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平成24年 6月号 No.102



コチ薄造り

 


コチが産卵の季節を迎えている。

冬場は外海の深い所で動きを静かにしていて、春から夏には餌を求め活発に動き出す。

4月から7月頃に産卵期を迎え、活発な捕食活動を行うために浅瀬へと移動し、貝類、頭足類、甲殻類などの小型底生動物を捕食する。

湾の奥深くの河口に近い汽水域での活動も平気で、淡水に強いのもコチの特徴だ。

学術的には「雄性先熟」という言葉があり、コチは満2歳頃の35センチ程までは雄で、その後40センチを超えると「雌に性転換」するということだ。

 

 

腹を海底につけて生活する底生魚で、海底の砂泥の中に浅く潜って擬態している。腹側は白っぽいが、背中側の体色は周囲の環境に合わせた保護色となっていて、砂泥などに生息して、その場所に合わせた褐色の地味な体色などに変色している。

その身は透明感のある白身だが、野締めで放置すると身が白濁してしまう。

頭が大きくて歩留まりが悪く、価格も高い魚であり、鮮度が落ちるのが早い魚なので、基本的に価値があるのは「活魚」の時だけだと認識しておくべきだ。


コチはこのように活き物が前提で、歩留まりが悪く、価格が高いという代物だから、下手くそが雑に扱うと全然利益が出ない厄介者になる可能性がある。

コチが手に入ったら、先ず身が締らない内に、丁寧に歩留まり良く調理する必要がある。

ところがコチは三枚におろす時、その形態上魚体がフラフラして安定しないのが難点。

魚体をフラつかせないで解体する方法として、目打ちを使う方法があるので紹介しよう。

 

1, エラの付け値を逆手包丁。

2. 頭部と胴体を切り離す。 

3. 腹部の突端を切り込む。 

4. 肛門先まで大きく切開く。

5. 目打ちを使い安定させる。

6. 背から二枚おろしにする。

7. 上身の背から包丁入れる。

8. 一気に尾まで片面おろし。

 

三枚におろした状態。


三枚おろしで魚体がフラついてやり難い時はこのようにすれば良いのだが、コチが扱いづらいのは、これだけではなくまだこれから先の工程にもある。

下手をすると身はボロボロで、まともに形が残ったのは尾の方だけしかないという、哀れな結果になりかねない難しさは、歪な形で身に食い込んでいる小骨の存在だ。

コチの小骨は、とにかく固く身にしつこく絡んでいるので、骨抜きでも簡単に抜けない。

あまり無理矢理に骨を引っ張ると、たくさんの身が一緒についてきてしまったり、長い小骨が途中で切れて部分的に残ってしまったりする恐れもある。

そこで、そのような不安材料を少しでも無くすための方法が以下の画像である。

 

1. 一際大きい胸ビレを除去する。 

2. 腹骨を切るように柳刃を入れる。

3. 皮一枚残して包丁を止める。  

4. 腹骨を付けたまま皮を除去する。

5. 背腹の皮を同時に除去した状態。

6. 背と腹を分離する。      

7. 腹骨の下に包丁を入れる。   

8. 腹骨をめくるようにして除去。 

   9. 魚体の厄介な小骨を丁寧に抜き取る。

10. 小骨はスンナリと取れない。   

 

薄造りで刺身に仕上げる。

 

 

コチは「夏のフグ」とも呼ばれるので、テッサ風にしてみると、

容器を変えて、こんな盛り方もあるが・・・

 

 

こんなボリュームしかなくても、原価を弾くとそれなりのものになる。

やはり随分高くつくものだ、と溜息が・・・

そこで刺身のように見た目の貧相さを回避する美味しい食べ方として、少しだけひねった揚げもの料理を紹介しよう。


コチの梅肉揚げ

1、天ぷら用にカットする 2,小麦粉をまぶす 3,左は梅肉、右は大葉の千切り

4,小麦粉に梅肉、大葉の千切りを入れる 5,冷水を入れ、混ぜ合わせて天ぷら衣をつくる 6,小麦粉を付けたコチを衣にまぶす

7,170℃〜180℃の油の中に入れる 8,大葉は裏面だけに衣を付けて揚げる 9,春雨を半分に切り、素揚げする

 

 

コチという魚はその上身だけを刺身で食べようとすると、ボリューム感が無くコストパフォーマンスの悪さを感じてしまうが、大きな胸ビレや中骨などもあり、これも揚げ物にすると美味しく食べることが出来る。

年間の中で一番美味しく食べられるこの時期に、一度は賞味してみたい魚だ。

まさに今の旬魚を味わう候補として、コチもその一つに挙げてほしいものである。



更新日時 平成24年 6月 1日


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