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令和 4年 7月号  223

再考 旬鮮刺身盛り合わせ


養殖魚の価格高騰が止まらない

このところ、世の中はほとんど全ての物価が上昇していると言える状況にあるが、養殖魚もその例に漏れない。代表的養殖魚の豊洲市場での価格推移を見てみよう。(以下、gdfreakのグラフは東京都中央卸売市場日報、市場統計情報月報の豊洲市場価格推移)

養殖ハマチ(養殖ブリ)の場合、ここ最近の価格高騰の一つの要因は2年前のモジャコ(ブリの稚魚)が不漁だったことで2年魚の在池量が少なくなったことにあるが、さらに約1年前からコロナ禍の中で極端な需要低迷の時期を過ぎて、長い期間低迷していた養殖ブリ・ハマチの価格は上昇トレンドに転じ、今や史上最高価格とも言える状況となっている。

次はカンパチ。

カンパチはコロナ禍の需要低迷の影響をもろに受け、2020年の後半から1年ほどかつてないほどの価格低迷を続けていたが、2021年後半に至ると養殖ブリ・ハマチと歩調を合わせるように価格上昇に転じ、かつて高級魚と位置づけられていた価格にほぼ復活したようである。

次はマダイ。

マダイもカンパチと同じように2021年後半から上昇トレンドに転じていたが、ここ最近の価格下落は天然鯛が多く漁獲される時期ということで価格の影響を受けるという例年の季節的な要因が関係していると推測される。しかし、ここ数年で一番高い価格で推移しているのはブリやカンパチと同じである。

次は輸入サケ・マスである。

主に刺身や鮨などの生食向けに使用されるノルウェー空輸サーモンの現地輸出価格は、6月13日(月)から6月19日(日)の第24週で98.43クローネ/kgとなった。1クローネは14円なので、日本円に換算すると1,378円/kgであり、これに空輸の物流費、商社マージンなどが加わることになり、相変わらず天井知らずの価格上昇を続けている。そして下のグラフを見れば、上のグラフに呼応するような形で、豊洲市場ではノルウェーの空輸サーモンを含む輸入サケマスの価格が全般的に上昇しているのが理解できる。

次は養殖生本マグロである。

この養殖生本マグロもカンパチと同じように、コロナ禍の影響で需要が落ち込んで価格も低迷していたが、このところ本来の高級魚らしい相場に復活し、強気の価格形成になっているようだ。


高騰した養殖魚を使用した刺身盛り合わせ

上に見てきたように、今も現在進行形で高騰している養殖魚を使用して刺身盛り合わせをつくるとどうなるのか計算してみよう。以下に一例の画像を示しているが、筆者が過去に作成したこの商品は、スーパーなどの事業規模、取引先との力関係、地域による使用頻度や好悪、その他条件によって仕入れる原材料価格は様々だと思うが、とりあえずはそれらの個別の環境を考慮に入れず、上記したような現況の相場で計算をしてみることにしたい。

具体例は、上画像の刺身盛り合わせ4点盛りの場合である。刺身担当者の考えや各会社の刺身作成マニュアルなどで違いはあると思うが、基本的にあまり薄くない平均的な大きさとして、1切れの重さは12gで統一する。

先ず左上のマグロ。これを2016年6月16日に作成したが、これはたぶん生キハダマグロだったと記憶している。しかし生キハダマグロというのは鮮度と相場で価格は大きく乱高下するので、今月号のテーマに沿って養殖生本マグロの赤身だということで設定したい。養殖生本マグロの仕入れはGG(エラ内臓抜き)、節、ブロック、冊など、様々な仕入れ形態があるが、今回は価格的に一番安くなるGGで計算する。

