privacy polycy
settlement page
 
魚種・テーマでの索引はここをクリック
 
   Back No.
No.251 魚の話題を聞かない?   令和6年 11月号
No.250  ホウライヒメジ     令和6年 10月号
No.249  ニザダイ       令和6年 9月号
No.248  シャコ        令和6年 8月号
No.247  天然ヒメマス      令和6年 7月号
No.246  ハマフエフキ     令和6年 6月号
No.245  シロアマダイ     令和6年 5月号
No.244  生ニシン       令和6年 4月号
No.243  生で食べるマエソ  令和6年 3月号
No.242  活き締めホッケ料理    令和6年 2月号
No.241  あの時思っていたことは、今・・・  令和6年 1月号
No.240  これが主役・・・?
令和5年 12月号
No.239  日出ずる国の原点
令和5年 11月号
No.238  国内養殖生サーモン
令和5年 10月号
No.237  カサゴS.K.U.
令和5年 9月号
No.236  全方位鮨鉢盛り
令和5年 8月号
No.235  養殖カワハギ刺身&鮨
令和5年 7月号
No.234  有明海の珍魚
令和5年 6月号
No.233  メヒカリ料理
令和5年 5月号
No.232  シロザメ刺身&湯引き
令和5年 4月号
No.231  貝料理
令和5年 3月号
No.230  キングクラブ類
令和5年 2月号
No.229 ミニマム刺身盛り合わせ
令和5年 1月号
No.228 トクビレ刺身と鮨
令和4年 12 月号
No.227 ベニズワイガニと境港
令和4年 11 月号
No.226 トラフグ刺身
令和4年 10 月号
No.225 サンマ〜、戻って来いよ
令和4年 9 月号
No.224 おもてなし旬鮮刺身盛
令和4年 8 月号
No.223 旬鮮刺身盛り合わせ
令和4年 7 月号
No.222 キジハタ商品化
令和4年 6 月号
No.221 戦争と魚
令和4年 5 月号
No.220 シロギス料理
令和4年 4 月号
No.219 海水入りアサリ
令和4年 3 月号
No.218 キチジ料理      令和4年 2月号
No.217 魚売場が生き残る道  令和4年 1月号
No.216 浮袋からニカワ、発声筋のヒレ肉  令和3年12月号
No.215 伊勢エビを求めたが  令和3年11月号
No.214 正露丸で安心、胡麻サバ  令和3年10月号
No.213 魚屋は真夜中に刺身を引き始める  令和3年 9月号
No.212 カツオ・イカ紅白刺身盛り合わせ  令和3年 8月号
No.211  肝なしウスバハギ刺身&鮨  令和3年 7月号
No.210  でかいタチウオ   令和3年 6月号
No.209 モンゴウイカ商品   令和3年 5月号
No.208 ビンナガ若魚平造り  令和3年 4月号
No.207  テングニシ刺身盛り合わせ   令和3年 3月号
No.206  ホウボウ姿造り   令和3年 2月号
No.205  鮭を二日に一切れ  令和3年 1月号
No.204 ハタハタ刺身&にぎり鮨 令和2年 12月号
No.203 青森の魚
令和2年 11月号
No.202 ツムブリ刺身
令和2年 10月号
No.201 チカメキントキ皮揚げ
令和2年 9月号
No.200 シマアジ刺身&鮨
令和2年 8月号
No.199 グルクン刺身姿造り
令和2年 7月号
No.198 スズキの商品化
令和2年 6月号
No.197 カツオ銀皮造り刺身
令和2年 5月号
No.196 ボタンエビ刺身
令和2年 4月号
No.195 ブリ商品
令和2年 3月号
No.194 ニシン骨切り
令和2年 2月号
No.193 魚屋鮨の魅力
令和2年 1月号
No.192 マダラの鍋用切身
令和元年 12月号
No.191 バンコク魚食事情
令和元年 11月号
No.190 ハガツオ刺身&鮨
令和元年 10月号
No.189 塩茹で花咲ガニ
令和元年 9月号
No.188 ベラにぎり鮨
令和元年 8月号
No.187 赤ウニイカ鮨
令和元年 7月号
No.186 イシガキダイ刺身
令和元年 6月号
No.185 アオダイ刺身
令和元年 5月号
No.184 ヨコワで作る刺身と鮨
平成31年 4月号
No.183 スルメイカを美味しく
平成31年 3月号
No.182 改めて、明太子とは?
平成31年 2月号
No.181 魚売場の活性化
平成31年 1月号
No.180 メスは冬、オスは夏
平成30年 12月号
No.179-2豊かな自然と多民族都市バンクーバー
平成30年 11月号
No.179-1成長企業がシアトルの未来を変える
平成30年 11月号
No.178ヒラスズキ鮨&切身
平成30年 10月号
No.177 メイチダイ刺身&鮨
平成30年 9月号
No.176 店内手作りタコ
平成30年 8月号
No.175 ウナギ鮨盛合わせ
平成30年 7月号
No.174 マアジのバラエティ
平成30年 6月号
No.173 ヒメダイ姿造り刺身
