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鮮魚コンサルタントが毎月更新する魚の知識と技術のホームページ

令和 6年 8月号  248

シャコ


避けてきたけれど・・・

7月下旬に突入し、FISH FOOD TIMES 8月号のテーマとして何を採りあげることが出来るか、特に何も思い浮かべるものがないまま、筆者はいつも何かと頼りにしている店の魚売場に足を運んだ。しかしその日、店の生魚の品揃えは、FISH FOOD TIMES のテーマに相応しい魚はこれといって見当たらないと感じてしまう状況だった。

筆者は毎回FISH FOOD TIMES の記事を書くにあたって、基本的にこれまで既刊号で扱っていない魚を探すことにしているのだが、248号ともなると、このことを実現するのは本当に大変である。もちろん、過去に何度か重複して扱った魚は幾つかあるけれど、それはある意味で非常にポピュラーな大型商材だからこそ色んな観点から記事にすることが出来る魚種なのであって、そういう魚がそれほど多くあるわけではない。

常識的には地球の海や川に数え切れないほどの魚が存在しているのだから、その対象は事欠かないはずだとも言えるが、FISH FOOD TIMESの読者として想定している 「魚の小売関係者」が商売として計算できない熱帯魚・金魚など観賞魚とか希少な珍魚奇魚の類いでは話にならないのである。そういう前提に立つと、自ずと対象魚は限られてくるので、それは回数を重ねるごとに頭を悩ます確立も高くなってきているのだ。

「さて、どうしたら良いか・・・」と魚売場に突っ立って悩んでいたところ、いつも良くしてくれる魚売場責任者の方が「今回は、これどうですか? 子持ちですよ・・・」と勧めてくれるのがあった。

それはシャコだった。シャコを記事にしたことがないのは分かっていたけれど、これをどうやって起承転結を踏まえた物語に出来るのか、そのことが全く想像できない経験と知識しかない筆者は、これまでシャコを扱うのを敢えて避けてきた経緯があった。

そこで、シャコを勧めてくれた魚売場責任者の方に「どういう食べ方がお勧めですか」と質問したところ、返ってきた答えは「そうめんのツユですよ」とのことだった。この提案はまったく想定外で本当に意外なことだった。しかし、瞬間的に面白いと感じた。なぜなら、いよいよ夏の真っ盛りに突入し、ほんの数日前に筆者は冷やしそうめんを食したばかりで、8月号のテーマとしてはまさに相応しい魚だと感じたのである。

8月号はどういう内容にできるかまったくイメージできないまま、まあ何とかなるだろうとの思いで、足をバタバタさせている活のシャコではなかったけれど、まだ十分に鮮度の良い子持ちの雌シャコを10尾、雄を15尾購入した。


エビと似て、非なるシャコ

以下が今回購入したシャコである。

シャコの雄と雌の違いは以下の画像のこの部分で見分ける。

尾節内側の中心部が僅かに細長く黄色になっているのが雌であり、子持ちになっていることをこの部分の色で判断する。

それと、これも筆者は初めて知ったシャコに関する知識である。それは、活のシャコを裏返すと腹部で動いている平たい10本の脚は、海の中を泳ぐ時に使う遊泳脚であることは想像通りであるが、その脚に無数に付属しているペラペラ状の器官は、何と鰓(エラ)であることを知り、ヘーッ・・・とチョット驚いた。

この部分がシャコとよく似ているエビ類とは大きく異なっている。同じ甲殻類のエビとは見た目は似ているようでも類縁関係では大きく離れていて、シャコはシャコ目、エビ類は十脚目に属するということだ。

ちなみに、少し紛らわしいがシャコに似たシャクの名称(熊本有明地方)で呼ばれている甲殻類が以下の画像である。福岡の筑後地区の呼び名はマジャクであり、正式和名はアナジャコである。このアナジャコは甲殻類十脚目エビ亜目なのでシャコの仲間ではなくエビの仲間なのである。

このアナジャコは5月から7月頃までが旬である。シャコもほぼ同じような時期が旬であり、8月頃までに子持ちとなり産卵の季節を迎える。シャコは「麦の穂が実る頃が美味しい」と言われているので、それは同じ季節に「麦わら鯛」と呼ばれる産卵後の痩せた美味しくない天然鯛とは、ちょうど真反対に位置していると思って良いだろう。

