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平成29年 4月号 160
メナダ薄造り刺身
今月号も良く似た魚
見た目が似ていることが一つの特徴となっている魚を2ヶ月続けたわけではないのだが、結果的にそのようになってしまった。
さて、どちらが何と言う名前の魚かお判りだろうか。
実は平成27年FISH FOOD TIMES12月号 No.144, No.145でボラを特集した時に、この魚のことについて少し触れていた。
上の二つの画像の上の方が、ボラ亜系ボラ目ボラ科メナダ属メナダである。その名前は福岡や佐賀地方ではヤスミ、岡山でシュクチ(朱口)とかアカメ(赤目)、広島ではヒクチ(緋口)などと呼ばれており、下の画像のように「赤い眼」や「赤い口」をしていて、全体的に赤っぽい姿が特徴である。
上の二つの画像の下の方は、ボラ亜系ボラ目ボラ科ボラ属に属するボラであり、ボラの旬は冬の12月から1月頃であるが、メナダの旬は春から夏にかけての頃であり、ボラより脂肪分が控えめで生臭さもなく、上品な味の白身はボラとは比べものにならない高級な魚として取引されている。
しかし下の2枚の画像のように、頭部をアップしたものを見ると、まるで蛇が敵と格闘して血まみれになって、何かを飲み込んで睨んでいるような凄みがあり、気の弱い人はこの画像を見ると怖気づくのではないかとも思われる。
メナダの産卵期は4月から5月にかけてであり、卵巣はボラと同じようにカラスミの原料にもされ、ボラを漁獲する時、その中に100尾中の1尾くらいの割合でメナダが混じっているという希少性が高値で取引される理由にもなっているようだ。
有明海に面する地方では、メナダもボラと同じように成長するに従って、エビナゴ→エビナ→アカメ→ヤスミ→ナヨシと名前が変わり、出世する目出度い魚なのである。
インターバル静止画撮影
さてこれから、メナダの調理と商品化の工程へと入っていきたいと思うが、今回は単独でインターバル自動撮影が出来るカメラ機能を導入したので、以下のような形で紹介しよう。
インターバルの静止画を記録するくらいなら、タイムラプス動画にした方が良いのではないかという意見もあると思われるが、これに関しては以前 FISH FOOD TIMES平成28年1月号No.145 (「なまず(川あんこう)の解体」<なまずの刺身とにぎり鮨> https://youtu.be/3Z5xB3vodSM)の時に、ナマズの解体工程を動画にして発表したことがあるけれど、その約12分間(もちろん不要部分はカットした編集済み)の動画というのは変に時間が長く感じられ、筆者としては「FISH FOOD TIMESの内容に動画は向かない、ダメだ・・・」との結論に達していたのだ。
これは10秒間隔での自動インターバル撮影をしており、後から必要と思われる部分だけを抜粋しているつもりだが、ここまで静止画の枚数は必要ないと感じられる人は、どうぞ画像を飛ばして見てもらって結構である。
メナダの解体と皮ひきまでの工程 | |||
---|---|---|---|
1、ウロコを取った後、エラ膜を切る。 | 2、顎の付け根から腹部を切り開く。 | 3、エラの付け根を2ヶ所切り離す。 | 4、エラを含む内臓を取り除く。 |
5、背骨に張り付いた血合い膜を包丁の切っ先で切る。 | 6、流水で血合いや内臓の残りなどを洗い流す。 | 7、タスキ落としの角度で切り込み、刃元を背骨まで切り入れる。 | 8、上身側もタスキ落としの角度で切り開き、刃先を背骨まで切り込む。 |
9、頭部を包丁の刃元で切り離す。 | 10、下身側の尻ビレの上を切り開く。 | 11、下身側の背ビレの際に切り込みを入れる。 | 12、背ビレの際から、中骨の上に刃先を滑らせて、背身を切り開く。 |
13、尾ビレの方から刃先を頭部に向けて動かして、下身を切り離す。 | 14、尾ビレ側の一部を切り離す。 | 15、二枚おろしが終了した状態。 | 16、上身側の背ビレの際から切り開く。 |
17、背骨まで切り開いたら、次に腹骨を押し切りする。 | 18、腹骨を切った後はそのまま尻ビレの方へ切り進んでいく。 | 19、上身の腹骨は、出刃包丁の刃先を骨の下に押し入れる。 | 20、腹部の形を整えるようにして、腹骨を切り離す。 |
