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平成27年 2月号 No.134


真鯛にぎり鮨


真鯛の市場取引相場が1年以上に渡り長く低迷を続けている。

今のところ市場では、活魚で1.5sもの最適サイズが900円/s、1sもので700円/s、締まりの800c以下のサイズになると、500円/s前後で手に入るのだから本当に安い相場が続いているのだ。

養殖真鯛の生産計画は2008年までは年間5,000万尾ほどであったが、2009年は4,210万尾へとその計画は大幅に減少し、更に2010年は4,078万尾へと減少して、2011年4,069万尾、2012年も4,069万尾というように、どちらかと言えば2012年頃までの計画は、縮小生産の傾向にあったことが下のグラフに示されている。

ところが年間生産計画尾数は2013年になると4,198万尾へと増加となり、2014年は4,358万尾と更に拡大し、2013年以降の養殖真鯛の生産計画量は2012年までとは逆に上昇局面へ転じたのだ。

その同時期に養殖真鯛の日本から主要輸出先である韓国が、日本との関係悪化を主要因として輸入を手控えるようになったことも重なって受給バランスが崩れることになり、それ以降養殖真鯛の国内相場は下落基調へと変化していったのである。

2014年水産白書に記されている上の横棒グラフは、真鯛の全生産量と全生産額の両方ともに、養殖の割合がほぼ80%を占めてことを示しており、量的にも金額的にも圧倒的に養殖鯛の比重が高いことを物語っていて、真鯛の価格主導権は明らかに養殖ものが握っていることを示している。

養殖真鯛は他の養殖魚と同じように、養殖業の経営体の数が淘汰され減少しつつあることを下の左図が示しているいっぽうで、経営効率改善などの努力によって1経営体当たりの養殖生産額は以前よりも上昇していることが下の右グラフで理解できる。

つまり水産白書のグラフから推測できるのは、2013年以降2014年にかけては、淘汰されて生き残った優れた各養殖経営体の生産効率がアップしたことで、計画していた量よりも生産が増え、その結果市場への入荷量も増えて需要量を上回ることになって取引相場が下がったという側面も考えられるようなのである。


さて、このように以前と比べると価格が安くなっている養殖真鯛というのは、水産部門においては活用範囲の広いベーシック商材であり、このような安値を活用して「多様なSKU」に商品化してお客様に料理提案をしていけば売上につながるはずである。

ところが依然として養殖真鯛が安値を続けているということは、店においてはあまり積極的な仕入をおこなって売上増に活用していないために、価格が安くなっても取扱量は増えず、養殖真鯛の相場はいっこうに上昇しないことになっているようだ。

もしかすると店の水産部門仕入責任者や会社の商品部バイヤーの姿勢というのは、養殖真鯛の安い価格を利益面へのメリットとして利用しているだけで、真鯛の売価を安くして量をこなし水産部門の売上を上げるという面にはほとんど活用していないということも考えられないことではないのだ。

輸入の各魚種が円安の影響でどんどん値上がりしているという状況の中で、国産の養殖真鯛はこのように安値が続いているのだから、魚売場ではこの機に乗じて養殖真鯛をしっかり売り込んでほしいものである。

日本における魚の代表格であり、水産部門にとってはなくてはならない基本魚種である真鯛は昔から良く知られている魚であることから、その知識面などについての言及はさておき、今号では販売面に特化した内容を記事として取り上げ、 真鯛が年間の中で一番美味しくなる2月から4月頃までの期間、店の現場において真鯛の販売に力を入れていけるようにする為のヒントになるようなことに以下に記してみたい。(なお、以下の文中に配置している商品画像は、既刊号と同じくその100%が筆者自身の手で作成した作品である)


巻頭画像では「真鯛のにぎり鮨」を取り上げているけれど、これは皮を引いて鮨ネタに切った普通のものだけではなく、皮を湯霜にして鮨ネタにしたものも横に並べ、これらに紅葉おろしと刻みネギをトッピングした商品として紹介している。

これらはどちらもポン酢をつけて食すことを提案しているのだが、左画像の湯霜にぎり鮨という商品は多少面倒臭くてもこのような一手間が、真鯛を美味しく食べるポイントとなるのである。

魚の旨味というのは皮と身の間の脂肪層の部分に多くあり、これらをすべて閉じ込めて食べることになる湯霜(皮霜)という方法は、皮すきをした普通のにぎり鮨よりも更に美味しく食べることの出来る方法なのだ。

もちろんこれはにぎり鮨だけでなく、下のような刺身の湯霜造りというのも美味しい。

 

上画像は1.2sサイズの養殖真鯛を背身で1パック680円、腹身で1パック380円という売価で商品化してみた例だ。

これは普通の真鯛の湯霜造り商品化としては無難な線であろう。

しかし、仕入れ価格が安く抑えられる今はこんなボリュームではなく、同じようなサイズを使って以下の画像のような半身での商品化を、680円から780円前後という魅力的な売価で無理なく提示出来るのだ。

お造りにする前の短冊は以下の画像のように、背身と腹身を別々にして湯霜短冊として商品化したら良いだろう。

また湯霜にするのではなく、皮すきのお造りやにぎり鮨にした後に残った皮も以下のような商品とすることが出来る。

まず熱いお湯で湯霜をし、氷水で冷やしてから、軽く水気を取る。

 

その湯霜した皮を縦に丸めて細く切り刻む。

 

  

これを上の二つの画像のように「あしらい」としてお造りに添えても良いし、

 

このようにサラダ感覚でドレッシング小袋を加えて盛り付けた単独の商品としても提供しても良いだろう。


ここまでは湯霜という真鯛の皮を美味しく食べるための技法を使った商品を紹介してきたが、もちろん以下の画像のように皮をすいた皮無しの商品化も当然ながら基本として品揃えすべきである。