平成30年 5月号
No.172 クロダイ料理
平成30年 4月号
No.171 ヒメシャコガイ姿造り刺身
平成30年 3月号
No.170 ヌマガレイ刺身&にぎり鮨
平成30年 2月号
No.169 魚屋鮨スタイル
平成30年 1月号
No.168 ズワイガニ付加価値商品
平成29年 12月号
No.167 イタリア魚料理の一端
平成29年 11月号
No.166 シログチの平造り刺身にぎり鮨・切身
平成29年 10月号
No.165 アカヤガラにぎり鮨&薄造り刺身
平成29年 9月号
No.164 オオシタビラメにぎり鮨&薄造り刺身
平成29年 8月号
No.163 センネンダイ薄造り&炙り刺身
平成29年 7月号
No.162 スズメダイ料理
平成29年 6月号
No.161 イトヨリ昆布締平造り
平成29年 5月号
No.160 メナダ薄造り刺身
平成29年 4月号
No.159 オニカサゴ刺身
平成29年 3月号
No.158 マトウダイ薄造り刺身&にぎり鮨
平成29年 2月号
No.157 魚職不朽
平成29年 1月号
No.156 ヒラアジ薄造り刺身
平成28年 12月号
No.155 上海蟹料理
平成28年 11月号
No.155-2 上海魚料理
平成28年 11月号
No.154 赤イサキ刺身&鮨
平成28年 10月号
No.153 アオハタ薄造り刺身
平成28年 9月号
No.152 コシナガマグロ平造り刺身
平成28年 8月号
No.151 アカエイの刺身&鮨
平成28年 7月号
No.151-2 アカエイ料理
平成28年 7月号
No.150 アユの背越し姿造り
平成28年 6月号
No.150-2 アユの姿鮨
平成28年 6月号
No.149 スジアラ炙り刺身
平成28年 5月号
No.148 ミンク鯨畝須スライス
平成28年 4月号
No.148-2 ミンク鯨赤身の刺身&にぎり鮨
平成28年 4月号
No.147 スマの炙り平造りとにぎり鮨
平成28年 3月号
No.146 オヒョウ刺身
平成28年 2月号
No.145 ナマズ刺身薄造り
平成28年 1月号
No.145-2 ナマズにぎり鮨
平成28年1月号
No.144 ソロバン玉の串焼き
平成27年12月号
No.144-2 ボラの洗い造り
平成27年12月号
No.143 海を隔てた魚食の違い
平成27年11月号
No.143-2 海を隔てた魚食の違い
平成27年11月号
No.142 マイワシづくし(刺身&にぎり鮨)
平成27年10月号
No.141 ヒラマサ切身姿売り
(平成27年9月号)
No.140 グルクマ刺身平造り
(平成27年8月号)
No.139-2 トコブシ刺身盛合わせ
(平成27年7月号)
No.139-1 トコブシ刺身盛合わせ
(平成27年7月号)
No.138 活アイゴ平造り
(平成27年6月号)
No.137 マナガツオ炙り平造り(平成27年5月号)
No.136 ハマダイ骨付き頭付き切身(平成27年4月)
No.135 サヨリ姿造り・にぎり鮨・酢の物(平成27年3月)
No.134 真鯛にぎり鮨(平成27年2月号)
No.133 生魚対面裸売りの勧め(平成27年1月号)
No.132 イラの刺身(平成26年12月号)
No.131 ロブスター刺身姿造り(平成26年11月号)
No.130 真サバ炙り平造り(平成26年10月号)
No.129 紅鮭ステーキ(平成26年9月号)
128 コイの洗い(平成26年8月号)
127 旬線刺身盛合わせ(平成26年7月号)
126 エツ刺身姿造り(平成26年6月号)
125 メバル薄造り(平成26年5月号)
124 旬のアマダイの鮨と刺身(平成26年4月号)
123 本マグロづくし刺身盛合わせ(平成26年3月号)
122 寒メジナにぎり鮨(平成26年2月号)
121 うなちらし(うな重)平成26年1月号)
120 アルゼンチンアカエビの魅力(平成25年12月号)
119 シドニーフィッシュマーケット(平成25年11月号)
118 生秋鮭焼霜刺身(平成25年10月号)
117 カンパチ腹トロ薄造り(平成25年9月号)
116 イスズミ平造り(平成25年8月号)
115 ヤリイカ姿造り(平成25年7月号)
114 イサキ姿造り(平成25年6月号)
113 ウマヅラハギ薄造り(平成25年5月号)
112 片口鰯にぎり鮨(平成25年4月号)
111 旬鮮刺身ちらし鮨(平成25年3月号)
110 生アナゴにぎり鮨(平成25年2月号)
109 魚屋鮨鉢盛り大トロ5カン入り(平成25年1月号)
108 アラちゃんこ鍋(平成24年12月号)
107 サーモンレタス裏巻き(平成24年11月号)
106 秋太郎平造り(平成24年10月号)
105 コノシロ糸造り(平成24年9月号)
104 活鱧の刺身(平成24年8月号)
103 Bad money drives out good money(平成24年7月号)
102 コチ薄造り(平成24年 6月号)
No.101 キビナゴ開き造り(平成24年 5月号)
No.100 アトランティックサーモン薄造り(平成24年 4月号)
100号より前の既刊号を見る

