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No.221 戦争と魚
令和4年 5月号
No.220 シロギス料理
令和4年 4月号
No.219 海水入りアサリ
令和4年 3月号
No.218 キチジ料理      令和4年 2月号
No.217 魚売場が生き残る道  令和4年 1月号
No.216 浮袋からニカワ、発声筋のヒレ肉  令和3年12月号
No.215 伊勢エビを求めたが  令和3年11月号
No.214 正露丸で安心、胡麻サバ  令和3年10月号
No.213 魚屋は真夜中に刺身を引き始める  令和3年 9月号
No.212 カツオ・イカ紅白刺身盛り合わせ  令和3年 8月号
No.211  肝なしウスバハギ刺身&鮨  令和3年 7月号
No.210  でかいタチウオ   令和3年 6月号
No.209 モンゴウイカ商品   令和3年 5月号
No.208 ビンナガ若魚平造り  令和3年 4月号
No.207  テングニシ刺身盛り合わせ   令和3年 3月号
No.206  ホウボウ姿造り   令和3年 2月号
No.205  鮭を二日に一切れ  令和3年 1月号
No.204 ハタハタ刺身&にぎり鮨 令和2年 12月号
No.203 青森の魚
令和2年 11月号
No.202 ツムブリ刺身
令和2年 10月号
No.201 チカメキントキ皮揚げ
令和2年 9月号
No.200 シマアジ刺身&鮨
令和2年 8月号
No.199 グルクン刺身姿造り
令和2年 7月号
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令和2年 6月号
No.197 カツオ銀皮造り刺身
令和2年 5月号
No.196 ボタンエビ刺身
令和2年 4月号
No.195 ブリ商品
令和2年 3月号
No.194 ニシン骨切り
令和2年 2月号
No.193 魚屋鮨の魅力
令和2年 1月号
No.192 マダラの鍋用切身
令和元年 12月号
No.191 バンコク魚食事情
令和元年 11月号
No.190 ハガツオ刺身&鮨
令和元年 10月号
No.189 塩茹で花咲ガニ
令和元年 9月号
No.188 ベラにぎり鮨
令和元年 8月号
No.187 赤ウニイカ鮨
令和元年 7月号
No.186 イシガキダイ刺身
令和元年 6月号
No.185 アオダイ刺身
令和元年 5月号
No.184 ヨコワで作る刺身と鮨
平成31年 4月号
No.183 スルメイカを美味しく
平成31年 3月号
No.182 改めて、明太子とは?
平成31年 2月号
No.181 魚売場の活性化
平成31年 1月号
No.180 メスは冬、オスは夏
平成30年 12月号
No.179-2豊かな自然と多民族都市バンクーバー
平成30年 11月号
No.179-1成長企業がシアトルの未来を変える
平成30年 11月号
No.178ヒラスズキ鮨&切身
平成30年 10月号
No.177 メイチダイ刺身&鮨
平成30年 9月号
No.176 店内手作りタコ
平成30年 8月号
No.175 ウナギ鮨盛合わせ
平成30年 7月号
No.174 マアジのバラエティ
平成30年 6月号
No.173 ヒメダイ姿造り刺身
平成30年 5月号
No.172 クロダイ料理
平成30年 4月号
No.171 ヒメシャコガイ姿造り刺身
平成30年 3月号
No.170 ヌマガレイ刺身&にぎり鮨
平成30年 2月号
No.169 魚屋鮨スタイル
平成30年 1月号
No.168 ズワイガニ付加価値商品
平成29年 12月号
No.167 イタリア魚料理の一端
平成29年 11月号
No.166 シログチの平造り刺身にぎり鮨・切身
平成29年 10月号
No.165 アカヤガラにぎり鮨&薄造り刺身
平成29年 9月号
No.164 オオシタビラメにぎり鮨&薄造り刺身
平成29年 8月号
No.163 センネンダイ薄造り&炙り刺身
平成29年 7月号
No.162 スズメダイ料理
平成29年 6月号
No.161 イトヨリ昆布締平造り
平成29年 5月号
No.160 メナダ薄造り刺身
平成29年 4月号
No.159 オニカサゴ刺身
平成29年 3月号
No.158 マトウダイ薄造り刺身&にぎり鮨
平成29年 2月号
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平成28年 11月号