21、下身の腹骨の下には、出刃包丁の刃元で切り込みを入れる。 | 22、刃先を引くように動かして、腹骨の下を切り開く。 | 23、腹部の形を整えるように、真っ直ぐに切り込みを入れる。 | 24、腹骨を切り離す。 |
25、尾ビレ近くに、皮一枚薄く残して切り込みを入れる。 | 26、皮を左側に強く引き、包丁の刃先を右の方へ動かす。 | 27、下身側も皮を左に引っ張り、包丁を前後に動かして皮を分離する。 | 28、下身側の皮を引いた状態。 |
ムニエル
次に、皮を除去した半身を四つ切りにして、その切身をムニエルにするための工程は以下のようになる。
メナダの切身とムニエルの工程 | |||
---|---|---|---|
1、頭部の切り口の角度に平行になるように切り始める。 | 2、切身が平行な角度を保つように切る。 | 3、切身がだいたい同じような大きさになるよう心がける。 | 4、半身を四つに切り分けた状態。 |
メナダの切身 | |||
1、切身に塩コショウをして、小麦粉をつける。 | 2、バターを溶かす。 | 3、フライパンに小麦粉をつけた切身を並べる。 | 4、中火で両面を焼く。 |
メナダのムニエル |
にぎり鮨
次は残りの半身を鮨にする工程である。
メナダのにぎり鮨工程 | |||
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1、皮を除去した後、表面の黒い部分が目立つ。 | 2、赤い色を際立たせるために黒い部分を削る。 | 3、サイドの黄色い脂肪の部分も削る。 | 4、削り取って赤さが目立つようになった。 |
5、下身を半身のまま鮨ネタにする。 | 6、下身は左の姿勢で、皮目を下にして切る。 | 7、切角を立てるために峰を起こして切り離す。 | 8、頭側から途中まで12切れカット。 |
メナダのにぎり鮨7カン | メナダのにぎり鮨5カン |
薄造り刺身
半身のうちの頭の方から12切れ分だけを鮨ネタに回したら、後の残りは薄造り刺身にする。
メナダの薄造り刺身工程 | |||
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1、鮨ネタを切った残りの部分で刺身にする。 | 2、残りの部分を背身と腹身に分離する。 | 3、背身は右の姿勢で、皮目を上にして薄造りにする。 | 4、柳刃は箸代わりに使い、形を整える。 |
5、腹身は左の姿勢で皮目を下にして削ぎ造りにする。 | 6、柳刃の峰を起こして手前に引き、刺身の切り角を立てる。 | 7、削ぎ造りの刺身は切った面を上に裏返し、親指でつまみあげる。 | 8、つまんだ削ぎ造り刺身は、右側から順に左へ盛り付けていく。 |
メナダ薄造り刺身 |
注目されていない美味しい魚
メナダは美味しい魚である。1尾の価格はボラに比べると高いけれど、比較的大きい魚体の割には手の届かない価格になる訳でもなく、コストパフォーマンスは良い方の魚である。
ボラは時間が経過すると血合いが黒っぽく変色するので、刺身では敬遠されることが多いが、メナダの場合はボラほどの急激な変色は見られず、上の工程画像にあるように元々黒っぽい部位や黄色い脂肪の部分を少しだけ薄く削るなどの手を加えると、血合いの赤い色が長く保たれて刺身は美味しそうな見栄えを長く持続することができる。
メナダの漁獲は比較的西日本の地域に多いようだが、日本では北海道を含む全国の内湾や汽水域にはどこにでもそれなりに棲息しているようであり、東日本や北日本ではあまり馴染みがないために漁獲対象から外れていることで、目にすることが少ないのではないかと思われる。
4月以降の春から初夏にかけてメナダが一番美味しくなる季節である。見た目はボラに似ているけれども、中身はずいぶん違う価値のある魚でもあり、あまり注目もされていない魚であるだけに、扱い方を上手にすれば利益貢献度の高い魚とすることができるであろう。
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更新日時 平成29年 4月1日