養殖生本マグロGGの47kgを3,000円/kgで仕入れ、正味重量25.2kgで歩留まり率53.6%となり、構成比は赤身22%、中トロ50%、大トロ28%となったとする。この場合の単純な計算結果を見直すため、任意で設定する「換算原価変数」を活用して原価計算すると、それぞれの換算原価は赤身が3,600円/kg、中トロ5,400円/kg、大トロ7,500円/kgとなり、原価合計はGGの仕入れ価格の141,000円とほぼ同じ140,874円となる。その結果、1切れ12gの原価は赤身43.2円、中トロ64.8円、大トロ90.0円となる。対象となる赤身の原価は繰り上げて1切れを44円と見る。

次に右上のカンパチである。カンパチの大きさは4kgほどだと仮定して、皮なしの短冊までおこなった歩留まり率は45%になったとする。歩留まり率の設定には異論もあると思うが、平均的にこの数値であれば大きな問題はないと考える。仕入れ価格は、上のグラフにある直近の2,014円kgとすると、約448円/100gとなるから、1切れ12gは53.8円なので約54円である。

左下のマダイは、使い勝手の良い1.5kgサイズを仕入れるとする。皮なしの短冊にした歩留まり率を35%と仮定すると、直近の相場は814円/kgなので、約233円/kgとなるから、1切れ12gは27.96円なので約28円である。

右下の生アトランサーモンの場合、上のグラフでは具体例が難しいので、FISH FOOD TIMES 2022年5月号No.221で採りあげた時の例でいきたい。ノルウェー空輸生アトランサーモンのトリムC 真空袋入りを刺身用短冊にした場合、歩留まり率を85%だと仮定して、仕入れ価格が3,000円/kgであれば歩留まり原価は3,529.4円/kgになるから、100g当たりの原価は約353円ほどになる。1切れ12gは42.3円なので約43円である。

そして、原材料の合計とトレー、あしらいなどを総合計すると、以下のようになった。

上画像の4点盛り刺身盛り合わせの原価は970円となった。さて、この計算結果を見て、読者の皆さんはこの商品にどんな売価をつけるであろう。単純に値入率を50%にするのは難しいし、30%では低すぎるということで40%にしてみると、計算結果は1,616.6円/kgとなるので実際は1,680円というところだろう。

これまでの常識的な感覚で売価をつけるとすると、まあ980円というところが相場だっただろうと思うが、これでは原価にしかないので作らない方がましということになる。しかも養殖生本マグロはGGの規格だから最安値となる計算なので、あらかじめ解体した割高な背身や腹身の節単位での仕入れだったり、現場が能力的に短冊しか扱うことができないとなったら、更に原価が上乗せされることになるのだ。

そこで、原価を安くするために刺身を10gカットに小さくすると、

刺身の切り方をこれ以上薄くすると薄造りの世界になってしまうので、平造り技法としてはギリギリ大きさの10gにすると、原価総合計は830円であり、値入率40%を確保すると1383.3円/kgの計算結果なので1,480円だろうか。

これでも売価として通用しないとなると、最後の手段として刺身の切れ数を4切れにする方法である。4という数字は一般的に縁起の良い数字ではないのはご存じだろう。昔から仏教では奇数が縁起が良いとされ、偶数は忌避されてきたので3切れや5切れの盛り付けが基本であり、4切れというのは避けられてきたという和食の伝統がある。しかし今やそんなことを知る人も少ないし、逆に4切れなら二人でちょうど半分ずつに割りきれるとして好まれる傾向にあり、実際に筆者の関係先でも一山4切れ盛りが常識的になりつつあるのは認めざるを得ない。

そこで、平造り刺身を薄い10gの4切れずつに減らして盛り変えると、

10g4切れずつの4点盛り刺身盛り合わせとなると、原価総合計は689円であり、値入率40%を確保すると1,148.3円/kgとなるので、売価は1,180円というところだろうか。

こうやって次々とコストカットを進めていくと、そのたびに魅力がなくなり、商品の持つ価値が削がれていき、その売れ行きが芳しくなくなっていくのである。


コストカットと買い易さの限界

「芳しくない売れゆき」という言葉はあまり心地よいものではない。しかし水産部門の売上は、コロナ禍の巣ごもり特需が過ぎて以降「それほど悪くはない」とか「まあそこそこに・・・」という言葉は聞こえてこなくなっている。

