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鮮魚コンサルタントが毎月更新する魚の知識と技術のホームページ

令和元年 5月号 185

アオダイ

アオダイ

アオダイ刺身


日本南海域の地域性が強い高級魚

アオダイは、鹿児島や奄美諸島ではホタ、沖縄でシチューマチ、八丈島及び伊豆諸島ではアオゼと呼ばれている。主に漁獲される日本の南方地域では白身の高級魚として存在感を示しているけれど、その他の地域ではほとんど全くといって良いほど知られていない非常に地域性の強い魚である。アオダイの産卵期は7月から8月を中心とした夏の頃であり、産卵前の5月の頃は1年で一番美味しい時期だと言える。

この魚は「あやかりタイ」の一種であり、分類はスズキ系スズキ目スズキ亜目フエダイ科アオダイ属アオダイであり、フエダイ科はフエダイ属、ヒメダイ属、アオダイ属などに分かれていて、約30種類ものたくさんの親戚兄弟が存在している。

アオダイ

東京都の一部である八丈島などで漁獲されたアオダイが送られてくることの多い東京都内では、白身の高級魚として珍重されていて、クセがなく様々な料理に使える魚であることから、主に鮨屋や高級和食店などが仕入れ、都内のスーパー魚売場に並ぶことはほとんどないようである。しかしこれが南西諸島や沖縄のスーパーとなると話は別で、魚売場に丸魚のアオダイやその刺身・切身などが陳列されている光景を見ることは決して珍しいことではない。

アオダイの沖縄での名称であるシチューマチの仕入れ価格は東京都内ほど高値で取引されるわけではないけれど、沖縄の三大高級魚と言われているアカマチ(ハマダイ)、アカジン(スジアラ)、マクブ(シロクラベラ)の次に来るくらいの高級魚扱いをされていると見ればほぼ間違いはない。


魚の皮下脂肪と美味しさ

沖縄ではマチと名が付く魚が何種類もいるが、代表的なマチと言えば相場が高い順に1番はアカマチ(ハマダイ)、2番目にシチューマチ(アオダイ)がきて、3番目がクルキンマチ(ヒメダイ)の順番となるが、その大きさも丁度この順番であり、アカマチは大きすぎることが多々あり、クルキンマチは比較的小さいのが多く、どちらかと言えばその中間のアオダイが一番使い勝手の良い大きさである。

例えばその使い勝手の良い大きさを活用して、以下の画像のような1尾分での姿造り刺身商品化も可能である。

アオダイ

アオダイ(シチューマチ)姿造り

 

今月号の巻頭画像はアオダイの半身分を使用して刺身の商品化をしているが、このように1尾を丸々使い、あしらいも多用した姿造りをすると見た目も良くなり、ボリュームもでるので半身盛り商品よりも価値が高まることになる。

巻頭画像の半身盛り刺身は半身を背身と腹身に分けて刺身にしているが、上画像の姿造りは半身のまま小骨を抜いて平造り刺身にすることによって見た目に大きな違いが出ている。その違いは赤い血合い部分が色鮮やかに際立って見た目の美しさが増すことになっていることだ。

アオダイを含むフエダイ科の仲間に共通している特徴として、ハマダイやヒメダイも同じように「白身と好対照の鮮やかな赤い血合いの色」が挙げられる。

アカマチ クルキンマチ

ハマダイ(アカマチ)平造り ヒメダイ(クルキンマチ)姿造り

 

フエダイ科の魚の血合いが鮮やかに見えるのは、別の見方をすれば皮下脂肪がそれほど多くないという証拠でもあり、養殖魚のような脂肪の多さによる美味しさを期待してはいけないということにもなる。

魚だけでなく畜肉も含めて、食べ物の脂肪というのは「食べ物が美味しい」につながることは、本マグロの大トロや和牛のサーロインを思い浮かべたら納得がいくと思うが、そういうことであれば脂肪が少ないアオダイなどフエダイ科の魚は美味しくないことになるのかと言えば、それはそうではなくアオダイは間違いなく「美味しい」のである。

アオダイは煮ても焼いても身が固くならないし、骨からも旨い出汁がでるのでどんな料理をしても美味しい料理になる。もちろん本マグロなどと比べて脂肪は多くないけれども、生の刺身で食べても美味しいのだ。それは何故なのだろう?