No.155-2 上海魚料理
平成28年 11月号
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平成28年 10月号
No.153 アオハタ薄造り刺身
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No.151 アカエイの刺身&鮨
平成28年 7月号
No.151-2 アカエイ料理
平成28年 7月号
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平成28年 6月号
No.150-2 アユの姿鮨
平成28年 6月号
No.149 スジアラ炙り刺身
平成28年 5月号
No.148 ミンク鯨畝須スライス
平成28年 4月号
No.148-2 ミンク鯨赤身の刺身&にぎり鮨
平成28年 4月号
No.147 スマの炙り平造りとにぎり鮨
平成28年 3月号
No.146 オヒョウ刺身
平成28年 2月号
No.145 ナマズ刺身薄造り
平成28年 1月号
No.145-2 ナマズにぎり鮨
平成28年1月号
No.144 ソロバン玉の串焼き
平成27年12月号
No.144-2 ボラの洗い造り
平成27年12月号
No.143 海を隔てた魚食の違い
平成27年11月号
No.143-2 海を隔てた魚食の違い
平成27年11月号
No.142 マイワシづくし(刺身&にぎり鮨)
平成27年10月号
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No.140 グルクマ刺身平造り
(平成27年8月号)
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(平成27年7月号)
No.138 活アイゴ平造り
(平成27年6月号)
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No.136 ハマダイ骨付き頭付き切身(平成27年4月)
No.135 サヨリ姿造り・にぎり鮨・酢の物(平成27年3月)
No.134 真鯛にぎり鮨(平成27年2月号)
No.133 生魚対面裸売りの勧め(平成27年1月号)
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No.131 ロブスター刺身姿造り(平成26年11月号)
No.130 真サバ炙り平造り(平成26年10月号)
No.129 紅鮭ステーキ(平成26年9月号)
128 コイの洗い(平成26年8月号)
127 旬線刺身盛合わせ(平成26年7月号)
126 エツ刺身姿造り(平成26年6月号)
125 メバル薄造り(平成26年5月号)
124 旬のアマダイの鮨と刺身(平成26年4月号)
123 本マグロづくし刺身盛合わせ(平成26年3月号)
122 寒メジナにぎり鮨(平成26年2月号)
121 うなちらし(うな重)平成26年1月号)
120 アルゼンチンアカエビの魅力(平成25年12月号)
119 シドニーフィッシュマーケット(平成25年11月号)
118 生秋鮭焼霜刺身(平成25年10月号)
117 カンパチ腹トロ薄造り(平成25年9月号)
116 イスズミ平造り(平成25年8月号)
115 ヤリイカ姿造り(平成25年7月号)
114 イサキ姿造り(平成25年6月号)
113 ウマヅラハギ薄造り(平成25年5月号)
112 片口鰯にぎり鮨(平成25年4月号)
111 旬鮮刺身ちらし鮨(平成25年3月号)
110 生アナゴにぎり鮨(平成25年2月号)
109 魚屋鮨鉢盛り大トロ5カン入り(平成25年1月号)
108 アラちゃんこ鍋(平成24年12月号)
107 サーモンレタス裏巻き(平成24年11月号)
106 秋太郎平造り(平成24年10月号)
105 コノシロ糸造り(平成24年9月号)
104 活鱧の刺身(平成24年8月号)
103 Bad money drives out good money(平成24年7月号)
102 コチ薄造り(平成24年 6月号)
No.101 キビナゴ開き造り(平成24年 5月号)
No.100 アトランティックサーモン薄造り(平成24年 4月号)
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令和 4年 6月号  222