食品商業誌寄稿文

食品商業2020年3月号
食品商業2019年11月号
食品商業2019年10月号
食品商業2019年7月号
食品商業2019年3月号
食品商業2019年3月号-2
食品商業2018年12月号
食品商業2018年9月号
食品商業2018年6月号
食品商業2018年3月号
食品商業2018年1月号
食品商業2017年10月号
食品商業2017年6月号
食品商業2017年4月号
食品商業2016年9月号
食品商業2016年6月号
食品商業2016年4月号
食品商業2016年3月号
食品商業2015年12月号
食品商業2015年7月号
食品商業2015年3月号
食品商業2015年2月号
食品商業2013年7月号
食品商業2013年6月号
食品商業2013年5月号
食品商業2013年4月号
食品商業2013年2月号
食品商業2012年10月号
食品商業2012年9月号


SSLで安全を得たい方は、以下のURLにアクセスすれば、サイト内全てのページがセキュリティされたページとなります。
https://secure02.blue.shared-server.net/www.fish-food.co.jp/

ようこそ FISH FOOD TIMES へ

鮮魚コンサルタントが毎月更新する魚の知識と技術のホームページ

令和 6年 12月号  252

クロムツ

クロムツ


見分けが困難

11月下旬にクロムツが手に入った。クロムツを扱うのは初めてではなく、これまでに何度もその機会があったけれど、FISH FOOD TIMES の題材として採りあげるには、画像の内容が物足りないと感じていた。しかし今回は、クロムツという魚の魅力をそれなりに伝えられる材料が揃ったようだと判断し、今月号のテーマとすることにした。