美味しい刺身とは何か

美味しい刺身とは何かと問われて、皆さんはどう答えるだろう。死後硬直前の活魚のコリコリとした歯触りの良い新鮮さを挙げる人もいるかと思われるが、筆者のこれまでの経験からするとアオダイにそのような鮮度レベルを期待するのは基本的に難しいと思うべきである。

そもそも魚が新鮮であるが故に旨みを感じられないこともあることは、魚の旨みの元となるイノシン酸とエネルギーの元となるATPの関係を知っていれば理解できるはずだ。イノシン酸は筋肉を動かすエネルギーを生み出すATPという物質が分解されて出来るものであり、魚が生きている間はATPが分解されてもエネルギーとして再生されるが、魚が死ぬとATPの分解と共にイノシン酸が増すことで魚の旨みも増すことはよく知られた科学的事実である。

刺身で食べるのは魚の筋肉部分であり、筋肉は多くの筋繊維で束ねられた構造になっていて、その筋繊維はコラーゲンなど強度を保つ結合組織という繊維質構造で覆われている。マグロなどの赤身の魚とアオダイのような白身の魚を比べると、アオダイやヒラメなど白身の魚の方が結合組織が多くてしっかりとした筋肉であり、活魚の状態ではなくても刺身の歯応えは強くなる。いっぽうで、マグロやカツオなどの赤身の魚は筋繊維の結合組織が緩くて筋肉中に脂肪が多く、その脂肪の多さなどによって旨みを感じることが出来るのである。

そういう知識を踏まえたうえでの刺身技法のポイントとして、例えば下の左画像にあるカツオの場合は筋繊維が緩い赤身の魚なので、平造り技法を使って刺身を厚く切ると柔らかい身質をカバーできて美味しく食べられることになり、逆に右下画像のヒラメは筋繊維が多くて硬くしっかりしているので、透き通るように薄く切る薄造り技法を使っても歯応えがあって美味しいということになるのである。

カツオ ヒラメ

カツオ平造り ヒラメ薄造り

 

刺身を商品として売る時は、こういった様々な魚種の身質を理解して作る必要があるのだが、昨今のスーパーの魚売場では、このことをどこまで理解して刺身を作っているのか疑問を抱くことも多々見受けられる。刺身を購入したお客様から「美味しかった」と言われ満足してもらえるためには、ただ機械的に切れば良いのではなく、原価を計算して薄く切れば良いのでもない。その魚の身質に合った切り方を優先し、その結果として刺身の売価に相応しい価値を技術的な方法で実現しなければならないのである。

刺身という商品は生で食べる大前提があり、生で食べるためには特に鮮度が重要で、魚に鮮度を求めると大漁の時などの例外を除いて、基本的に鮮度の良い魚を安い価格で仕入れることは難しいことから、刺身商品で安い売価を実現しようとすると様々な無理が生じるものである。無理に安い売価の刺身を実現しようとするよりも、お客様が「食べて美味しかったので又買いたい」と思ってもらえるような価値ある刺身を実現するべきであり、そのために魚の身質を理解したうえでの刺身技法や美味しそうに見せるためのあしらい技法などを駆使し、コストパフォーマンスの高い刺身を作り提供することが出来るように努力するべきなのである。


刺身を美味しそうに見せる技

2013年に和食がユネスコの無形文化遺産として認められたが、その特徴の一つとして「多様で新鮮な食材とその持ち味の尊重」ということが挙げられている。和食の中心的存在である刺身はその特徴を表す一つであり、日本以外で刺身のような新鮮な生魚を使って洗練された形での料理として提供する国は存在しない。

その洗練された刺身を実現するには幾つかの訓練された包丁技術も必要となるのだが、その一つに魚以外の野菜を使って飾り付けをおこなう「あしらい技法」というのがある。以下に筆者が時々使っているあしらい技法の一部を紹介したいと思うが、スーパーの魚売場での商品化が前提なので、時間のかかる複雑なことは出来ないという制約があり、比較的短時間で簡単にできる技法のみの紹介である。

あしらい技法 あしらい技法

上に紹介したアオダイの姿造りはこのなかの幾つかの技法を使って飾り付けをしているが、これらのあしらいの存在によって商品価値はグッと高まっているのは同意していただけるのではないかと思う。

