹿児島地方の名産品の一つともなっている。例えば、枕崎の料理屋ではこのような形で提供されているとのことだ。
腹皮は鮮度が良ければ、もちろん刺身でも食べられるのだが、何と言っても「蛇腹」の構造をした部位だから、包丁で処理していると形が崩れてしまって見かけが悪くなり、刺身の商品にするのはなかなか難しいと感じる。刺身は腹皮以外の部分でも充分に美味しいので、無理に刺身にすることはなく、画像のように塩焼きなどにするのが一番だと思う。
カツオ本体の部分を刺身にするための三枚おろし作業は、筆者の場合以下のような方法でおこなっている。
カツオの三枚おろし作業工程 | |
1,逆手包丁で下身側背ビレ際の分かれ身下に包丁の切っ先を入れ、頭部側へ切り進む。 | 7,包丁を出刃から柳刃に持ち替え、下身側の尻ビレ際から背骨まで切り開く。 |
2,上身側も同じく逆手包丁で、背ビレ際の分かれ身下に切っ先を入れ、頭部側へ切り進む。 | 8,除去された背ビレの間に柳刃の刃先を入れ込み、背骨まで切り開き、頭部側まで切り離す。 |
3,背ビレの尾部側一番端に包丁の刃元を当て、刃元で軽く叩くようにして切り口を作る。 | 9,上身側の除去は、まず中骨を上にして上身側の尻ビレ際から背骨まで切り開く。 |
4,そのまま包丁の刃元を当て切りながら頭部側へ切り進み、胴体から背ビレを切り離す。 | 10,中骨を上にしたまま、背ビレ際から中骨の下に刃先を入れ込み、背骨まで切り開く。 |
5,下身側にある一部のウロコを、包丁で削るように動かして除去する。 | 11,尾部側の背骨の下に柳刃を入れ込み、そのまま頭部側へと切り進み、中骨を分離する。 |
6,上身側もやはり包丁を削るように動かして、ウロコを残さないように除去する。 | 12,カツオを三枚におろした状態。 |
カツオの場合、筆者は途中から出刃を柳刃に持ち替えて三枚おろし作業をおこなう。全ての工程を出刃でおこなっても良いのだが、身質が柔らかいカツオを始め、他にもシビやハガツオなど小型のカツオマグロ系は身割れを避けるために柳刃を活用することが多い。この方法には賛否両論があるとは思うけれども、とにかく筆者はこれがやりやすいのでこうしているとだけ記しておこう。
次は巻頭画像の銀皮造り刺身の作業工程を紹介しよう。
カツオ銀皮造り刺身の作業工程 | |
1,腹骨を除去する。 | 7,皮を除去した背身は残っている血管を刃先で削るようにして除去する。 |
2,カツオ虫(テンタクラリア)は食べても無害だが、すべて包丁の切っ先を使って除去する。 | 8,背身と腹身に残っている血合いを、V字の形に食い込ませるようにして除去する。 |
3,背身の皮を除去するために、血合い部の背身側に刃先を食い込ませる。 | 9,皮を残した腹身と皮を除去した背身を一緒にした「カツオ銀皮造り短冊セット」の商品 |
4,刃先が皮に届いたら、刃先をL字の角度に変えて左側へ動かし、背身と皮を分離する。 | 10,銀皮造りにするには、腹身の皮に浅く飾り包丁を数本入れる。 |
5,腹身は血合いの腹側に刃先を入れ、そのまま下へと切り込み、腹身を切り離す。 | 11,腹身は銀色の皮が目立つように、少し厚めの感じで平造りにする。 |
6,腹身の皮に残っている小さなウロコを、一つ残らず丁寧に削るようにして切り離す。 | 12,身質が柔らかいカツオは、背身も厚めに切って食感を残すようにする。 |
カツオ銀皮造り刺身の完成 |
実はカツオ銀皮造り刺身をFISH FOOD TIMISで紹介するのは2回目となる。約13年前の平成18年9月号No.33 「タタキ&銀皮造り」で似たような商品を扱っていたのだが、FISH FOOD TIMESがスタートして3年目の時で、まだ今のように時間をかけて力を入れる気持ちがなく内容もお粗末だったので、そのうちに改めてカツオのことを取り上げなければならないと思っていたのである。その思いが今回実現することになったのだが、同じようにしっかりとした記事を書き直さなければならないと思っている魚が、他にもスズキやスルメイカなど幾つか候補があるので、いつかその時が来るだろうと思っている。
銀皮造りとは、カツオの腹身の皮を除去せず付けたまま皮ごと刺身で食べる方法であるが、基本的考えは湯霜や皮霜と同じで、皮の食感と美味しさを楽しむ食べ方である。カツオの腹部の色が銀色なので銀皮と呼ばれていて、基本はそのままの生で食べるけれども、ぬるめのお湯で湯霜をすると少し柔らかくなって食べ易くなる。背身の皮は固すぎるので火などで熱を加えないと食べにくく、腹身だけに通じるやり方である。
