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平成28年 5月号 149
スジアラ炙り刺身
正式和名スジアラ、これが沖縄で赤仁ミーバイ、奄美ではハージンネバリと呼ばれている。
このスジアラは、以下の画像のように沖縄県那覇市にあるスーパーの生魚対面売場で、1尾15,800円の売価がつけられ売られていた。
画像の中の養殖マダイの大きさが1.5kg前後だから、右上にあるスジアラは相当大きいことを理解できると思うが、筆者はこの約6kg強のスジアラの商品化を任された。
スジアラはスズキ系スズキ目スズキ亜目ハタ科ハタ亜科スジアラ属に属し、ハタ科の仲間は大型になり派手に美しい色のものも多く、総じて味も良いので高級食材として有名だが、中でもこのスジアラは沖縄で三大高級魚の一つとして数え上げられている。
ちなみに沖縄の三大高級魚とは、アカジン(スジアラ)、アカマチ(ハマダイ)、マクブ(シロクロベラ)であり、弊紙FISH FOOD TIMESでは、過去に No.136 ハマダイの骨付き頭付き切身(平成27年4月号)、No.89 マクブ湯霜薄造り(平成23年5月号)において他の2魚種についても取りあげており、読者の皆さんはこちらも参考にしていただきたい。
その時に取りあげた巻頭画像は、左下がマクブの湯霜造り、右下がアカマチの切身である。
FISH FOOD TIMESは、今回のアカジンで沖縄の三大高級魚すべてを扱うことになり、言わば三大高級魚を「制覇」したと言える。
三魚種の中でもスズキ目ハタ科スジアラ属に属するハタ科の仲間でもあるスジアラ(アカジン)は、一番大きくなり、価格も一番高く、味も一番良い、まさに本物の超高級魚と言える存在である。
ハタ科の仲間については No.108 アラちゃんこ鍋(平成24年 12月号)でも触れているので参考にして欲しいが、2016年3月時点の築地市場におけるハタの平均卸価格は2,752円/kgであり、この取引価格が高級魚であることを示しており、各月の過去5年間(2011年〜2015年)のハタの平均卸値は、12月と1月が3,000円/kgを超えて最も高く、最も安い5月でも1,700円/kg円ほどとなっている。
高級魚のスジアラは刺身と鮨で売り切るのが最も消化しやすい方法なのだが、ハタ科の魚は肉だけでなく骨や皮からも強い旨味が出るので、この魚を上手に料理として使い切るために、店ではお客様に切身でも購入してもらえるように勧めたいものだ。(以降の記述はアカジンで統一)
アカジンの切身 | |
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1、ハタ科の魚はエラの裏側に硬い針のような突起物があり、素手で触ると痛い思いをするが、取り出した内臓も捨てずに商品として活用したい。 | 3、腹身は切身にすると価値感を出せないが、皮が薄いことから炙りに適しているので、刺身と鮨の炙りにするため切身にはしない。 |
2、半身は三枚におろさず、骨つきのまま切身用にする。 | 4、背身の部分だけではなく、頭部もカマ部も商品として活用する。 |
5、腹身は含まず、骨付背身と頭部で切身を商品化。量は半身の三分の二と見て1尾売価から単純に換算すると、1パックは売価650円の高級切身となる。 |
次は刺身である。
中骨なしの下身の方は背と腹に分け、背身の方だけを皮すきする。
腹身は上身も下身も両方とも炙りにするために、皮を残したまま砕氷の上に並べる。
バーナーで皮の表面を炙る。
炙りにした皮の表面を下にして、炙って熱を帯びた皮を氷で冷やす。
そして皮を炙りにした腹身を、以下のように刺身とにぎり鮨の商品にした。
アカジン炙り平造り | アカジン炙りにぎり鮨 |
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今度は皮なしの背身を刺身とにぎり鮨にする。
骨なしの下身を背と腹に分けた後、皮なしの背身の方を使う。
魚体が大きいので、背身を二つ割にする。
アカジン平造り | アカジンにぎり鮨 |
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皮なしと炙りを別々ではなく、一緒に盛り付けてみた。
スジアラは普通に皮を除去して刺身にするのも良いが、ハマダイ(アカマチ)のように皮が硬くないので湯霜や炙りでも美味しいことから、このように皮を活かしながらの変化を取り入れた価値感のある商品に仕上げるのが良いだろう。
いっぽう生のままではなくて火を通した料理については、今回その機会を設けることができなかったので、料理店の画像を拝借して紹介しよう。
沖縄県那覇市 漁師の店 酒菜処 あぐん茶 アカジンマース煮 |
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アカジンは骨から良い味が出るので、アカジンマース煮は汁が美味しいのだが、このことを利用して「沖縄そば」を作ると最高の味になるとのことである。この作り方は骨を網焼きにした後にネギなど香味野菜を入れ、じっくりダシをとり、かつおダシを加えて塩だけで味付けすると「上質で上品な驚くほどの旨味」が出るとのことだ。
高級魚のアカジンは、国内で1,500〜3,500円/kg、国外では中華圏でも人気が高いことにより10,000〜20,000万円/kgで取引されているということであり、まだ天然の水揚げだけに頼っていることから流通量も少なくてこのような高値となっているのだが、ここ最近は本格的なアカジン養殖に向けた取り組みも始まっている。
ハタ類の養殖についてはヤイトハタで既に確立されており、鍋料理などの具材として沖縄から本土方面に向けて安定的に出荷されているなかで、アカジンは亜熱帯研究センターが種苗生産をほぼ確立したことを活用し、石垣市はその陸上養殖に向けてセンターの技術指導を受けながら種苗供給施設で試験養殖に取り組んできていた。
そして2016年2月16日に、石垣市は水槽でアカジンを稚魚から育成し、約2年をかけて出荷サイズの500g以上に成長させて、陸上養殖に初めて成功したと発表し、石垣市は新たな養殖場の整備などを視野にアカジン養殖事業の展開を構想しているとのことである。
価格の高さから、なかなか口にすることの出来ない高級魚アカジンも、本格養殖が開始されればそのうちに一般庶民も少しは手に届き易い値段下がってくれるのではないかと期待したいところである。
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更新日時 平成28年 5月1日