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平成29年 7月号 163

センネンダイ

sennendai

センネンダイ薄造り&炙り刺身


名前の由来の不思議

今年になって面白い魚を扱う機会に恵まれた。その名はセンネンダイ、筆者自身初めて調理することになった魚であり、普通は滅多に食べることが出来ない魚である。

以下の画像がセンネンダイである。その大仰な名前の由来はどこから来たのか調べても定かではなく、筆者が扱ったのは重さは約8kgを超えていて1m近い大きさがあったので、その立派な姿はまさに千年という名前に負けない堂々たるものであった。

英名では Emperor red snapper であり、皇帝(Emperor)という英語名が冠せられるほどであるから、やはり外国の人にもその大きな姿が非常に立派に見えるようであり、センネンダイ(千年鯛)という名前は「千年くらいの価値がある」という意味があるのではないかと推測したいところである。

センネンダイ

稚魚から成魚になるとその姿が大変身

生息域は南日本から南西諸島、さらに熱帯海域にかけての暖かい海であり、浅い海のサンゴ礁や岩礁に生息していて、その幼魚は海岸近くでも生息している。

センネンダイのことを沖縄ではサンバナー、奄美大島ではサンバラダイと呼ぶが、サンバナーとは沖縄の漁師さんや農家の方が被ってるのを見かける、クバ(ヤシ科の植物)の葉で編んだ三角形の帽子のことで、

   サンバナ確かにセンネンダイも幼魚の頃は横から見ると三角の形が似ている。

センネンダイの幼魚は下の左画像がそうである。幼魚は成魚の大きく成長した堂々たる赤い立派な姿からはとても想像できない姿形をしているではないか。

センネンダイ

体高が高い幼魚は大きな赤黒い横縞が目立ち、それは漢字の「小」または「川」のような形であり、明瞭な横縞模様であるが、さらに大きく成長していくと、今度は上の右画像のように赤黒い横縞の明瞭さがなくなって次第に縞がぼやけてくるのだ。

このような縞模様の変化は他の魚でも見られ、例えば FISH FOOD TIIMES No.79 平成22年7月号の中で紹介していたイシダイの場合も同じであり、下の画像のように同じく幼魚の頃の横縞が成魚になると消えてしまうのである。

ishidai yougyo  ishidai2

センネンダイはスズキ系スズキ目スズキ亜目フエダイ科フエダイ属に属し、イシダイはスズキ系スズキ目スズキ亜目イシダイ科イシダイ属であるので、鯛という名前は同じでも基本的に別の魚種であるのに、同じような横縞の消滅という変化をするのはなぜであろう。

縞模様が意味するもの

そもそも、縞模様というのは何のために存在するのであろうか。

鈴木克美東海大学前教授が、小学生向けに記されている『海のはくぶつかん』2002年11月号 Vol.32, No.6, p.4〜5 の資料を、FISH FOOD TIMES読者向けに筆者が以下に要約(文章の割愛、削除、文字変更含む)すると、

魚を含む脊椎動物の場合、頭から尾に向けて、体軸に沿った縞を「縦縞」、体の軸に垂直なのを「横縞」とされている。天地や上下左右は関係なく、センネンダイやイシダイ幼魚の黒い縞は横縞であり、イサキの幼魚は縦縞ということになる。

縞模様の役割は「目立つため」と「隠すため」であり、近づいてくる生きものは、敵か、仲間か、それとも餌なのか、いち早く相手が何者かを見分けたいし、相手にも見分けてもらいたい。そのためには、互いに目立つ縞模様があるほうが便利なようなのである。

もう一つの目的は、逆にくっきりした縞模様が、実は相手の眼を誤魔化して身をかくすためにも役立っている。このことを分断色と呼んで、目立つ横縞で相手に錯覚を起こさせ、魚の輪郭を曖昧にして危険を避けるのに役立たせているのだ。

分断色の横縞ははっきりしているほど良く、色や模様や縁取りがついていれば更に良く、コントラストが強く派手に目立つほど魚の輪郭を消す効果が大きいらしい。

そして黒い横縞のあるセンネンダイやイシダイは眼を縞の中に包み込んで隠していて、これを「アイ・マスキング(目隠し)」と言う。体の輪郭を分断色で誤魔化しても、眼が目立っているのでは良くないようで、うっかり敵と視線が合ってはまずいので、横縞の中に眼を隠しておこうということだ。

以上が鈴木克美東海大学前教授が説明されている文章の大人向け要約である。

そこではまだ色々のことが詳しく説明されているけれど、そこに記されていなかった縞模様に関する筆者の推測の一つを記したい。それはいかに巨大になるセンネンダイといえども、小さな稚魚や幼魚の頃は大きな魚から食べられてしまう危険性があるので、横縞模様は海底に揺らめく海藻と同じような形の保護色となって隠れるのに適しているのであり、次第に大きな魚体となっていって自分より大きな魚から食べられる危険性が遠のくのに比例して横縞模様が薄れていき、センネンダイが巨大な成魚となった時は必要性が薄れた横縞が消えてしまうのだろうということである。