以下は全国に所在するスーパーが先月5月度に売り上げた数字の速報値である。残念ながら水産部門は売上構成比では惣菜部門よりも低く、売上前年比は下がり続けていて、全体の足を引っ張る一番の存在である。

10年前の時点では、水産部門の位置づけがどうだったのか、同じ統計調査で調べてみると以下の事実が記されていた。

10年前、水産部門構成比は9.1%、惣菜部門の構成比は9.0%であり、僅かだが上に位置していたけれど、しかし今や先月の構成比は水産8.6%と0.5%下がり、惣菜は10.4% となって1.4%上昇し、この10年間で完全に逆転してしまったのである。 この10年間で水産部門は16%ほど売上は伸びたが、惣菜部門は42%も伸びて、畜産も同じく42%売上を伸ばしている事実がある。

どうしてこうなってしまったのか、水産部門の売上が伸びない要因については FISH FOOD TIMES 令和4年1月号 No.217 の中で筆者の考えを記しているので、今月号で同じようなことを重複して述べるようなことは避けたいと思うが、その問題を違う観点から考えてみて、現在も進行中の「水産部門の長期凋落トレンド」を克服する方法を探ってみたい。

例えば、上に記した高騰する養殖魚の価格をどのように受け止め、そして対処していくかである。コストカットするために刺身の一切れの大きさを12gではなく10gに小さくしたり、盛りつけの数を5切れではなく4切れに少なくしたりするだけでなく、更にはあしらいのキュウリやレモン、海藻や大葉をムダな飾りだとして省いたり、トレーを安い素材のものに変更したりするといったことは、直ぐに誰にでも出来ることだけれど、これはまさに能がないと言われても仕方がない方法である。

買い易い価格を実現するために、商品の魅力を次々に削ぎ落としていくということは価値の減損であり、自らの行動でその価値を貶めていくことであり、そのことは同時にお客様の満足度を下げていくことに他ならず、そういう手法を執り続けていく限り、そのうちに必ずその限界にぶち当たり、そういう方向性に水産部門の輝かしい未来はないだろう。

商品というのは、常に魅力を発信し価値を高めることでお客様に満足感を与えられるようにすべきであり、そのことに対してそれなりの対価をいただけるように商品は進化させていかなければならないと考える。

つまり上の画像の刺身盛り合わせ4点盛りは、コストカットして安く売れるようにするという方向性を執るのではなく、まったく逆に質的に内容を高めて「この中身だったら、この売価でも決して高くない」とお客様に言ってもらえる商品を提案すべきと考える。その方向性については、これまで FISH FOOD TIMES において、主たるテーマとして数々の提案をしてきた。

このように価値を高めることでお客様の満足度を得るようにする方法というのは、どちらかと言えば売価が高くなりがちである。しかしその一方では、少し発想を変えて違う意味でお客様に満足感を得てもらえるような方法も考えてみる必要性もあると思われる。


改めて、旬鮮刺身盛り合わせの意義を再考

このFISH FOOD TIMES は平成16年1月からスタートし、今月号で18年6ヶ月目の223号となったが、その第1号の巻頭を飾った画像は旬鮮刺身盛り合わせなのである。当時筆者はこの商品の意義を自分なりの方法で世の中に問いたかったので、このホームページをその道のプロの力を借りず、手探りしながら自分の力で立ち上げたのである。

以下は読者の皆さんに当時のまま、拙い構成や内容の乏しさも隠すことなくサイトを見ていただくため、敢えてスクリーンショットの方法で貼り付けた。

 

続いて、3月号でも旬鮮刺身盛り合わせのことについて記していた。

ここに記している旬鮮刺身盛り合わせの原点は、当時も安定して手に入るけれど、仕入れ原価が高い養殖魚や解凍魚を材料に使った刺身盛り合わせをつくると、それらは値入率があまり高くないにもかかわらず、売価は必ずしも安くならないので、結局のところ刺身盛合せをつくっても最終的になかなか利益につながらないという現場の悩みを何らかの形で解決したいとの思いだった。