筆者は勧めてもらった子持ちシャコという普通のシャコとは区別されたものを食べたことはなかったので、この季節に限定された少しだけ割高な子持ちシャコはいったいどんな味がするのか、次第に興味が湧いてきたのだった。


シャコの刺身

シャコを食べる方法として筆者が知っているのはボイルシャコのにぎり鮨だけであり、これ以外の料理方法で食べた経験はなかった。最初からシャコはボイルしてにぎり鮨で食べるものだとしか頭になく、これ以外の知識がないのでFISH FOOD TIMES のテーマとして採りあげても、それを面白い内容に展開出来るはずがないと考え避けてきたのである。

しかし、今回シャコを扱うと決めたので、一般的なシャコのボイルではなく、先ずは生の刺身に取り組んでみることにした。生のままシャコの殻を外すのは困難だということは、筆者も情報として知ってはいたものの、実際にやってみると確かに難しく断念した。そこでその対策として、いったん冷凍して半解凍の状態で殻を外すことにした。このことは以下の画像のようにおこなって成功した。

生のシャコの刺身作業工程
1,急速冷凍用アルミ板にサランラップを敷き、その上にシャコを並べ、その上にサランラップを被せる。 8,側面のトリミングが終了したら、背の殻を頭部側から尾節側へと指を使って取り外す。
2,一定時間の凍結を終えたら、シャコをアルミ板から浅めのバットに入れ替える。 9,次は尾節側から頭部側に向けて腹部の殻を指で取り外す。
3,バットに水を入れ、シャコの表面だけを解凍する。 10、殻を剥き終えた生のシャコ。
4,半解凍状態のシャコの頭部を料理ハサミで切り落とす。 11,シャコの腹側を上に向け、柳刃の切っ先を使って、内臓部分の薄膜に浅い切り込みを入れる。
5,首の部分の脚、及び胴体の背殻と腹殻が結合している部分を尾節の方向へとハサミで切り離す。 12,骨抜き道具などを使って、内臓を引っ張り上げ分離し除去する。
6,尾節は斜めの角度にハサミを切り入れてカットする。 13,内臓を除去する処理を終えた状態のシャコ。
7,尾節が三角形になるように、斜めにハサミを切り入れ、そのまま胴体の背殻と腹殻が結合している部分、及び脚部を頭部側へ切り進める。

14,シャコの頭部側を半折りにし、1尾分ずつ盛りつけて完成。キュウリのあしらい台にシャコ爪を入れた。

 

筆者は今回初めて作り、そして初めて食べたシャコの刺身、この味の感想はどうだったか・・・。たぶん、読者の皆さん方もシャコの刺身を食べたことのある人はほとんど存在しないのではないかと推測している。筆者がシャコの形から予測していたのは、同じ甲殻類の車エビ刺身と同じようなものなのだろうということだった。そしてこれを食べた結果「車エビほどの甘みはなく、比較的抑えられた旨み」というものだった。このことは、一般的なボイル車エビにぎり鮨とボイルシャコにぎり鮨を食べ比べ、その時に感じる食味の違いと同じようなものではないかと思われる。但し、車エビ刺身のような弾力のある歯応えはまったくないことから、その点では大きな違いを感じた。


シャコを煮る方法の違い

次は煮シャコである。実はシャコのそうめんツユは一般的な煮シャコの作り方と大きく違うことが分かり、二通りの方法で煮シャコを作った。二つの方法を自らやってみて感じたのは「シャコ一つで、こんなに奥深い味わいが出せるのだ・・・」という感激に近い感想だった。

まず一般的に良く知られている煮シャコを作る方法は以下のようにおこなった。

煮シャコの作業工程
1,塩一つまみを入れた水を沸騰させる。 4,一定の時間煮たら、氷水に入れて冷やす。
2,沸騰したお湯にシャコを投入する。 5,氷水で冷やしたシャコをしっかり水切りする。
3,3分前後煮る。 6,水切りをして、煮シャコが完成。

 

これだけの数量の煮シャコを作ると、以下の画像のような煮汁が残った。これはそうめんツユにするのではなく、別の料理に使用することにした。

 

そうめんツユを作ったのは以下の画像のように、調味した煮汁を作り、そこにシャコを入れて、冷たい水の状態から沸騰させるのである。調味のバランスは、水:醤油:ミリン=7:1:1 の割合である。