しかしあしらい技法というのは器用な人であれば技が上達するのにそれほど時間はかからないとしても、実際に商品の中に入れ込むとなると何も入れない場合に比べるとプラスアルファの時間が必要となり、作業効率は間違いなくダウンするのである。だから作業効率を優先する会社は、こんな面倒くさい作業はやらなくて良いとなって、刺身に「包丁を使ったあしらい」は存在しないことになる。その替わりに水に戻すだけの簡単な乾燥海藻やちぎって乗せるだけのパセリ、そして工場でカットされた人参ケンなど「包丁を使わないあしらい」が添付されることになるのだ。これはあしらいの簡略化というものであり、訓練されていない未熟練者の誰でも出来ることなので、他社との技術的な差別化は基本的に難しいことになり、この商品化レベルでは価格競争に晒されるのを避けるのは難しい。

和食には「五味五色」という基本的考えがあり、五味とは「甘み・辛み・酸味・苦み・塩味」であり、五色とは「赤・青(緑)・黄・白・黒」のことであるが、刺身においてもその考えは重要であり、単調な色に留めず様々な色を加えて見た目を良くすることで価値を高めることが出来るのである。

下画像は上に紹介したあしらいを使ってハマダイ(アカマチ)を皮湯霜の姿造りに商品化したものであり、様々な色が加わることによって見た目が一段と派手に見栄え良くなっているのではないかと思う。

アカマチ

この商品は単なる技術的な満足のために筆者が遊びで作った姿造りではなく、ある会社の研修での技術訓練において筆者がモデルとして提示したものであり、参加した研修者はこのモデルを参考にして同じようなものができるように訓練をしたのである。

こういう技術を身につけた人材が何人も豊富に存在する会社と、パートさんがマニュアル化された商品を何の工夫もせずに言われたままに作る仕組みの会社や、刺身がセンターで集中的に作られ運搬途中に動いて崩れないようにすることを最優先してパックされた商品が魚売場に並ぶ会社とを比較した時、どの会社がお客様の満足度を高められる商品になるかは明らかであり、お客様が「見た目も良いし美味しかったからまた買おう」というリピーターにつながる店はどの会社なのか特に説明する必要もないだろう。

小売業で繁盛している店というのは「リピーター(安定顧客)が数多く存在している店」であり、バーゲンハンターと呼ばれるような浮動客を相手にする安売りを武器にしている店は、新しくもっと安売りの店が近くに出来たら直ぐに客を奪われてしまうものなのだ。しかしそれとは違って、他社が真似しようとしても簡単には真似できない高い技術を身につけた人材を豊富に揃えた店が魅力的な商品を継続的に出し続けたら、そこの安定顧客は別の新しい安売り店が出来ても簡単にはその店から離れず定着したままであり、そういう店には一次や二次の商圏を超えた遠方からも顧客が増え続け、頭打ちを知らず安定的に売上を伸ばし続けていくことが多いのである。


刺身容器の重要性

しかし今の時代、店の客数の伸びというのはやはり限定的なのが普通であり、売上を伸ばし続けるというのは簡単なことではないのは何処の会社も同じである。繁盛店であっても売上を伸ばし続けるには、様々な手を打ち、頭をひねり、知恵を出す努力、を欠かしてはならないのだ。

魚売場がいつも同じことを繰り返しているだけでは売上も頭打ちになるはずであり、それまでやってきた路線を踏まえたうえで、次の一歩を考えていかなければならない。こと刺身に関して言えば、安売りの大量販売方法では直ぐに限界が見えるはずであり、もし他社と比較して技術的な優位性がある店ならば、その技術力を活して価値を高めた商品をお客様にそれなりの価格で購入していただけるよう、更なる高付加価値商品を提案すべきであろう。

もし鮮度や技術面でお客様からの評価が安定している場合、この更なる高付加価値路線によって商品価格が多少高くなっても、お客様が離れてしまうことをあまり恐れなくて済むはずである。その価値をしっかりアピールできるだけの魅力的な商品を提案すれば、根強いリピーターである安定顧客はその価格変化にあまり頓着せず購入に踏み切ることが多いものである。