上画像のような初期の頃の旬鮮刺身盛り合わせは、刺身盛り合わせの材料となっている養殖魚や解凍魚を単に天然魚に入れ替えるだけの発想だった。そしてその後は、様々な作成手法を試みながら色々な形での旬鮮刺身盛り合わせを提案してきたが、このところ落ち着いている形というのが今月号の巻頭画像にあるような商品化方法である。

例えば、その中の一つがこれである、

   

4種類の魚を使った刺身盛り合わせだが、その原価は右の表にあるように349円という計算になる。これは天然魚がこれくらいの価格で仕入れられたとしての仮定であるが、もちろん実際に実現可能な価格である。値入れ率40%で計算すると581.6円となるので、580円から680円の売価が想定されるが、680円ならば値入れ率は48.7%を確保できる。

養殖魚を4種類使った刺身盛り合わせと同じ4種類の魚を使っているけれど、その材料はすべて天然魚という違いがある。そして、もう一つの違いは4種類の天然魚のなかで一番割安なネリゴ(カンパチの幼魚)を他の魚の2倍盛りつけてボリュームを出していることだ。こうすると、刺身盛り合わせ4点盛りよりも量的な魅力が増すのである。

この旬鮮刺身盛り合わせは量的な魅力があるだけでなく、値入れ率を50%近く確保しながら680円売価で販売できるとしたら、上画像の刺身盛り合わせ4点盛りの想定売価である1,680円、1,480円、1,180円と比較して、圧倒的なコストパフォーマンスを実現できることになるのである。

この点が以前の旬鮮刺身盛り合わせの作成方法とは違う部分であり、魚種による仕入れ価格の差を上手く活かし、同じようなボリュームの刺身を4山とするのではなく、一番安い仕入れ価格でありながら、出来れば色合いが派手目で出来るだけ目立つ魚を選択し、頭に当たる向こう盛りの位置にド〜ンと盛りつけることでボリューム感を増すことが出来る。

次に別の2例を紹介しよう。

  

  

このように盛りつける魚種は変化したけれど、考え方と方法は同じなので繰り返しの説明は避けたい。

こうして3種類の旬鮮刺身盛り合わせを比べてみると、同じ盛りつけ方法なのだが魚種を変えることで見た目だけでなく、原価も349円、359円、441円と変化する。旬鮮刺身盛り合わせというのは、基本的に仕入れ価格が変動する生魚を使用するので、これに伴って毎日その原価も変化することになる。

つまり仕入れ価格が変動する生魚をいかに上手にコントロールして刺身に活用できるかがポイントである。刺身担当者はその日入荷した魚を見て、適切な判断をおこなう判断力、魚種ごとに平造りや薄造りを使い分ける技術力、どの魚種とどの魚種をどう組み合わせたら売価を抑えられ高い値入れ率を確保できるかの計算力、そしてそれらを上手に活用して魅力的な商品化をする応用力が求められることになるのである。

本来、刺身盛り合わせというのは、このようなことが当たり前に出来る高い能力を持った優れた人材が商品化をおこなうことで「魚の組み合わせの妙」による熟れた果実の旨みを存分に味わい、水産部門に利益をもたらすことになるものなのだ。

ところが、今時のスーパーの魚売場は合理化・効率化・省力化の掛け声の下に、刺身商品製造の女性パート化を強力に推し進め、そのことを実現するために安定して手に入る養殖魚や解凍魚を使用することを前提としたマニュアルを整備しているのだ。そして魚売場の刺身コーナーでは、1年前も、半年前も、そして昨日も明日も同じような顔ぶれの魚で作られた変わり映えのしない刺身が常に並ぶことになっている。それが仮に新米パート社員が作った刺身であっても一人前の売価がつけられているので、見た目の問題から売れゆきをなかなか伸ばせないという問題も生じているのである。

