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平成29年 3月号 159

オニカサゴ

オニカサゴ

オニカサゴ刺身


良く似た姿

既に日本では2月3日の節分での鬼退治が終わり、日本の陸上から鬼は退散したようだが、海の中にはしっかり鬼が棲み着いているようである。その名前はオニカサゴ。この他オニの名前の魚はオニオコゼもいて、確かに両方とも童話の鬼のような顔面をしている。

魚に馴染みのない一般の人は、下の画像のように魚の顔だけ見せられたのではどちらがオニカサゴなのか見分けがつかないかもしれない。

 

しかし魚体全体を見てみると、似ているようでもだいぶ違いはあるのだ。

オニカサゴ

スズキ系カサゴ亜目フサカサゴ科オニカサゴ属 オニカサゴ

 

オニオコゼ

スズキ系カサゴ亜目オニオコゼ科オニオコゼ属 オニオコゼ

両方とも背中の背ビレには毒があり、オニオコゼは毒性も強く棘が四方に飛び出していて扱いにくいので、背ビレの下に包丁を浅く切り込みを入れて、下画像のように背ビレごと取り外した方が良い。

オニオコゼ

しかしオニカサゴの場合は棘が比較的単純なので扱いやすく、出刃包丁の刃元で棘の先をトントンと叩き切れば良いわけで、魚の扱いに慣れたプロがオニカサゴを解体する場合、下手な動きさえしなければ、毒ビレを除去しなくても解体作業を進められるのだが、とりあえず注意点だけは以下に記しておこう。

背ビレトゲ1:最も大きい棘なので幅広く大きく切る。
背ビレトゲ2:背ビレ軟条という軟らかいヒレにある隠し棘。
尻ビレ:大きい1棘、2棘のほか、隠れた3棘目が潜んでいる。
腹ビレ:小さい棘が1本隠れている。左右にある腹ビレの両方にある。

オニカサゴ

またオニカサゴとオニオコゼの違いで大きなものとしては、オニカサゴには鱗があるのでこれを落とす必要があるが、オニオコゼには鱗がなく、まるで黒っぽい苔のようなものが魚体表面全体に付いているので、亀の子ダワシなどでこれを洗い落とさなければならない。

小さな魚体が普通のオニオコゼは飛びっきりの高級魚であり、背ビレを丸ごと落として歩留まりが悪くなるだけでなく、頭部が大きくて胴体が小さいので元々が非常に歩留まりが悪い魚である。そのような魚の身の部分だけを食べていたら、とても割りに合わない魚なのだ。

だから、オニオコゼは毒棘以外の全てを使い切るように調理するのがポイントであり、ついでに商品化のポイントだけを以下に示しておこう。

オニオコゼ オニオコゼ

上左の画像は右の姿造り刺身にするために解体して準備した材料であり、刺身用の上身の他、頭部、中骨、肝、胃袋、皮、身皮(とうとう身)など、一部は湯引き処理までして使われる。

右のような刺身は正身以外の部位を使うから、このように何とかボリュームをつけてお金が取れる商品となるのである。


もう一つの似た魚

さらにオニカサゴにはもう一つ似た魚がいる。

オニカサゴ

上画像の下の方がオニカサゴだが、上の魚は世間でも良く知られているカサゴである。

カサゴはスズキ系スズキ目カサゴ亜目メバル科カサゴ属なので、フサカサゴ科のオニカサゴとは別の科に属しているのだが、やはりオニカサゴはこの魚とも良く似ていて一般的には区別のつかない人もいると思われる。

こうして3種の魚を比較してみると、オニカサゴはオニオコゼとカサゴの両方に似ていて、まるでこの二つの魚の間から生まれたかのように感じられないこともない。

さらにカサゴにはまさに瓜二つの「ウッカリカサゴ」という正式和名の魚がいて、これは学者がウッカリ間違えたのでこの名前がついたという経緯があるくらいだから、魚屋の店頭で区別されないで売られていることも多い。

スズキ系スズキ目カサゴ亜目メバル科カサゴ属ウッカリカサゴは、見ての通り魚体表面の色が少しオレンジ色が強く、カサゴよりも比較的大きくなることが多く、調理そのものはこちらの方が楽という印象である。

ウッカリカサゴ

このことに関しては、FISH FOOD TIIMES 平成21年10月号でも触れているので、このページにもアクセスしてその違いと区別ポイントを参考にしてほしい。

カサゴはこのように非常に紛らわしく似たものが多いので、日本国中で色々な名前で呼ばれており、筆者は過去に一度その呼び名のことで面食らった経験がある。

それはもう二十数年前のことだったろうか、北九州市のある魚市場で主に地場魚を担当していた筆者の親しい市場関係者が、筆者が関係する北九州の会社の社長を訪問してきたのだが、その人は「手土産に美味しいメバルを持ってきました」と自信満々に差し出してくれた。

その魚を見て私はビックリした。その魚は間違いなくカサゴだったのだ。私が住んでいる福岡ではその魚のことをアラカブと呼んでいて、もちろんメバルとアラカブは違うと筆者は知っていた。北九州の魚市場のベテラン担当者が自信を持ってカサゴをメバルと称したのだから、私はその側で絶句したのだった。

