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寒メジナにぎり鮨(天然・養殖)
正式和名はメジナであるが、関西地方ではグレと呼ばれ、面白いことに動物分類学上での属はGirella Gray であり、学名は Girella punctata Gray なのである。
まるで、Grayの学名をそのままグレと地方名にしたようではないか・・・。
地方名はグレだけではなく、クチブト(関東)、ヒコヤ(北陸)、ツカヤ(丹後)、クロヤ(山口)、クロアイ(山陰)、クロ (九州)、シツオ(鹿児島)など、全国各地で様々な呼び方をされている。
釣人の間では、波止釣りや礒釣りの対象として人気があるけれども、一般的に食用としては必ずしも人気があるとは言えないものがあり、その原因として考えられるのは見た目の色が黒いため、その黒っぽい姿があまり美味しそうには見えないのかもしれない。
その姿は以下の画像であり、メジナとよく似たクロメジナと並べている。
画像の上の魚が一定期間畜養をしていた養殖もののクロメジナで、下は天然のメジナだ。
上画像 | 畜養クロメジナ |
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下画像 | 天然メジナ |
これらの魚は天然で大きさが同じような場合、よく似ているので簡単に見分けがつかず、その特徴の一つ一つを確認しなければならない。
先ず上画像のクロメジナであるが、尾長メジナとも呼ばれているように、尾ビレの先端が長く、尾ビレが湾のように大きく曲がっているのが一つの大きな特徴である。
画像のクロメジナは畜養されている間に尾ビレの先端上部が下画像のように赤くなり、しかもそこが切れて変形しているので、尾ビレ全体の特徴が分かりにくくなっている。
また下画像のように、クロメジナはエラブタの後ろの縁が黒くなっている。
そして更にクロメジナのウロコには、下のメジナのような暗色点がない。
こうやって、メジナとクロメジナの特徴の一つ一つを比較していくと、その違いを外観だけで見分けることが出来る。
この魚はほぼ兄弟のようなもので、メジナは礒の方に棲んでいてクロメジナはより沖合いの方にいるようである。
食性もよく似ていて、どちらも夏場は小エビなどの動物性の餌を食し、冬場は海藻や海苔などの植物性の餌を好むようになるため、冬場は磯臭さが消え脂も乗ってくることから、メジナの旬は冬ということになる。
この魚を三枚におろすと、メジナよりもクロメジナの方が身の色も皮目の色も赤っぽく、畜養のためなのか身厚で脂の乗りも良い。
これらを刺身や鮨の商品に仕上げていく時、普通に皮すきをするだけでは面白くないので、焼霜(炙り)も加えてみた。
メジナの皮は少し固さがあるので、軽く炙るのではなくしっかりと焼き目を入れる方が良く、炙る時に腹身がクルッとめくれないように、腹骨を付けたまま炙るのがチョットした知恵だ。
上画像の左の大きい方がクロメジナの焼霜(炙り)で、右の方はメジナであり、まだ腹骨をすき取っていない状態である。
これらを刺身用短冊と鮨用ネタへと目的別に分けていく。
上画像の左はメジナを半身で鮨ネタにし、右のクロメジナは腹身の2枚だけを鮨ネタにした。
皮すきの身を鮨ネタにすると下画像のようになるが、皮すきをしたメジナの場合は炙りの時と違って腹身だけを鮨ネタにした。
ページ先頭画像のにぎり鮨は、こうやって準備された鮨ネタで造り上げた。
こうするとこの2枚のにぎり鮨画像のうち、どちらがメジナで、どちらがクロメジナなのかを判断できるはずである。
答は左がクロメジナ、右がメジナだ。
どちらも今の時期が一番脂の乗りが良く美味しい時期なので甲乙つけがたく、しかも皮なしと炙りの2種類のにぎり鮨が味わえる商品となっている。
やはりこの時期のお勧めは「炙りにぎり」である。焼きの香ばしさと旨味があいまって、絶好の味となる。
もちろんメジナは「にぎり」だけではなく、刺身にしても充分美味しくいただける。
上の画像はどちらも天然メジナの背身を1節使って商品化したものだが、炙りにしている方は皮が熱で縮んで小さくなっているので、どうしても切身の数は少なくなってしまう。
そして上の画像はクロメジナの背身1節を平造りにした商品であり、メジナより魚体が大きかったことから切身の数も多くなった。
メジナという魚は「磯臭い」というイメージが強く、地域によってはどちらかと言えば下魚の扱いを受けることも珍しくない。
このため価格的にもこなれたレベルになることが多く、値段が高すぎて手が出ないということはほとんどないと考えて良い。
ここで紹介している鮨や刺身の商品についても、仕入れ価格は500円/s前後なので商品原価はずいぶん低いものでしかなく、売価も500円ほどで充分なのだ。
今の寒い時期こそメジナの出番である。
頭から偏見を持って魚の価値を決めつけないようにしてほしいものである。
更新日時 平成26年 2月 1日 |
食品商業寄稿文
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