水産部門は刺身商品クラスの売上構成比が高く、お客様から高い評価を受けている場合、その水産部門は利益率も比較的高く部門損益も優良であることが多い。ところが、会社の方針で合理化・効率化・省力化が進められた結果、刺身商品だけでなく他の魚商品も売れないために、ずっと長い間水産部門は店内構成比を下げ続け、店のお荷物的な存在として見られている会社に所属する水産部門は赤字体質から簡単には抜け出せないのである。


旬鮮刺身盛り合わせのグレードアップ

刺身商品というのは、技術訓練されていない人が「さあ刺身を作れ」と言われても、それは簡単にはできない「プロの世界の仕事」である。旬鮮刺身盛り合わせというのは刺身担当者の能力を測る上では格好の教材であり、又その人材が力を思う存分発揮するためには、水産部門を仕切る優秀なマネージャーの存在も重要であり、その連携プレーが上手くいくと魅力的な旬鮮刺身盛り合わせが魚売場に実現することになる。

しかし、旬鮮刺身盛り合わせも同じパターンを繰り返すだけでは飽きられてしまう。ベースとなる方法が確立したら、次のステップへと上昇することで売上を上げていくようにすべきであろう。例えば以下のような大盛り3点盛りという商品もあって良いのではないだろうか。名づけて「旬鮮刺身タップリ盛り」

    

 

次はまったく反対方向に舵をきって、刺身の切れ数を最少にして魚種を増やす旬鮮刺身盛り合わせである。

  

色んな魚種を少しずつ数多く盛りつけるので、名づけて「旬鮮ミニマム刺身盛り合わせ」である。養殖生本マグロの大トロや中トロが入って7種の刺身盛り合わせだから、これが売価1,280円ならば売れるはずだ。

このように、旬鮮刺身盛り合わせだからと言って天然魚だけにこだわる必要はないのではないかと考えるようになっている。要するに「組み合わせの妙」なのである。生本マグロの大トロ・中トロ・赤身だけで刺身盛り合わせを作ろうとすると、貧相なボリュームであっても、とんでもない高価な売価をつけざるを得ないことになるが、こうすればボリュームと売価のバランスがとれたコストパフォーマンスの良い刺身盛り合わせにすることが出来る。

こうなると、更にグレードアップして、まさに天然魚の最高級ランクに位置づけされるアマダイの湯霜と生本マグロ中トロを盛り合わせた「豪華旬鮮刺身盛り合わせ」に挑戦である。

  

容器には高級魚アマダイに相応しく折り箱トレーを使用して高級感を醸し出した。原価も刺身用の鮮度のアマダイを使うとなると、やはり1,000円を超えてしまう。しかしよく考えてみて欲しいのだが、高級料亭でしか味わえないようなアマダイの湯霜刺身入りの盛り合わせが1パック1,000円台の売価で購入できるとすれば、これは間違いなくお買い得であろう。このことが可能なのは天然マアジや天然のハガツオといった比較的安く仕入れられる魚と組み合わせたから出来たことであって、養殖魚のカンパチや生サーモンを組み合わせたのでは原価はその途端に跳ね上がるのである。

誤解しないで欲しいのだが、旬鮮刺身盛り合わせというのは安い売価でボリュームのある商品だけを目指すのではないということである。ようするに、刺身盛り合わせに天然魚を使用することで「組み合わせの妙」を発揮し、多少高い売価になっても、それがコストパフォーマンスを感じられる商品となるのであれば、高単価な「豪華旬鮮刺身盛り合わせ」も売ることが出来る。

刺身担当者がマニュアル化された刺身商品をロボットのように毎日毎日繰り返しているような魚売場であってはならない。刺身担当者が経験と技術、知識だけではなく、知恵もだすことで魅力的な刺身を提供しお客様に喜んでもらいたいのである。

刺身担当者は水産部門のなかで、一番優れた能力を持つ人材が担う仕事なのである。プロの誇りを持って、魅力的な刺身をこの世に出し続けてほしいものである。



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更新日時 令和 4年 7月 1日