高級魚センネンダイに相応しい刺身

さてセンネンダイの成魚はこのように非常に大きくなるけれど、その白身はとても美味しいことで知られており、魚市場では高い価格で取引されるのが普通である。このため切身で火を通して食べるよりも生の刺身で味わう方が頻度としては高まり、筆者のお勧めとしては皮が多少腹身よりも固い背身の方は皮を引き、比較的背よりも皮が柔らかい腹身の方は炙りにして、両方の食べ方を賞味する方法である。

その方向で刺身にするためにセンネンダイを三枚におろすと以下のようになる。

センネンダイ

三枚におろしたら、以下の工程で刺身商品化する。

センネンダイの刺身商品化工程
センネンダイ センネンダイ
1、三枚におろした上身の皮側。 5、腹身を炙りにした状態。
センネンダイ センネンダイ
2、背身は皮を引き、腹身は皮をつけたままにする。 6、背身は大きすぎるので背割りにする。
センネンダイ センネンダイ
3、腹身を砕氷の上に置く。 7、上身の背身と腹身の刺身前の状態。
センネンダイ センネンダイ
4、腹身の皮の表面を炙る。 8、上身だけで大4と小4の合計8個の刺身が完成。
センネンダイ  センネンダイ
センネンダイの大盛りと小盛りの刺身

センネンダイと同じフエダイ科の仲間

センネンダイはフエダイ科に属しているのだが、同じフエダイ科に属している魚で沖縄地方や奄美群島などの地域で好まれ食されている魚に、ハマダイ属ハマダイ(アカマチ)、アオダイ属アオダイ(シチューマチ)、ヒメダイ属ヒメダイ(クルキンマチ)、などが挙げられる。

これらフエダイ科の魚は、沖縄地方でマチ、奄美群島ではマツなどと呼ばれ、センネンダイほど魚体が大きくなることはなくて、一番小さいヒメダイ300〜500g、一番大きくなるハマダイは10kg近くになるものもあるようだが、一番多く漁獲されるヒメダイが価格も安く、漁獲が少なくて赤い色も好まれるハマダイが価格は一番高値であり、アオダイは大きさも価格も漁獲高ものその二つの中間といったところである。

沖縄のマチ類(奄美群島の呼び名)
アカマチ
アカマチ(アカマツ)
シチューマチ
シチューマチ(ホタ)
クルキンマチ
クルキンマチ(イナゴ)

 

FISH FOOD TIMES No.136 平成27年4月号では、ハマダイ(アカマチ)のことを取り上げていたが、これらの魚は沖縄や奄美群島の地域では、高級白身の刺身として食するのはもちろんだが、いっぽうで切身用の魚として扱われることも多く、いわば魚売場を代表する「白身の大衆魚」とも言える存在なのであるが、これらの3魚種は姿形がいずれも紡錘形をしており、センネンダイが扁平形であるのと比較すると、同じフエダイ科とは思えないほどである。

フエダイ科の4魚種を比較してみると、大昔はもともと同じ祖先であったはずなのだが、何時の頃からかそれぞれが独自の進化をして今のような違いが出てきたのであろうと思われ、海の中で生き残るための環境適応能力がより優れた魚がより大きくなったと考えられ、一番巨大に成長することになったセンネンダイが、その生存を一番脅かされる幼少期に「横縞」の模様を纏うことによって敵の目をくらますことができたのが大きな力となったのではないかと思われる。

海の中だけではなく人間世界にあっても「環境適応能力に優れたものが大きく成長する」のは共通しているようである。

今や、ITの劇的な進化によって人間世界の環境も大きく変化しているが、我々もセンネンダイに習って横縞(ヨコシマ)を身につけた方が良いのかもしれないが、同じ発音となる「邪(ヨコシマ)な考え」だけはやめておきたいものだ。


追補更新(サンバナー = サンバラダイ)

さて現時点は2017年7月5日であるが、あるFISH FOOD TIMESの読者の方から今朝メールが入り、今月号の魚は「センネンダイ」ではなくて「ヨコフエダイ」ではないかとの疑問が届けられた。

以下の画像はセンネンダイ、ヨコフエダイ、ワキグロヨコフエダイの3魚種であり、どれもがフエダイ科フエダイ属に属していて、どれも重さは10kg近く、大きさは1mほどの大きさになるということだが、その違いが読者のみなさんには判別できるであろうか。

fuedai

筆者は魚市場からセンネンダイの名称で届けられたので、何の疑いもなくそう思い込んでいたのだが、メールが届いてからよく調べてみると、確かにセンネンダイではなくヨコフエダイなのかもしれないと思うことになった。

しかし筆者が魚市場の担当者の言葉を鵜呑みにしたのが問題だったのかもしれないけれど、基本的に魚を小売りする立場として伝票に記入された魚の名称を勝手に変えるのも問題だと考える。

仮に間違っていたとしても、今になって7月号の全文を前後の文意を損なわずに書き直すのは大変なことなので、自分なりに文章を補完する救済策として、これらの魚は沖縄や南西諸島ではどれもが明確に区別されることなく、全て「サンバナー ( サンバラダイ)」などの地方名で呼ばれているから、今月号の魚の名称は「サンバナー ( サンバラダイ)である」ということで締め括りたいと思う。

そういうことで悪しからずご了承願いたい。(今後も読者の方からの貴重なご意見をお待ちしております)


水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新してきたこのホームページへの

ご意見やご連絡は info@fish food times

更新日時 平成29年 7月1日