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サヨリ刺身姿造り・サヨリにぎり鮨・サヨリ酢の物
今年の厳しい冬はまだまだ終わりが見えず、寒さに凍えている北の地方もあるようだが、その一方で日本の南の方ではいよいよ冬も終わりが近づき、春の気配が感じられるようになってきた。
そして魚の水揚げの顔ぶれも、春がやってきたことを知らせる魚達が目立つようになっている。
その春を告げる魚の一つとして挙げられるのが針魚(サヨリ)である。
サヨリは海藻の多く茂る岩場に棲息していて、春になると内湾の奥深くまで入って産卵をするので、春の時期に水揚げが多くなる。
魚名に針の字が当てられるのは、口の先端の尖った下アゴが針のように細くて長いからなのか、それとも銀色に輝く身体全体がやはり針のように細長いからなのか、そのどちらを指しているのか分からないが、まあそれはどちらでも良いだろう。
ようするに細長い魚であり、魚体は青白く銀色に輝き、その身は透き通るほどの白身である。
魚類の中では非常に見た目が良いほうであり、その姿から繊細な印象で見られるために、人間でいえば「細面の美人」のように扱われる魚である。
左下のイラストは右のサヨリ画像を人間風に模したものであり、こんな感じの女性のように見られているようである。
ところがこの美人(美魚?)は見かけによらず「腹黒な女」に喩えられている。
それはこのように腹の腹腔膜が真っ黒なので「見かけは美人でも腹の中で何を考えているのか分からない腹黒い女」ということなのである。
半透明の身体をした魚の仲間は、成長して餌が動物プランクトンから植物プランクトンへと移行する時期に日の光を浴びると、消化管に取り込まれた植物プランクトンが光合成して酸素の気泡が発生し、消化管が膨れて浮き袋となることで、水面に腹を上にしてしまうという問題が起こり得る。
サヨリも成長すると海藻も食べるようになるため、このように腹腔膜が黒い色というのは、黒い色の膜を遮光カーテンとすることで光を遮り、食べた海藻の光合成を抑制する目的があるようなのだ。
サヨリを料理する時、この黒い膜は生臭みの元になるので、歯ブラシなどを使ってきれいに掠り取る必要がある。
黒い膜を取って、次に三枚おろしにする方法としては魚体が細長いので大名おろしが都合良い。
三枚におろし、腹骨は除去していない状態。
腹骨を除去した後に皮をすく時、サヨリの薄い皮を途中で切ってしまわないようにするポイントは、腹を開ける前に肛門の近くの魚体後部にある腹ビレを、上画像のように包丁の刃元を使い、テコの原理を応用して引っ張り外しておく。
外引きで皮を取る場合はこのように包丁の峰を使うと皮が途中で切れにくい。
端を切り揃えて、刺身用短冊商品とする。
小型のサヨリの場合は、半身分で1カンのにぎり鮨にする。
半身を3分けか4分けにした刺身の短冊造り。
短冊を薄造りすると、
巻頭画像のサヨリ刺身姿造りが出来る。
酢の物にする場合は、
振り塩をして身を締める。
酢醤油に漬け込み、柑橘類で隠し味をつける。
細く切り刻む。
盛り付けて巻頭画像の酢ノ物が完成。
サヨリは小型で細長い魚体をしているためボリューム感がないので、開きにすると多少見かけは良くなる。
背開きにするためにカマと頭の間に中骨まで包丁を入れる。
頭の方から尾の方へ向けて、中骨の上を滑らせるように開いていく。
頭付きサヨリ背開きの出来上がり。
突き出た針のような下あごは途中でカットして盛り付ける。
サヨリは小さな魚だがその上品な味ゆえに日本料理には使い勝手が良く、和食の職人さんには重宝される魚の一つでもあるので、その料理用途の一部を以下に紹介しよう。
サヨリ商品化の各種 | |
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1、頭を落として背開きにする。 | 7、頭の方から巻いて天ぷら用のサヨリ紫蘇巻きが完成。 |
2、内臓を除去し、下身側から中骨の上に包丁を入れる。 | 1、サヨリの背開きを尾ビレを残して二つに分ける。 |
3、包丁で中骨と身を分離する。 | 2、結びサヨリ(天ぷら用) |
4、柳刃で腹骨を欠き取る。 | 1、骨なしサヨリ半身の真ん中に大きな縦の穴を開ける。 |
5、塩コショウを振って下味をつける。 | 2、穴の両端に指を入れて捻る。 |
6、大葉を開いた身の方におく。 | 3、穴の中に右端と左端の身を入れる(椀種) |
サヨリの天ぷら・椀種用商品 |
さて、今号ではここまでサヨリの様々なSKUを紹介してきたが、あなたのお店でサヨリはどんな商品として売られているのであろう。
サヨリは3月から5月頃までの時期に水揚げが多くなる魚なので、春の季節到来を告げる魚の一つとして数え上げられるが、サヨリと同じダツ目の仲間であるトビウオは夏が旬であり、更に同じダツ目のサンマは秋である。
季節に相応しい魚ということを考えると、3月はサンマでもトビウオでもなく、やはり春の季節を訴える魚として「サヨリ」をより多く販売してほしいということになる。
サヨリはサンマと同じで、大きければ大きいほど価格は上がっていくので、多少小さくて扱いが面倒な安い価格のサヨリが手に入ったら、それらに今号で色々と紹介した方法で手間をかければ、きっと面白いほど妙味のある売価の商品に変身させることが出来ることであろう。
サヨリという魚の美味しさをこの機会にお客様に知らせてほしいものである。
更新日時 平成27年 3月 1日 |
食品商業寄稿文
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