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平成28年 3月号 147

スマの炙り平造りとにぎり鮨


巻頭画像のにぎり鮨と平造りの見た目はだいぶ違っているので、まるで別の魚のように感じるかもしれないが、これはスマという同じ魚を使った商品である。

その地方名は、スマガツオ、ヤイトガツオ、オボソ、ホシガツオ、ホクロなどと、色々な呼び方をされていて、スズキ系スズキ目サバ亜目サバ科スマ属に属し、マグロ、カツオ、サバと同じサバ科の仲間である。

特徴としては胸ビレの下あたりに1個から数個の黒い斑点があり、そのことをヤイト(お灸)やホクロ(黒子)、ホシ(星)という表現をして特徴づけているようで、スマの呼び方は背中の縞模様のシマが訛ってスマとなったのが語源とされている。

上画像は先月2月下旬に鹿児島で漁獲された4.5kgのスマであり、巻頭の炙り平造り画像はこの魚を使って作成した。

そして下の画像は2013年12月中旬に長崎県北部の対馬沖で、ハガツオの中に混じって一緒に漁獲された2kg強のスマであり、巻頭の下画像のにぎり鮨に使用したものだ。

同じスマでも、鹿児島のは魚体が大きいけれどスマートな体型をしており、長崎のは小さいが魚体長と胴周りのバランスが太くて短く、丸々と太っている印象である。

 

上の画像はハガツオと一緒にスマが水揚げされた時、対馬のある漁協の様子である。

 

そして上画像は、筆者が2013年10月末に訪問したオーストラリアシドニーで、南半球では最大の魚市場と言われているシドニーフィッシュマーケットで撮った写真である。

シドニーフィッシュマーケットでの詳しい様子は弊誌の平成25年11月号 No.119に記しているので参照してほしいが、この画像にもあるように、スマは日本の本州中部以南だけでなく、ハワイ、オーストラリア北部、アフリカ東岸まで、西太平洋からインド洋にかけての熱帯海域および亜熱帯海域に広く分布している大型肉食魚であり、英名では Mackerel tuna と呼ばれている。


鹿児島で漁獲されたスマを解体していくと、

胃袋を含む大きな内臓が出てきた。腹部の厚みは薄い。

 

頭部はタスキ落としにして、腹部は「ハラス」を商品化しない形状にした。

 

二枚におろすと、真っ赤というよりもダーク系の赤黒い身が現れた。

 

三枚におろした後、下身を背と腹に分け、背身は炙り用に皮をつけたまま鱗を削り取り、腹身の方は皮をすいた。

 

砕氷の上に背身を置いて、その表面全体をバーナーで炙る。

 

   

左画像の背身は縦割りにし、右画像の腹身も同じく縦割りにして、刺身と鮨ネタを造りやすい形状にする。

 

   

背身の炙り平造り              腹身のにぎり鮨

 

そして完成した上画像を見ても判るように、鹿児島産のスマは赤い色が目立っていて、あまり脂のノリが良くない。


さて、今度は長崎県対馬沖で漁獲されたスマである。

こちらのスマは脂が乗ったハラスを商品として別売りするために、頭部に内臓を付けたまま胴体を切り離す頭落としの方法をとった。腹部は厚みがあり、内臓も脂肪で白っぽいのが見た目で分かる。

 

三枚におろすと、上画像のように全体的に乳白色に感じられる明るめの赤身であり、脂のノリが良いのが見ただけで判る。

 

皮をすくと、皮の下に脂肪がタップリ蓄えられているのが一目瞭然だ。

 

   

背身の平造り               腹身のにぎり鮨

そして対馬産のスマで出来上がったのが上の二つの画像である。

同じスマでも、対馬沖か南西諸島のものか、そして季節が冬の始まりか春の初めなのか、さらには魚体の部位が背身なのか腹身かなどの条件によって、見た目の印象は大きく違ってくるだけでなく、もちろん味の方も大きく違うのが見ただけで理解できるのではないかと思う。