キジハタ商品化


ハタとクエ

ある店でキジハタの約600gサイズに1尾980円の売価がつけられていた。締まりではあったが刺身や鮨に十分使える鮮度のものであり、他にも一緒に選んだ魚と共に割り引いてもらい安く手に入れた。

キジハタはスズキ系スズキ目スズキ亜目ハタ科マハタ属の魚である。この名前は鳥の雉(キジ)に似ていることからつけられとのことである。

同じマハタ属の兄弟であるクエは、福岡、長崎、佐賀など北部九州では別名アラとも呼ばれ、標準和名クエの旬は寒い季節の10月から2月にかけての頃であり、これに反して5月から8月の夏場が旬のキジハタとはまったく違う季節である。

クエとハタは同じマハタ属であり、とても良く似ていてなかなか簡単には見分けがつかず、どっちなのか直ぐには判断できないのが普通だと思う。その見分け方で参考になる画像があったので以下に参考資料として引用させていただくことにする。

言葉として表現すると「クエは横縞の前2本が頭のほうに流れているのに比べ、マハタは全て横縞のまま」ということで、またクエは成魚になるとこの横縞はほぼ消えて見えなくなる。

キジハタのことを関西地方ではアコウと称し「冬のフグ、夏のアコウ」と、フグと並び称されるほど珍重されてきた。ところが、筆者は1尾980円のキジハタを他の魚と一緒に割り引いてもらったので、正確な価格は不明だが、更に安く購入したのである。関西ではなく九州であり、キジハタに対する評価は少し違うかもしれないが、少なくとも言えることは本来高級魚であるキジハタの価値は、昔ほど高く見られなくなっているようだと最近感じている。

そのようにに感じるようになったのは、これは本当に何の裏付けもなくカンの世界でしかないが、以前は魚売場で高級魚ハタ類の一つとしてよく見かけた手ごろな価格のアオハタ(黄アラ)の存在よりも、このところキジハタの方が目立ち始めていると感じていたのである。価格は需要と供給の関係で成り立つので、安い価格はコロナ禍の影響もそれなりにあるとは思われるが、それにしても最近は安くなっているのである。

下の画像はキジハタにそっくりなスジアラという沖縄や南西諸島に多く棲息しているスズキ系スズキ目スズキ亜目ハタ科スジアラ属の魚である。

スジアラのことを、沖縄ではアカジンミーバイ、奄美ではハージンネバリと呼び、沖縄ではアカマチ(ハマダイ)、マクブ(シロクロベラ)と共に三大高級魚の一つである。こういう地域において、スジアラは冬とか夏に季節を限定した旬の感覚は薄く、一年中最高ランクの高級魚として通用し、1尾5千円くらいは珍しくなく1万円を超えた価格も普通に見られる。

関西ではキジハタも、以前沖縄でのアカジンと同じような位置づけで扱われていたはずだが、最近キジハタはそれなりの品揃えレベルをしている魚売場ではよく見かけるし、その価格もこなれていることが多く、随分と大衆的な価格で取引されるようになっているように感じているのである。


雌性先熟(しせいせんじゅく)

実はキジハタだけではなく、ハタ科の仲間でも希少なはずのクエも、比較的多く漁獲されるようになってきているという話を筆者は耳にするようになってきた。

長崎でクエはアラと呼ばれているが、11月の九州場所の頃からアラの取引価格はピークを迎えるはずなのに、昨年末は水産関係者から「アラが獲れても値段が安すぎて話にならない・・・」という声を聞いたのである。この価格形成には当然ながらコロナ禍の影響も大きいとは思えるが、2年前の頃とは外食環境もだいぶ好転してきていたにも拘わらず、こういう声を聞くというのはコロナ禍の影響だけでは片付けられない要因も存在していると思われるのである。

例えば、海の中の環境変化もあるのではないかと考えられるが、筆者は「地球温暖化説懐疑論者」なので、決して地球温暖化が原因の一つなどといった虚説をまことしやかにでっち上げるつもりはない。しかし例えば本マグロの漁獲規制によって本マグロ資源が復活拡大し、その反動で本マグロの餌となるスルメイカやヤリイカなどのイカ類の資源が減少しているのではないか、との漁師さんの生の声などに筆者は真剣に耳を傾けるのである。

海の中のことについて、筆者は基本的姿勢として「全然分からん」というスタンスである。残念ながら海の中で生じている様々な事象の要因について、筆者はほとんど科学的な知識は持ち合わせていない。だから漁業関係者から「最近はアラがたくさん獲れるようになっている」という事実を告げられると、それは漁業の現場で起こっている具体的な事実に違いないと思うのである。

そんな筆者が少し気になっていることがある。それはハタ科マハタ属の魚の特徴の一つである「雌性先熟」である。生存競争の激しい海の世界で子孫を残していくには、より多くの子供をつくることが有利なので、子どもの数を増やし続ける手段として「性転換」を行なう魚がいるのだ。実はキジハタを含むマハタ属の魚はその一つであり、他にもクロダイ、マゴチ、カクレクマノミ、ボタンエビなども同じである。