小売業がそのようなお客様との素晴らしい信頼関係を実現するためには、刺身の技術者が手を抜くことなく様々な手法にも取り組み続ける必要があり、例えば刺身を入れる容器についても、その辺の競合店の何処でも普通に使っているような普及品を使うのではなく、容器の仕入れ価格が多少高くても、その価値に相応しいものを準備しなければならないのだ。

例えば以下の刺身鉢盛り画像を見てほしい。これらの三つの刺身鉢盛りは筆者が過去に指導先の各社で年末年始商戦での注文用鉢盛りモデルとして作成したものである。どれも1万円前後の売価として作成した商品なのだが、その会社が位置する地域性やその歴史、そして運営スタイルなどを踏まえて、それぞれに違った盛り付けとなっている。 ちなみにこれらの商品の包丁あしらいについては、超繁忙時の年末年始商戦用の鉢盛りということで、敢えてキュウリとレモンのスライスだけに留めていることは申し添えておきたい。

刺身鉢盛り

 

刺身鉢盛り

 

刺身鉢盛り

筆者はこれまで数え切れないほど多くの刺身鉢盛りを作成してきたけれど、基本的には3,000円以上の商品となると、刺身を盛り付ける容器もその商品価値を高める上で大事な要素となってくるのだ。それが1万円ではなく5,000円であっても、刺身鉢盛りが必要とされる食事のシーンを想定したら、そこはお祝いの席や畏まった場所のはずなので、そのような場面に相応しい刺身鉢盛りは立派な容器に入った見かけの良いものであるべきなのだ。

しかし意見として「こんな仕入れ価格の高い立派な容器に入れる必要はない」との声を聞くこともある。筆者が勧めている鉢盛りの容器は、プラスチック製となると一つ300円や500円どころか1,000円にもなるのがあり、後は捨てるだけの容器にそういうコストをかけるのはムダであり、商品に対する資材比率としては高すぎるので、そこまで立派なものは必要ないとの考え方があるのだ。

「お説ごもっともなご意見」のようであるが、筆者は断じてそれは違うと考えている。

一つの例として挙げたいのは食べ物ではないのだが、ある成人の男性が着るもののことを考えてみよう。あるお祝いの席に招かれた男性が、その場に相応しい一張羅の立派なスーツにネクタイを締め、ピカピカに磨かれたコードバンの靴で颯爽と会場に現れた場面と、同じ男性がTシャツに破れたジーンズにサンダルで現れた場合、初めて彼を見た人はどちらを立派な人間と思うだろうか。その人間は全く同じにもかかわらず、その服装次第では立派な人間にも見えるし、逆に必要以上に軽く見られることもあるのだ。

またもう一つ違う例として料理を考えてみよう。世界で和食と対比できるのはフランス料理ではないかと思うが、ある人がドレスコードを要求されるグランメゾン級の立派なフレンチレストランに入ったとしよう。当然ながら、銀のフォークやナイフの間にはマイセンやロイヤルコペンハーゲンなどの立派な食器に入れられて料理が運ばれてくると思い込んでいるのに、ペラペラのアウトドア用の紙皿に入れられて運ばれてきたとしたらどう感じるだろうか。シェフから中身はどれも一緒ですから・・・、と説明されたとしても、一人何万円ものフルコース代金を払う気になるだろうか。

刺身や鮨の鉢盛りという商品は、人間が生活する中で起こる「ハレとケの場」で言えば、間違いなくハレのシーンで必要とされる商品なのだから、その場に相応しい見栄えが必要となるのである。日々生活しているお客様が普通に見慣れたものなんかではなく、年に何回か意を決して鉢盛りという商品に大きな金額を投資してくれるのだから、それは見かけが立派で満足できるものでなければならないのだ。


刺身の値入れ戦略

では価格についてはどうなのかと言えば、鉢盛りといったボリュームの商品となると、お客様は何がどうだから高い安いというのはほぼ判断できないのが普通であり、要するにお客様の懐具合に見合った価格で好みの中身がどれだけ入っているかが重要であり、結果として食べてしまった後の満足度が高いか低いかが一番重要なポイントになり、それが次の購入につながるかどうかになるのである。