このようにスマという魚は脂のノリが良いこともあって、知る人ぞ知るとても美味しい魚なのだが、鮪や本鰹のように大量に漁獲されないため世間ではほとんど知られていないし、魚小売のプロの間でさえ広く認知されているとは言えない事実がある。

ところがここ最近、スマは脂が乗りやすく美味しいことに注目し、これを養殖魚として売り出そうとするところが幾つか現れてきた。

例えばこれは養殖スマを本格的に売り出そうという試みの新聞記事である。

四国の愛媛県にある愛媛大学南予水産研究センターの後藤理恵准教授が平成26年まで代表として研究を進め、その後同じ南予水産研究センター斎藤大樹准教授が代表として養殖スマの研究を進めており、主に愛媛県が主導的な立場となって興洋水産及び山木産業という会社がスマの稚魚を2,000尾ほどを池入れして育てていて、昨年10月に大阪の百貨店で養殖スマの試食販売を試みたことが記事になっていた。

いっぽう2016年1月12日には、和歌山県水産試験場(串本町)が2014年夏から東京海洋大などと協力してスマの養殖を開始しており、串本町の生簀で冬を越した1尾1.5kgの大きさのスマを愛媛よりも先に全国で初めて出荷すると発表し、1月16日から大阪の阪急うめだ百貨店で販売した。

これに刺激された愛媛県は、同じ16日に大阪の阪神梅田百貨店でスマを販売をしたとのことであり、2016年は養殖スマに関して県や大学を巻き込んで、その威信をかけた開発競争が始まったようである。

天然の生鮮本カツオなどの漁獲は最近あまり安定せず、また養殖の本マグロを1尾で仕入れるとなると最低でも何10kgもの大きさになることを考えれば、せいぜい10kg以下の大きさに納るはずのスマというのは、とても使い勝手が良い大きさとなる。

過去に弊誌 FISH FOOD TIIMES では、6年前の平成22年5月号 No.77 の誌面において「世界初!? ネット初公開 養殖ヤイトカツオ平造り」というテーマで、養殖スマのことを取り上げていた。

この時は、近畿大学の奄美大島事業所でスマの養殖の研究がされていて、その一部が筆者の指導先スーパーで販売されていたことに注目し、その時に養殖スマに関して以下のような文章を記していた。

天然のヤイトガツオを知っている人ならば、首を傾げるはずである。そう、身の色の赤さが足りないのである。天然のものはもっと濃い目の赤色が赤々としていて、もっと鮮やかなのである。つまり、これも養殖本マグロと似たような傾向があるようで、本来の赤い色が、脂肪によって少しくすんだような色になっているのだ。

しかし、色は少しくすんでいても味はなかなかのものである。天然のヤイトガツオは、一般的に本ガツオに比べると味の点でも格下と見られているが、この養殖ヤイトガツオは、豊富な脂肪分によって「戻りガツオ」以上の味とも言える。

 

当時は対馬沖のような冷たい海で獲れるスマが、天然でもこのように脂が乗るということを筆者は知らなかったのでこう記していたのだが、そういう意味では筆者も当時より知識面で少し前進したのかもしれない。

今回材料として使用したスマは両方とも天然ものだったが、対馬産のスマはまるで養殖もののように脂が乗っていたので、実際は養殖ものではないのかと誤解されそうだ。しかし間違いなく天然ものであったことをこのスマを自分で調理し自ら写真撮りをした筆者自身が証明する。

スマは魚体の大きさが本マグロのように大きくならなくても脂が乗りやすい身質のようであり、もしスマの養殖がこの先軌道に乗っていけば、本マグロのトロの代替品として小売店舗でも使っていける面白い存在になるのではないかという気がする。

しかしスマの養殖はまだスタートしたばかりで生産量も少ないことから、まだとても養殖本マグロの代替を担うような力はなく、これから養殖事業が順調にいってくれればと期待する段階である。

スマのことをある地域で、ホシ(星のような斑点がある)とかホシガツオと呼ぶところもあるが、スマの養殖というのはまさに水産業界に「新たな期待のホシ」が現れたということではないだろうか。


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更新日時 平成28年 3月1日