これも約1.2sの養殖真鯛を半身分使って商品化したのだが、売価は680円から780円前後の売価で無理なく提示出来るのだから、そのボリューム感がニーズと合致するお客様は非常に魅力的だと感じてもらえるはずである。

 

 

薄造り扇盛り そぎ造りババロア盛り

上の左画像は薄造りの扇盛りであり、材料は最低80cから最大で100cほどしか使っていないので、トレーやあしらいその他の資材費を含めても250円ほどに納まるはずだから、500円以内の売価は充分可能であり、売りを仕掛けるならば298円から398円の売価も可能な商品になるのだ。

上右の画像はそぎ造りの技法でボリューム感たっぷりに盛り付けた、筆者が名づけた「ババロア盛り」の商品であるが、見た目でこれだけのボリュームがあっても150c以内の材料なので、仕入れ価格次第では398円から498円の売価が可能である。

 

   

薄造り海鮮サラダ そぎ造り海鮮サラダ

そして次に、上の二つの画像は真鯛をサラダとして提案するもので、魚の下にはオニオンスライスなどが敷かれ、上にはパプリカを刻んでトッピングし、キュウリ、レモン、カイワレなどを適宜配置している。

 

更に季節的にはこのような「タイ茶漬け用」の商品などはどうだろう。これは刺身や鮨ネタには形をとりにくい端身を長めに切って、これを集めて商品にするだけだから手間はかからない。

 

そして真鯛の刺身商品で究極となる商品は「真鯛姿造り」である。

姿造りは用途にもよるが、量販店で販売するのに適切な大きさは1s前後のはずで、この画像もそのくらいの大きさを使っているので、1尾分の仕入原価を700円ほどで手に入れることは今時不可能ではない。

売価980円はとても無理だけど、1,280円ならば出来ない売価ではなく、1,500円以下の売価であれば飛びついてくれるお客様は少なくないと思われる。

今の養殖真鯛の相場であれば、こんな芸当も無茶なこととは言えないのだから、本当に今の養殖真鯛という商材に目を向けないというのはもったいないと言うしかない。


さて最後に、真鯛の切身にも言及して、長くなった今月号は終わりにしよう。

真鯛の頭を落とすときに、上身は「切り落とし技法」で、下身は「たすき落とし技法」というやり方で、少し変則的な方法で頭を外してから二枚おろしにする。

 

二枚おろしの骨付き半身は、切身商品とするため上画像のようにカットする。

 

骨付き切身2切れ入り 480円 骨付き切身1切れ入り 280円 骨付き切身2切れ入り 358円

これを上画像のようにそれぞれの商品価値を見極めた商品とする。

一番左の2切れパックは基本アイテム、真ん中の1切れは厚切りの付加価値品、右端の商品はあまり人気のない右端の尾部と左端カマ含み部位の切身なのでお買い得品の位置づけとする。

そして次は鍋用の商品化である。

 

上画像はそれぞれ別の魚での鍋用の商品化をしたのであるが、左は腹身無しの頭とカマ入りで、右側は腹身の切身入りでカマと頭入りとなっている。

 

真鯛の魚体の大きさによってパックにする数量を判断していくのが普通のやり方だが、養殖真鯛の今の相場からすると、この画像のようなボリュームのある商品も仕入れ価格次第では、例えば580円から680円という真鯛切身の商品としてはこれまで有り得なかったような超お買得の商品が出来ないことではないことになるのだ。


このように骨付き半身は以上のような形で商品展開し、残りの骨なし半身については基本的に刺身用として使用することを前提としているが、骨なしの切身にすることも忘れてはならない。

この画像は「タイしゃぶ」用の切身商品である。

更にはフライ用商品もあるのだが、これは2月14日(土)に発売される月刊誌「食品商業3月号」に、筆者が「真鯛骨なしフライ用3切れ 580円」の画像を入れた記事を書いているので、読者の皆さんは是非この記事の方を読んで参考にしてもらいたい。


今月号はここまで長々と記すことになってしまったが、これは何と言っても真鯛という魚が水産部門の中で「基本」となる魚であり、その商品展開も多岐にわたる大事な魚だと考えているからだ。

日本で養殖されている真鯛が、国内の市場で非常に安い取引価格で売買されているというのに、水産部門関係者が国内産の真鯛にはあまり注目しないで、円安などの影響で高くなっている外国産の魚にばかり目を向けて、その仕入れ価格の上下動に一喜一憂している姿というのは、何か物事を見る視点が少しずれていると言えないだろうか。

現在発売中の食品商業2月号の中で、筆者は次のように記している。

本来外国から入ってくる輸入魚というのは、冷凍であっても安いことが魅力だったはずなのに、これが逆に高騰して売り難いという事態になっているとしたら、ここらで一度国内の生魚にも目を向けてみてはどうだろう。 実は国内において、美味しい一部の魚の市場での評価が低く、鮮度抜群でも不当な価格の安さ故に、関係者から見捨てられ放置されている生魚がゴロゴロ転がっているのだ。 魚の知識がない、味を知らない、料理方法を知らない・・・、魚のことを何も知らない魚売場の不勉強な従業員が魚を売っているから、魚売場には誰もが普通に知っている魚しか並んでいないのではないだろうか。 国内の生魚を見直し、大いに活用することに力を入れていけば、生魚というのは利益の源泉となる「宝の山」であることに気づくはずである」

ここに記している筆者の思いは、今回取り上げた養殖真鯛についても同じようなことが言える。

今の魚売場の関係者は「もっと足下を見つめ直す」ことが必要なのである。



更新日時 平成27年 2月 1日


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