マハタ属は一夫多妻制で生存していて、一夫多妻制では縄張りとメスを巡ってオス同士が激しく争うため、体の小さいオスは縄張りを持てず繁殖の機会を得にくい。そのため、体が小さいときはメスとして体の大きいオスと繁殖を行い、縄張り争いで負けるのを回避しながら確実に自分の遺伝子が入った受精卵を作る。その後、成長して体長60cmを超えるころになるとオスへと性転換をするという仕組みである。

このような魔法のような子孫繁栄の仕組みを持っているハタ科の魚と、人間に狙い撃ちされて資源を減らした本マグロや、その後世界の漁獲規制によって資源を増やした本マグロに捕食されて資源減少を続けているイカ類など、外的要因による激しい資源状況の変化を受ける魚たちと比べると、雌性先熟の機能を持つハタ科の魚は実に柔軟な仕組みで子孫繁栄ができるのである。

ハタ科の魚は卵から孵化したときの大きさがマダイやヒラメなどと比べると2/3程度と小さいが、1尾当たりの産卵数は数百万にもなる。あまり遊泳力には優れず、浅海の磯で群れを作らずに単独行動をしながらエサが豊富な場所に居座り、岩礁域に棲む生物を捕食する。クエやハタは成長すると全長60pほどの大きさになるが、まれに全長2m、150s前後に達する個体もいるそうだ。そして世界中の温帯から熱帯の海に広く棲息し、世界で64属475種が記録され、日本だけでも30属129種もいるという魚類のなかでもメジャー級の一大勢力なのだ。

つまり、ハタ科の魚は雌性先熟という性転換の魔法を武器にして、海の中で勢力を更に伸ばしつつあるのではないかと推測され、本マグロやイカ類のような激しい資源変動による勢力弱体化はこれからも生じることはないのではないか思われ、ハタ科の魚は漁獲高の減少による価格高騰はこれからも起きることはないだろうと筆者は勝手に推測している。


キジハタの商品化

そんな海の中の一大勢力の一つに属するキジハタは、昔から変わらず高級魚でありながらも、今は以前より小売りしやすくなっているという事実があるのだ。そしてキジハタの旬である6月を迎え、今回手頃なサイズのものがリーズナブルな価格で手に入ったことから、今月号ではキジハタ1尾をフルに活かす商品化を紹介することにしてみよう。

キジハタ1尾を刺身、鮨、切身などへ商品展開するにあたって、付加価値を高めるためのポイントとなるのは二枚おろしの方法である。キジハタのような高級魚の価値を落とさないためには、二枚おろしの方法は以下の画像のように頭付きのままでおこなうことをお勧めする。

キジハタの頭付き2枚おろし
1,内臓を除去し水気を拭き取った後、下身の尻ビレの上を切り開く。 5,尾部から山高骨の上を頭部側へと切り進める。
2,下身の背ビレ際の尾部側に切り込みを入れる。 6,左手で頭部をしっかり押さえ、出刃包丁の刃先を頭部中心部へと強く切り入れる。
3,中骨の上を頭部側へ切り進める。 7,堅い頭部を半割にするため、魚体を立てて更に切り進める。
4,尾部の山高骨を切り開き、穴を開ける。 8,最後に顎の部分を切り離す。
キジハタの頭付き二枚おろし出来上がり

 

キジハタの二枚おろしが終わったら、切身商品を作成する。キジハタは高級魚なのでその価値に相応しい容器を選んで商品化する。1/4の切身で売らず、頭付き半身でボリュームを出し、安さではなく価値をアピールし、それなりに強気の売価をつける。

キジハタ切身商品化
1,背ビレを切り落とす。 3,頭部をつけたまま半割りにする。
2,胸ビレ、腹ビレ、尻ビレを切り落とす。 4,半割りにしたキジハタ
キジハタの半身切身

 

キジハタ切身の煮付け作業工程
1,沸騰した煮汁に切身を入れる。 3,時々落とし蓋をめくり、煮汁を魚の上にかける。仕上げにミリンを大さじ1を加え、ひと煮立ちさせて照りを出す。
2,落とし蓋をする。 4,火を止めて、暫くの間粗熱をとる。
キジハタの煮付け

 

次は残りの半身を使って、刺身と鮨の商品化をする。

キジハタの刺身と鮨
1,下身の頭部をたすき掛けに切り落とす。この時、頭部は刺身の演出に使うので捨てないで取り置く。 4,皮を引いた状態。
2,頭部を落とした下身の腹骨を除去する。 5,皮下はスッキリつるつるで適度に脂が乗っている。
3,外引きで皮を引く。 6,下身を背身と腹身に分離する。
姿造り風薄造り刺身
腹身を使ったにぎり鮨

