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平成25年 6月号 No.114
イサキ湯霜姿造り
今年は例年に比べ全国各地の梅雨入りが早いようである。
その梅雨の時期に美味しくなるのがイサキであり、別名で梅雨イサキとも呼ばれる。
下の画像は今年5月に獲れた、まだ身が締まっていない鮮度抜群の活きイサキである。
年間の中でイサキを一番美味しく食べることのできるのが今の時期なのだ。
地方では、イサギ(関西)、イッサキ(九州)、イセギ(四国)とも称されている。
下の画像は締まりのイサキであり、上の小型が若魚で下の大型が成魚である。
幼魚から若魚の時は縦に3本の縞模様が入っていて、大きくなると消えるのが特徴だ。
下の画像は3月に撮ったもので、成魚の方は非常にスマートな姿をしており、まだあまり脂肪が乗っていないのを見た目でも理解できると思う。
いっぽう、下の画像は巻頭のものと同じ連れで、5月に獲れた活きイサキだが、腹はメタボ状態でパンパンに膨れ、脂肪をしっかりと蓄え太っている。
その中の何尾かは腹を開くとこのように真子と白子がはち切れんばかりの大きさだった。
全てのイサキが5月の段階で、このようになってはいなかったけれども、6月から7月頃の産卵に向けて、魚体を充実させている途上なのは明らかであった。
しかし、ここまで真子と白子が大きくなってしまうと、魚体に脂肪として溜め込んだ栄養は、ずいぶんと真子と白子に持っていかれるために、その味の方は産卵後より随分ましなものの、やはり少し落ち加減となってくる。
このような状態のイサキは内臓の比率が非常に高くなることから、魚体に占める可食重量の歩留まり率も悪くなるので、 包丁を入れて不定貫販売をする場合の原価計算は気をつけなければならない。
また、その内臓をそのままにしておくと鮮度劣化スピードも早くなるため、夏場を中心に販売する魚であるという理由からも、腹出し作業は早めにすべきである。
時期的なタイミングという意味では、巻頭画像の活きイサキがベストの選択だ。
このように姿形の良いイサキがベストタイミングで手に入るとなると、その姿形を活かした商品を造りたい気持ちの高ぶりを抑えられなくなってしまうものだ。
巻頭の姿造り画像は、頭と中骨と尾ビレを分離して造る方法であり、これを「分離型姿造り」と称しているが、これとは別に下の「一体型」の方法もある。
分離型と一体型の違いを説明すると、まず巻頭画像の分離型については、安定感のある形に頭を据えているので、これをブリッジ代わりにして、全体にフィルムを巻くことが出来る。
いっぽう「一体型」は頭から尾ビレまでが一つで、頭の部分が安定させにくいことから、フィルムを巻くと、どうしても元の頭の形が崩れてしまう。
このためこの方法はフィルム巻きを前提としたパック商品にはあまり向かない。
使い分けとしては、分離型はフィルムを巻いたプリパッケージ販売に向いており、一体型は、別注の鉢盛りの中の一部として姿造りを入れ込んで、
フィルムを軽く被せ、多少シワがよっても問題ない場合に向いていると言えるだろう。
ここまでは姿造りで「湯霜」の方法だけを紹介してきたけれど、もちろん普通に皮すきをしても、この時期のイサキは美味しく食べることが出来る。
左下の画像が分離型で、右下が一体型の方法というのは湯霜の場合と同じである。
この時期のイサキは皮下脂肪がたっぷりと蓄えられているので、皮すきをすると身の表面が真っ赤な色ではなく、少しクリーム色にくすんで見える。
このため皮下脂肪が多いことから、包丁に抵抗がなく皮すきも容易だ。
下の皮なしフィーレの画像は、皮下脂肪が身の表面全体を覆っていて、この状態を見ただけで最高に美味しいことが充分に予想される。
この商品は皮なしフィーレを1尾分で販売することを想定しているけれども、1尾分での販売は売価が高くなり過ぎて売りにくい相場の時もあるだろう。
こんな時は半身分のフィーレにして売ることも選択肢としてはあるが、やはりこれでは付加価値をアピールするには少し弱いものがある。
そこで以下のように半身分を姿造りにして付加価値をつけてみてはどうだろう。
半身分の分量なのでトレーは少し小さくなり、頭も半分に割った片方だけである。
一つの頭は上下逆向きになるが、特に見かけ上で問題はない。
中骨も尾ビレも一つ分しかないので、中途半端に片方だけに使うことはしない。
左上の商品のように平造りではなく薄造りにする方法でも良いだろう。
このようにすれば売価は低く抑えられ、値入率も高められる可能性が出てくるのだ。
さらに「姿のまま」という意味では、特に付加価値がある訳ではないけれども、やはり以下のオーソドックスな「塩焼き用の1尾姿もの」は外せない。
博多では「イサキは北向きで食べろ」と昔から言われてきた。
塩焼きなどでイサキに熱を加えると、腹骨、血合い骨などが堅くなる。
「イサキ骨を喉に引っかけると北枕に寝かされることになるよ」と注意を促す意味で、昔の人がイサキの堅い骨によく注意して食べることを伝えてきた警句なのだ。
下の画像は最近筆者の関係先で販売されていた魅力的な「イサキの姿のまま」の商品だ。
この真空袋入りイサキ1尾分の干物が売価680円と安くはないが、決して手が出ない高い売価だとも思えないレベルであり、たぶん開き物が好きな人は迷わず手を出す価格だと思える。
この時期の塩干開き物コーナーに、こういう商品があると売場の魅力は高まるものだ。
そして最後に「姿のまま」ではないけれども、忘れてはならないのが「天然梅雨イサキのにぎり鮨」である。
これも是非、皮なしと湯霜の両方を提供したい。
冷凍ネタや養殖ネタではとても味わえない、自然で上品な味は絶品である。
魚屋鮨コーナーに「旬」をアピールできる天然魚の商品があってこそ、本当の意味で「魚屋鮨」を誇れるのではないだろうか。
年間の中で6月くらいは、天然梅雨イサキのにぎり鮨を品揃えしてほしいものである。
更新日時 平成25年 6月1日 |
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