福岡と北九州という同じ県内のそれほど遠くない場所でも同じ魚を違う名前で呼ぶのだから、その後広島でカサゴのことをホゴメバルと称していても何ら驚くことはなかったのである。

それから筆者は水産コンサルタントを三十年近く続けてきて、日本各地で同じ魚が全く別の名称で呼ばれていることに驚かなくなり、各地でその呼び名に合わせることになんの抵抗もなくなった。


カサゴの料理

このようにカサゴのことを福岡や長崎ではアラカブと呼び、小ぶりのものは味噌汁にすることが多い。さらには二度揚げした唐揚げを骨やヒレまで全てバリバリと食べる料理方法などが好まれている。

小ぶりのカサゴの場合は、下の画像のように頭部を割らない片開きにすると、魚体が半割りされて薄くなることで揚げた時に熱が通りやすくなるし、箸での取り扱いも容易になって食べやすくなる。それだけでなく何と言ってもカサゴのように小さな魚がこうすれば大きく立派に見えるのもメリットだろう。

カサゴ

さらに今度は少し特殊で包丁を動かす時にチョッとしたコツが必要となるけれども、面白い見栄えのカサゴ唐揚げ料理となる次のような中骨抜きの方法がある。

カサゴ

これは残念ながら工程の画像が今はないので文章だけで理解してほしいのだが、要するに「包丁で背ビレの両側から切り込みを入れ、中骨を尻ビレ付近まで切り開き、尻ビレの手前で中骨を切り離し、次に中骨の頭部付け根と尾ビレ付け根を切り離して、中骨を抜いてしまう」という方法である。ちなみに抜いた中骨は捨てないで後から一緒に二度揚げして皿に盛りつけるので無駄にはならない。

これを揚げると下画像のように白身の部分が丸く盛り上がり、他の魚ではなかなか見られない面白い見栄えの出来上がりとなる。

 カサゴ 

カサゴの中骨抜き二度揚げ

ちなみに、下の画像はカサゴの片開きを揚げたもので、中骨抜きとはまた違った印象となる。

カサゴ

カサゴの片開き二度揚げ


オニカサゴの扱い

カサゴはオニカサゴに比べると扱いやすいように見えるが、頭部には小さな棘が無数にあり、調理解体のために頭を素手で扱うと手が痛いし、エラは小さいけど強度があるので簡単に除去できず、内臓は少ないが浮袋は丈夫で取り外しにくいなどのことから、調理そのものは小型の魚のわりに厄介な魚なのである。

こういうプロでも少し厄介に感じる魚を調理もせずにトレーにパックしたまま売っている魚売場を見かけることがあるが、お客さんがこの魚を調理する時に格闘する場面を想像したら、平気でそのまま売るなんて出来ないはずなのだが、・・・

オニカサゴの場合もそのことは同じであり、上の画像と同様の調理をして商品にしたら良いと思う。そして少し大ぶりのサイズの場合は以下のような形でも良いと思われる。

オニカサゴ

頭部を切り離さず二枚おろしをおこない、そのまま包丁を頭部に切り込んで半割りにして、以下のような商品にする。

オニカサゴ オニカサゴ

この商品化のポイントとしては、頭部を「残りのアラ」のようにしないことであり、そのためには敢えて頭部に多めの肉をつけて一人前の切身のようにすることだ。こうすれば二度揚げの唐揚げでなく煮付けでも頭部にも食べる部分があることになる。


面倒な魚こそ、プロが技術を駆使して売ろう

カサゴの仲間の大きな特徴の一つはメバルと同じく「卵胎生魚」だということである。卵胎生魚とは生まれる時に魚ではお馴染みの卵の形で生まれるのではなく、人間と同じような親と同じ形になって生まれる魚のことで、このほかにサメやエイ、そして観賞魚としてよく知られているグッピーもその仲間である。

カサゴ類は子どもを自分のお腹の中で、ある程度成長させてから産むのだが、これは子どもがある程度成長するまでお腹の中で育てることによって、仔魚の死亡率を少しでも減らす目的があるらしい。

またカサゴは約半年にもわたる長い繁殖期の中で1回から3回ほど子を産み、このことを「多回産」というらしいが、このような「卵胎生の多回産」というのは、産仔の時期をずらして何度もの産仔を行い、厳しい環境の変化に対して仔魚の全滅を防ぎ、何とかして子孫を残そうとする繁殖戦略のようである。

ところがオニカサゴは卵生であり、見た目はよく似ているカサゴとは、このことでも別種の魚であることが証明できる。

オニカサゴの九州での別名はオコゼアラカブであり、毒の棘を持つカサゴ(アラカブ)との表現をされているように、同じカサゴ亜目の中に分類されている、フサカサゴ科、メバル科、オニオコゼ科の魚は実のところ別種の魚なのだが、ほぼ同じような魚としての扱いを受けている事実がある。

そして実際に唐揚げなどの同じような料理方法で美味しく食べられるという共通項がある。それぞれ市場での扱いには大小のサイズや希少性などで価格的な差があるけれども、総じて美味しい魚たちであることは間違いない。

これらの美味しい魚たちは、魚の扱いに慣れない一般の人が調理するのは少しハードルの高い魚なので、プロの魚屋は面倒臭くて厄介なこれらの魚を、是非とも腕をふるって食べやすくすることにより、魚の美味しさを伝えてほしいものである。


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更新日時 平成29年 3月1日