銀皮造りを鮨に活用するとこんな方法がある。
カツオ銀皮にぎり鮨タップリ盛り |
680円 |
生カツオは市場相場からすると、サイズの大小、鮮度の善し悪し次第ではあるが、最低300円/kgから700円/kgほどであり、1,000円/kgを超えるのは魚が他に何もない時と見て良く、まあ平均的に500円/kgと見るのが妥当であろう。
仮にカツオが500円/kgほどの価格で手に入れば、歩留まり率33%と見て、鮨ダネを12gカットにして5カン90円、他の鮨ダネが全部で180円、シャリが10カン100円、トレー30円と仮に計算すると合計400円なので、680円の売価なら値入率は40%ほど確保できる計算になる。鮮度感溢れる生カツオのにぎり鮨が他のにぎり鮨と組み合わせて10カン680円の売価なら、これは充分に魅了的な商品となるのではないだろうか。
カツオという魚は価格面でとても魅力的な素材であり、言うまでもなくカツオ節は日本の食文化の基本でもあるのだが、それだけでなく栄養面でも優れた食材であることに以下で少し触れてみたい。
病原菌への抵抗力をつける
新型コロナウイルスの猛威が全世界に吹き荒れているが、このウイルスに感染しないためには、マスクや消毒といった対処療法的な方法よりも、人間として「ウイルスに負けない強い抵抗力をつけること」が一番大事だと思う。
そして、筆者はコロナ騒動が終息した後のことの方を非常に心配している。それは「マスクと消毒が常識の世の中」になってしまうことである。そんな世の中になったら、病気耐性のない弱々しい体質の人間ばかりがゴロゴロ増えてしまうのではないかと考えるからである。
筆者は70歳になった今も風邪をひくのは年に一度あるかないかで、何ら持病もなく、常に病気知らずの丈夫な身体を保持している(家の体組成計では体内年齢45歳が常に表示される)。この健康の秘訣はここ10年ほど藤田紘一郎東京医科歯科大学名誉教授が記された「人の命は腸が9割(ワニブックス)」や「腸をダメにする習慣、鍛える習慣(ワニブックス)」という本に書かれた考え方を、自分なりに出来る限りのレベルで実践しているからだと思っている。
藤田教授はこれらの本の中で次のように記されている。そのポイントを筆者なりに要約して記したい。
腸は「消化・免疫・解毒」の3大機能を担っている 。腸は人体における最大の免疫器官であり、食べたものが吸収されるのは小腸からであり、病原菌が体内に入っても小腸から吸収されなければ病気を防げることから、小腸は人体最大の要塞と呼ばれている免疫システムである。 免疫システムを支えているのが2万種類1,000兆個の腸に棲む共生菌と呼ばれる腸内細菌であり、腸は免疫機能の7割を担っているが、免疫の働きを区別すると感染防衛・健康維持・老化予防に分けられる。風邪やインフルエンザにかかってしまうかどうかは免疫力の強さにより、腸が健全に働いていればウイルスの感染を予防できるし、機能が弱っていれば風邪をひく。 日本人が日々セッセと取り組んでいる殺菌行為は、腸に共生している腸内細菌も傷めつけ、免疫力を自ら弱めている行為である。かつては免疫力の弱い子供の病気と言われたはしか、ノロウイルス、ロタウイルスを発症する大人が増えているが、これは殺菌剤や抗菌剤の乱用にある。免疫力は身近な病原体と戦うごとに鍛えられ強化される。細菌を排除するばかりでは、免疫機能は鍛えられる機会を失い弱体化するだけである。 大腸菌は腸に棲む共生菌であり、人間の生命にとって不可欠な存在である。病原菌が体内に入ってくると退治するために働く番兵のようなもので、腸が消化出来ない食物繊維を分解して自らのエサにすると同時にビタミン類を合成する働きもある。人間は生後1年間に多種多様な細菌を腸に取り込み、腸内細菌叢をいかに豊かに育んだかによって、生涯の健康状態の核が決定づけられる。赤ちゃんはハイハイをして、床についた菌タップリの手を舐めることで免疫力を育てることが出来る。 皮膚には皮膚の脂肪をエサとする多様な常在菌が棲んでいて、常在菌が脂肪を食べると脂肪酸の膜が作られて、皮膚に弱酸性のバリアが出来て病原菌がつくのを防ぐ。しかし、石けんで手洗いをすると皮膚常在菌の約9割がいなくなるし、薬用のうがい薬も喉の健康を守っている菌を激減させる。 皮膚の角質層は皮膚の最上層にあって、外敵の侵入を防ぐ働きをを持つ皮膚の最も硬い部分である。この角質層の細胞は皮脂膜がなくなるとバラバラになってしまい、病原菌やアレルギー物質が侵入しやすくなる。皮膚の隙間から異物が入ってくると免疫システムが反応し、かゆみや湿疹などの炎症を起こす。細菌を遠ざけようと日頃から薬剤を使っていると、免疫機能は怠け、免疫力は低下する。 |