煮汁を一煮立ちさせたら火を止め、少しの間だけシャコを鍋に入れたままにしてから取り出す。シャコを氷水には入れないで、そのまま自然に冷やす。

この画像は煮汁から取り出し冷ましている状態である。その見た目は沸騰した水で煮たシャコと特に違ったところはなく、殻を外してにぎり鮨にした時も、その違いを外観で区別することはほとんど出来なかった。

このように煮シャコを作る方法は全く違うけれど、シャコの殻剥き段階でも違いが出るかと言えば、そのどちらも殻剥きに苦労することはなかった。シャコを煮る時間を色々試してみた結果言えることは、基本的にシャコを煮る時間は3分前後で十分であり、5分以上の時間をかけて煮ると殻が剥きにくくなると感じた。


煮シャコの煮汁を使った奥深い味わい

二つの違う方法で煮シャコを作ったので煮汁が2種類できた。そこで、一つは今回のテーマを選ぶ目的の一つとなった「そうめんのツユ」を作り、それを我が家流の冷やしそうめんに使うことにして、もう一つは煮汁をシャコスープパスタに使って料理することにした。

先ずは煮シャコのスープパスタの作り方の方を紹介しよう。

煮シャコのスープパスタ
1,200gのパスタ麺をお湯に投入。 6,湯むきにして、サイコロ状にカットした生トマトを加える。
2,固さを確認しながら茹で上げる。 7,煮シャコを作った煮汁を加える。
3,オリーブオイルを入れたフライパンにニンニクと赤唐辛子を入れ、弱火でじっくり火を通しながら、オリーブオイルに香りを移す。 8,野菜に火が通るのを待つ。
4,程よい大きさに刻んだ煮シャコをフライパンに加える。 9,パスタ麺を加える。
5,3センチ前後切った茹でアスパラガスを加える。 10、パスタ麺と具材を混ぜて仕上げる。
煮シャコのスープパスタが完成。

 

こうして出来上がった煮シャコのスープパスタは、想定していた以上の味であり、最高レベルだった。この料理では人工的な味付けとは無縁な、本当に自然な美味しさを堪能できたのだ。この素晴らしい味のポイントはスープとして加えたシャコの煮汁のお陰であり、気分的には皿に残った汁をなめてしまいたいほどであった。

そして次は、今月号でシャコをテーマとするきっかけとなった「シャコのそうめんツユを使った冷やしそうめん」を作る番である。実は煮シャコのスープパスタは2日目の昼食に、そして「シャコのツユを使った冷やしそうめん」は3日目の昼、この2回に分けて食べた。そうしないと、どんなに美味しい料理でも腹一杯の状態では食味の正しい判断は出来ないからである。

以下はシャコの煮汁をツユにした冷やしそうめん料理の作業工程である。

シャコの煮汁をツユにした冷やしそうめん料理の作業工程
1,沸騰したお湯にそうめんを散らして入れる。 5,そうめんに冷たい水を入れ、冷やしながら、もみ洗いする。
2,そうめん同士がくっつかないように、菜箸でゆっくり混ぜ、火加減を調整する。 6,氷を入れて、更にそうめんを冷やす。
3,吹きこぼれを抑え、水温調整のため、びっくり水を加える。 7,茹で上がったそうめんを丸めて皿に盛りつける。
4,2分ほどで茹で上がる。 8,シャコを冷たい調味液から煮た煮汁をそのままそうめんのツユにする。
9,煮シャコツユの冷やしそうめん

 

上の冷やしそうめんの配膳画像を見て、中には「何じゃこれは・・・?」と思われた方もいらっしゃるのではないかと思う。これは我が家流の冷やしそうめんであり、右上の小鉢には薬味に刻み茗荷と刻み大葉を添え、ツユのお椀にはシャコの煮汁だけでなく生卵の黄身も入れている。また、ガラスの器に冷やした水と一緒にそうめんを入れ、そこには幾つかの氷の塊とキュウリスライス、プチトマトをトッピングしている。

このように、我が家流の冷やしそうめんは、そうめんのツユに生卵の黄身を入れ、薬味を適度に入れて混ぜ込んだツユでそうめんをすするのだ。何と言っても今年のような猛暑の場合、この生卵の黄身が夏バテ解消の肝となる部分であり、筆者は黄身は一個で足りず、追加して二個以上の生卵を使うのが普通である。

