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平成28年 7月号 151-2
アカエイ料理
アカエイは前ページで記した刺身や鮨だけでなく、加熱した料理も色々と可能である。
アカエイを栄養面からみると、カロリーは200gの切身で168kcal、100g換算では84kcalである。特にたんぱく質が突出して多く38.2gもある。脂質は0.6gと非常に少なく、ビタミン・ミネラルではビタミンB12とビタミンDの成分が比較的高い、とある調査で発表されている。
このタンパク質が多い事実というのは、脊椎動物の真皮、靱帯、腱、骨、軟骨などを構成するタンパク質の一つであるコラーゲンがアカエイには多いことを示しており、これを活用した料理も以下に紹介したい。
まずは煮付けである。
アカエイの煮付け | |
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1、3p幅の等間隔で切る。 | 7、湯霜を終えたら、氷水に入れて冷やす。 |
2、幅を同じように切り揃える。 | 8、ザルに入れて水切りする。 |
3、違う長さの切身をサイコロ状に切り揃える。 | 9、少なめの煮汁を沸騰させる。 |
4、全てを同じような大きさにする。 | 10、沸騰したら切身を入れる。 |
5、アカエイを販売する際は、比較的安値なのでたっぷりと大盛りにする。 | 11、強火で加熱し、沸騰したらアルミホイルを被せて煮汁が回るのを待つ |
6、沸騰したお湯に入れて湯霜する。 | 12、10分ほど加熱したら出来上がり |
アカエイの煮付け |
次は竜田揚げ。
アカエイの竜田揚げ | |
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1、アカエイの切身を水切りする。 | 7、1時間以上漬け汁になじませる。 |
2、切身を鍋に移し、ブラックペッパーを降りかける。 | 8、小麦粉と片栗粉を半々混ぜる。 |
3、生姜とニンニクを小さじ二分の一分擦りおろす。 | 9、小麦粉と片栗粉を漬け汁が馴染んだ切身にかける。 |
4、日本酒を大さじ二杯加える。 | 10、小麦粉と片栗粉を混ぜ合わせる。 |
5、醤油大さじ二杯加え、溶き卵を半分入れ、漬け汁をつくる。 | 11、170℃の油で二分ほど揚げる。 |
6、切身に漬け汁をかける。 | 12、バットで油を切る。 |
アカエイの竜田揚げ完成 | |
竜田揚げに大根おろしのポン酢を和えた一品 |
次に番外編として煮凍りに注目した。アカエイだけでなくアンコウやフグなどのウロコのない魚は概してコラーゲンがたっぷりで煮ると煮凍りができる。
フグは煮付けの副産物などではなく、コース料理の中に立派な料理の一つとして入っているほどなのだが、アカエイでわざわざ煮凍りを作ったなどというのはあまり聞いたことがないので、今回試しに作ってみることにしたのである。
アカエイ煮凍りの作り方 | |
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1、アカエイの煮付けは冷めると、こんな煮凍りができて美味しい副産物だ | 4、中の具を取り出し煮汁を漉す。 |
2、煮凍りを副産物ではなく、料理として楽しむために、見た目の良くない部位を集めて煮付けにする。 | 5、蕗を煮汁と一緒に軽く煮込み、後で薄切りのニンジンを加え、粗熱をとり冷蔵庫で冷やす。 |
3、30分ほど弱火でコトコト煮る。 | 6、容器から取り出しカットする。 |
アカエイの煮凍りが完成 |
今回はこうして一般的にあまり馴染みのないアカエイを使って以上のように様々な料理を試してみた。
アカエイの大きさは約4.5kgで、仕入れ価格は1尾1,000円だったのだが、もちろんこれは馴染みの私によくしてくれる魚屋さんに特別なお願いをしていたので、価格も儲けなしの特別なものだったという事情はあるにしても、アカエイはそれこそ「何処の誰にも注目されない魚」であるゆえに、それほど高い価格になることもまた有り得ない。
今回この記事のために、何処かの店でアカエイ料理を食べてみたいものだと思って、ネットを中心に方々に色々手を尽くして探してみたのだが、博多の近辺にそれらしき看板を出している店は皆無だった。
たぶん日本でエイの料理をいつでも必ず確実に食べようと思えば、以下のこれしかないのだろう。
生のアカエイを仕入れた店の塩干売場に品揃えされていたエイヒレの干物商品で、1パックに5枚入りで94g262円のベトナム産だった。
しかしこれは上の右画像のように軽く焼いて食べてみると、味はとても良いのだが表面に付着している唐辛子の輪切りがとんでもない辛さであり、食べた後しばらくは口の中がヒリヒリして何も入らない状態だったのだ。
そこで今度は唐辛子を指で外して食べると辛さそのものはやわらいだのだが、その後何気なく唐辛子を扱った指を自分の顔に当てたようで、今度は指で触った顔面がしばらくヒリヒリするということになって、この唐辛子は本当に何という辛さのレベルだと驚いてしまったのだった。
これは想像するに、この商品の辛さの狙いは日本ではなく、たぶん韓国向けの仕様ではないかと思われた。
筆者は昨年10月末に韓国の釜山を訪れた時、滞在したホテルの横の道路に日干しされていたのが下の画像である。これはエイの干物であり、店の前で何の違和感もなく普通にこうやって干されていたのだった。
韓国の人にとってエイ料理というのはホンオ料理と呼ばれ、ホンオフェ(刺身)、ホンオチム(蒸し煮)、ホンオジョン(てんぷら)、ホンオタン(鍋)、ホンオネクッ(レバーと麦芽のスープ)、などいろいろな形で食べられるようである。
このように韓国ではエイがよく食べられているし、しかも唐辛子大好きな韓国という二つの条件が揃っていたから、このエイヒレは「韓国向け仕様が日本で販売されている」と考えたのである。
さて、今月号もそろそろ終わりにしよう。
今や日本では魚の食べものとして全く注目されていないアカエイではあるが、所変われば韓国ではエイの様々な料理が専門店として何軒も成り立つほどの存在のようなのである。
アカエイ料理を食べてみて分かったのは、アカエイは見た目は少しグロテスクではあるけれども、決して不味い魚ではないということである。
今の日本では脂肪たっぷりの養殖魚がもてはやされているけれど、アカエイはその反対に脂肪はほとんどなくて肝臓にまとまっており、身の方はタンパク質のコラーゲンたっぷりという特徴を備えていて、時代の流れからは少しずれた毛色の違う魚であることは間違いない。
しかしだからと言って、見向きもしないというのは如何なものかと思うものがある。
アカエイは比較的手頃な価格で手に入る魚でもあるのだから、お客様へ食べ方の提案などを一度やってみてはどうなのだろう・・・。
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更新日時 平成28年 7月1日