つまり鉢盛り商品を販売する側としては、お客様の懐具合に合うような価格展開をすべきであり、例えば最低でも松竹梅の三段階の品揃えによって選択肢を設けると大きな問題は起こらない。それに出来れば松の上位のレベルと梅の下のレベルの二つを増やし、五段階の選択肢を設定すればお客様のニーズにほぼ応えられることになるであろう。

そして最後に、売価と値入率の問題であるが、これについても筆者は明確な指針を持っている。その考えは「鉢盛り商品はロス率がゼロなのだから、荒利益率と同レベルの値入率で良い」ということである。

基本的に鉢盛り商品はあまり高い値入率を狙ってはダメなのだ。一つの商品が何千円もの高単価商品なのだから、他の刺身や鮨商品と同じようにロス率を上乗せした高い値入率をかけようとすると、コストパフォーマンスが崩れてしまう恐れがあるのだ。

筆者は指導先に対して、1万円の鉢盛りであれば40%の値入率で5台販売するよりも、25%の値入率で10台販売することを勧めることにしている。なぜならば、商品内容が容器資材費を含めて6,000円原価の中身と7,500円の場合では、材料費1,500円分でボリュームなり品質なりの違いがだせるので、購入されたお客様の満足度が大きく違ってくるからである。

更には、その鉢盛りが出される食卓のシーンを想定してみてほしい。1万円の鉢盛りを一人で独占して食べるはずはなく、そこには大勢の親しい人たちが集まった場面がそこにはあるはずなので、品質やボリュームのコストパフォーマンスが良くて、しかも何処の料亭に頼んだのかと見まごうばかりの素晴らしい見かけのプラスチック容器に入れられていたら、たぶん主婦であればその話題の一つは「これはどの店に頼んだの。私も今度の正月はこれにしよう・・・」などとなって、それが魅力的な鉢盛りだったら店の広告塔となり得るのである。

自慢するようで申し訳ないが、筆者はこれまでのコンサルタント生活の中で、いくつもの企業をこのような方向性の元に指導を続けてきた結果、刺身や鮨の鉢盛りが年末年始商戦時にお客様からの注文に応じきれないほどの人気店を一つや二つではなく数多く生み出してきた。

そのような高額な鉢盛り商品が、お客様からの注文が多すぎて作業能力を超えてしまい、一部で注文をお断りせざるを得ないような状況となっている店があり、こうなると近くの競合店と価格競争をする必要もなくなり、日々の売上もコンスタントに伸び続けることになるのである。


リピーターを増やして繁盛店にしよう

今月号はアオダイのテーマが刺身に入れ替わってしまったと思われた方もあるのではないかと思うが、実は最初から筆者の意図として、アオダイを利用しながら「刺身という商品とは何ぞや」の一側面を論じてみたいと考えていたのである。

刺身は素人さんが簡単に真似できないプロの世界の一物である。見よう見まねで刺身を切るという動きまでは誰でもそれなりに出来るのだが、これを何種類もの魚も組み合わせ、あしらいなどを加えて何千円もの魅力的な商品にするとなると簡単なことではない。

高価な鉢盛り商品を手慣れた感じで製造できるようになるには、やはりそれなりの訓練期間と数多くの製造機会が必要となるものであり、そのような経験が数多くできる会社はどんどん強くなり、そんなチャンスがほとんどない会社は競争も出来なくなって、お客様から刺身購入先として選ばれなくなり落ちこぼれていくのである。

高価な刺身や鮨の鉢盛り商品がどんどん売れるようになるのは簡単ではない。とても1年や2年で出来上がるような代物なんかではなく、少なくとも5年や10年の歳月を費やしながらお客様の鉢盛り商品への評価を築き上げていくものである。しかし長い年月をかけた努力の結果、お客様からの高い評価が定着すれば後は怖いものはないのである。刺身鉢盛りだけでなく、それに伴って他の商品も高い評価を受けるようになることで全体の売上も下がらなくなるのだ。

今からでも遅くない。5年先10年先に不動の繁盛店として君臨したいならば、効率化、合理化、省力化などにかまけていないで、お客様が本当に求めているものは何かをしっかり探求しなければならないのだ。お客様が「これを買って美味しかったから、もう一度買いたい」と言って再来店されるリピーターが増えていく店にするにはどうすれば良いか、刺身鉢盛りを一つの具体例として様々な観点からしっかり考えてほしいものである。


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更新日時 令和元年 5月 1日