これまで我が家ではそうめんツユに市販の昆布やカツオ、アゴなどの出汁などを使ってきたが、今回シャコの煮汁に出会って、その美味しさに本当に驚いてしまった。

前日の煮シャコのスープパスタでその美味しさに感動していたので、煮シャコのそうめんツユもきっと美味しいはずだとの期待感はあったが、その期待に応えるどころか、それ以上の美味しさだった。

市販の出汁ツユは自分好みの味に整えても、どうしても醤油辛さが残り、ツユを最後まで飲む気にはならない。しかしシャコの煮汁のそうめんツユは最後の最後まで飲み干したくなり、筆者は実際に一滴残らず飲み干した。そのような気持ちにさせる、その素晴らしい美味しさを言い表すと、やはり何度もこの表現を使って申し訳ないが、それは「奥深い味わい」というものである。

筆者はこれまでこの味を知らずに長く生きてきたのだが、世の中にはこのような「知る人ぞ知る」世界があることを改めて感じたのだった。


子持ちシャコにぎり鮨

さて、今月号はこれでテーマの核心部分には行き着いたが、まだ子持ちシャコについては言及していないので、以下に子持ちシャコのにぎり鮨を作るまでの作業工程を紹介してみたい。

子持ちシャコにぎり鮨作業工程
1,ボイルした子持ちシャコの頭部をハサミで切り落とす。 7,尾節から頭部側に向けて、腹殻を指で外す。
2,首の部分の脚、及び胴体の背殻と腹殻が結合している部位を、尾節に向けて切り落とす。 8,子持ちシャコの背の中心に縦方向へ柳刃で浅く切り口を入れる。
3,尾節を斜めの角度で切り落とす。 9,子持ちシャコの背の切り口を指で開くと、カツブシと称される赤い卵巣が少しだけ見える。
4,尾節が三角の形になるように切り落とす。 10、切り落とした頭部に残っている、補脚と呼ばれる部位を根元の方から指で外す
5,胴体の背殻と腹殻が結合している部位及び首の部分の脚を切り落とす。 11,補脚の根元側の端をハサミで切り、中の筋肉を指で押し出す。
6,頭部の方から尾節の方に向けて、背殻を指で外す。 12,左側容器に入っているのが補脚から取り出したシャコ爪と呼ばれる小さな筋肉
13,5カンすべて子持ちシャコだが、2カンは背の切り口にシャコ爪を詰めている

 

子持ちシャコにぎり鮨を筆者は初めて食べることが出来た。そのカツブシと呼ばれる卵巣はどんな味がするかと言えば、特別な味や香りがするわけではなく、その存在感は非常に希薄で控えめであった。

また、シャコの補脚内部にある筋肉のシャコ爪と称される部位は、これも極々小さな存在であり、子持ちシャコにぎり鮨の背割り部分に5〜6ヶ以上は詰めたのだが、これまた存在感を感じることはなかった。シャコ爪は一般的に軍艦巻きに用いるとのことだが、今回は量的な意味でそうするのはやめたので、そのことがシャコ爪の存在を自分自身の手で希薄にしてしまったのかもしれない。


まだまだ不勉強

今回は8月号に関係する作業を終えてみると、自分自身とても面白く感じた内容となった。あまり知識がない故に関わることを避けてきたシャコという対象物が、実は色んな意味でとても大きな潜在力を秘めた存在であることを知らしめさせられた。

本当に心から、「この歳になって、まだまだ不勉強・・・」だと感じさせられたのだった。

特に感動したのは、煮汁の素晴らしい美味しさだった。洋風料理の「煮シャコのスープパスタ」にしても、和風料理の「煮シャコツユの冷やしそうめん」も、そのどちらもが「感激するレベルの旨みを含んだ出汁」の味を提供してくれたのである。

筆者は自分自身の職業柄、日本だけでなく、これまで訪問したそれなりの数の外国でも、魚料理を何よりも優先して食べ、数多く魚料理の食体験を積んでてきた。その点で「色んな魚を様々な形でたくさん食べてきたことは、たぶん人後に落ちないだろう」という自負は持っている。そんな筆者がシャコの煮汁の美味しさは、他の魚と比較してもトップランクに位置づけされるはずだと感じたのだ。

煮シャコ本体の味そのものは、それほど高い位置づけレベルにはないと思われるが、その煮汁の美味しさはまさに格別であり、このことを言葉にするならば、やはり「奥深い味わい」と表現するのが相応しいと思われる。

これからも、さらに今回のような魚との出会いがあることを願うばかりである。


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水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新している
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                 更新日時 令和 6年 8月 1日