 


生き残りと成長

FISH FOOD TIMES では、これまでハタ科の魚をいくつか紹介してきている。平成19年6月号マハタの薄造り平成24年12月号アラちゃんこ鍋平成28年5月号スジアラ炙り刺身平成28年9月号アオハタ薄造り刺身、などである。

筆者は自分でこれらの過去の記事を読み直してみて、今となっては内容的に色々問題があるなと感じる部分もあるのだが、それはそれで当時筆者の力がまだなかったのだから仕方ないと諦めることにしている。もし読者の皆さんに時間があれば、これらにも少しは目を通してほしいと思うが、もしかすると今月号とは違う知識に触れて多少有益な情報があるかもしれない。

実はキジハタと非常に近いアカハタも画像としてストックしていて別の機会に紹介したいところなのだが、今月号のキジハタとどのように観点を変えた内容で表現出来るのか悩ましいところである。

こうして過去も含めて、マハタ、クエ(アラ)、スジアラ、アオハタ、キジハタ、アカハタ、などハタ科の魚のことを色々調べ言及していくと、これらは世界中の温帯から熱帯の海に広く棲息していて、世界で64属475種、日本だけでも30属129種もいるという魚類のなかでもメジャー級の一大勢力であることが良く理解できる。

世界中の海にいるハタ科の魚たちは、白身でクセがなく美味しい種類が多く、日本に限らず外国でも高級魚扱いを受けているようであり、これからも手っ取り早くお金に換えやすい魚として狙い撃ちされていくかもしれない。そしてその結果として漁獲規制を受けるような資源減少の事態を迎えるようになるかというと、たぶんそのようなことにはならないのではないかと筆者は推測している。

何故ならば、雌性先熟という魔法の機能だけではなく、イワシやサバなどの青魚のように何万尾も群れて行動することはなく、基本的に単独行動をしているから、いわゆる一網打尽で大量に漁獲されるということはないからである。字のごとく弱い魚が大きな群れをつくる鰯のように、資源枯渇によって幻の魚と呼ばれたことのある激しい資源の盛衰を繰り返すマイワシより、ハタ科の魚のように小さい時はメスとしてオスの庇護を受け、60kgもの巨体に成長することが出来たらオスに性転換し、単独行動でメスを従えて子孫繁栄をおこなうという方法の方が海の中の生存競争で生き残っていくには都合が良いということである。

これは人間社会のビジネスでも応用できる理論なのかも知れない。例えば、個々人が大きな組織の中で恵まれた境遇で生き続け、経験を積み知識を蓄えて人として大きく成長することが出来たら、今度はその組織に埋もれずに飛び出し、会社の看板ではなく自分の能力で社会を渡り歩いていくことができるようになることと同じではないかと考える。

ビジネスマンとして組織のトップになることは素晴らしいことに違いないとは思うが、恵まれた境遇に安住して平凡に生きて定年退職を迎えるよりも、この先どうなるか分からない荒波の中に泳ぎだし、途中で溺れ死ぬことになるのか、それとも楽園の島に泳ぎ着いて王として君臨することができるのか、それを試すのも人生の選択肢の一つであろうと思う。

世界のビジネス界をリードするアメリカは起業家精神が旺盛で、次々と新たなビジネスが生まれやすい環境が存在していると思うが、それに比べて経済面での衰退が著しい日本はどうだろう。筆者が日本で問題と感じるのは、特に食品関連においては、国の縛りが強すぎて「あれもダメ、これもダメ、ダメ、ダメ・・・、規制、規制、規制・・・」と法律で雁字搦めにしていることである。その言い訳は、国民の安心安全のためということなのだが、役所があまり法律で縛り続けていたら、これからの日本ではアントレプレナーはなかなか出てこないと思う。

読者の皆さんは人間なのだから、ハタ科の魚のように性転換をすることは(たぶん)ないと思うが、ビジネスマンとして能力を高め又人間として成長し、その姿を大きく変貌させることは出来るはずである。

最後に敢えて言おう。水産業界で独立し、孤軍奮闘で頑張っているあなた・・・。是非とも150kgもの大きなクエのように大きくなってほしいものである。心から応援を惜しまない・・・



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更新日時 令和 4年 6月 1日