藤田教授は「人が健康で長生きするためには免疫力を上げること。そのためには腸内環境を健康に保つことが大事」だと唱えられている。
筆者は腸内環境を健康に保つための食習慣として毎日必ずやっていることがある。それは藤田教授お勧めの「食前キャベツ」である。これは食事の前に小さなお皿一杯分のキャベツを食べる健康法だ。食物繊維は腸内細菌の大好物であり、食物繊維豊富な食事をしていると、腸内バランスが最良の状態に整いつつ、腸内細菌は数を増やし、動きも活発化して人の命を守る方向へ動き出すとのことだ。こんな簡単なことなので、家ではもう何年もの間、家内が必ず夕食前にお酒の付きだしのように「山盛りキャベツ」を出してくれるし、行きつけの飲み屋のオヤジさんも筆者には黙って「ポン酢のかかった山盛りのキャベツ」を最初に出してくれる。こんな安上がりで簡単な健康法は他にあまりないだろう。
キャベツの他にも、腸内環境を整えるための様々な方法が本に記されているので、読者にはこの本のご一読をお勧めするが、この本にカツオを食べることが良いとは書かれているわけではなく、そのことはこれから簡単に説明することにしよう。
カツオの栄養
人間の身体は20%がタンパク質でできている。そして人間の免疫力を高めるには新陳代謝を促すタンパク質が必要なのだが、カツオには必須アミノ酸がバランス良く含まれた動物性タンパク質が豊富に含まれ、その魚体の四分の一をタンパク質が占めるほど多く、可食部100g当たりの含有量は25.8gであり、24.3gのマグロを上回るのだ。
カツオはタンパク質が豊富なだけでなく、良く知られたDHAやEPAの他に、下の表にあるようにビタミンD、B6、B12、ナイアシンなどが豊富であり、そして最近は長寿ホルモンDHAEを副腎から活性化させるセレンを多く含んでいることが注目されている。
要するに人が抵抗力をつけるためには、カツオのように栄養豊富な魚を主食にして、藤田教授お勧めの味噌汁や納豆、食物繊維豊富な野菜などを副菜として一緒にバランス良く食べることが大切だと筆者は言いたいのである。
バランスの良い食事と充分な睡眠が抵抗力をつける
筆者も新型コロナウイルスの影響を受け会社の売上は半減どころではなくなってしまったが、そのうちにコロナの雨はやむだろうし、真っ暗なコロナ禍に包まれている夜の闇も明けないことはない、と楽観的に考えることにしている。
魚売場を運営している小売り関係者の方々は、店では巣ごもり消費への対応で忙しい思いをされていることだろう。今は特に販促を打たなくても売上は上がっていると推測されるが、やはりウイルス感染の恐れには非常に神経を使われているのではないかと思われる。
筆者自身は先月の初めに新店オープンの応援で忙しい思いをしたけれど、その後は店の現場で汗を流すことはなくなってしまった。しかし4月中旬の過日あるボランタリーチェーン本部から「店の現場で新型コロナウイルスに対応するにあたり気をつけるべき注意点」の参考意見を求められ、そのことを箇条書きの書類としてまとめ提出した。
それが以下の箇条書き一覧であるが、この内容はその会社で何らかの形に加工され、小売店関係先に送付されるとのことである。この内容は読者の皆さんが所属している会社にも関わる内容であり、金銭を伴った極秘文書でも何でもないので、以下にこれを原文のまま皆さんにも紹介したい。ご一読いただいて何か一つでも参考になることがあれば幸いである。
読者の皆さん、御身大切にお仕事にお励みあれ。
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水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新している
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更新日時 令和 2年 5月 1日