以下の画像は筆者が過去に扱ったクロムツの画像である。日付はデータが記録されているので間違いないものの、これらの重さについては画像の環境から推測したものなので、過去に遡るほど正確さから遠ざかっていると思った方が良いだろう。

クロムツ

また、更に問題なことは、実は上の画像の魚がクロムツなのかムツなのかが判然としないのである。その理由は、クロムツとムツが水産流通段階において明確に区別されておらず、基本的にすべてクロムツの名称で取り引きされているからである。

何しろ、クロムツとムツの違いは、ウロコの大きさはムツのほうがクロムツより少しだけ大きく、側線にあるウロコの数が、クロムツは60枚以上、ムツは58枚以下であり、また上あごの歯の数がクロムツが12ヶ以下でムツが13ヶ以上ということである。更に魚体色がムツよりもクロムツの方が黒っぽいらしい。

しかし、普通の水産関係者がこれらの情報を踏まえて、クロムツかムツの判別を正確におこなうのは簡単ではないことは皆さんに理解してもらえるのではないかと思う。これらを間違いなく峻別することは魚市場関係者でも難しいと言われていて、その結果どちらもクロムツの名称で魚市場段階から魚小売店の現場レベルまで流通するようになっているのである。


鹿児島県奄美大島産のクロムツ切身

15年前の5月に、奄美大島にあるスーパーの水産部門を指導していた時、自分で調理した魚を撮った画像が上画像のなかで一番大きな約600gの大きさのクロムツである。この時の記憶を辿ると、明確には覚えていないけれど、クロムツにしてはあまり脂肪がのっていなかったことから切身にしたようだ。

クロムツの切身
クロムツ
1,約600gの大きさのクロムツ
クロムツ
2,頭部を付けたまま魚体を縦半分に切り分ける。
クロムツ
3,頭部の後方に身を多めに残す形で、半身4分けの切身にする。

 

筆者の経験からすると、奄美大島が位置する南西諸島や、さらに南の沖縄諸島では同じクロムツであっても比較的脂肪分が少なく感じられ、ムツの語源となった「ムッチリ感=ムツ」が弱いと感じる。この時は特に産卵後の季節に当たる5月だったので、そのことが強く感じられたかもしれない。


長崎県対馬産のクロムツにぎり鮨

次は2016年11月8日に調理した約120gのクロムツである。この大きさとなると、いかにも成長途上の若魚であり、それは定置網で水揚げされ、店に運ばれてきて数時間しか経っていない鮮度抜群のクロムツだった。その大きさはとても小さかったので、店で調理をして販売するにはやや面倒であることから、価格は驚くほど安かったと記憶している。

こういう大きさの魚を一尾ずつ丁寧に調理していては作業効率が悪いので、筆者は鮨ダネにすることを目的として、一気にスピード感をもって調理する方法をおこなうことにした。以下がその作業工程である。

クロムツのスピーディー調理
クロムツ クロムツ
1,約120gのクロムツ 7,上身側も下身側での方法と同じく、中骨の上までやや斜めに切り込みを入れる。
クロムツ クロムツ
2,ウロコを取らず、内臓も出さず、下身側の胸ビレ横に切身用の柳刃を使って、やや斜めの角度に中骨の上まで切り込みを入れる。 8,そのまま中骨の上を尾ビレの方に向けて柳刃を切り進める。
クロムツ クロムツ
3,そのまま中骨の上を尾ビレの方に向けて柳刃を切り進める。 9,尾ビレの近くまで切り進めたら、皮を切り離さず、皮と身の間に刃先を切り入れる。
クロムツ クロムツ
4,尾ビレの近くまで切り進めたら、皮を切り離さず、皮と身の間に刃先を切り入れる。 10,内引き方法で頭部側の端まで皮を引いて皮と身を分離し、小骨上部を削り、腹骨を除去する。
クロムツ クロムツ
5,内引き方法で頭部側の端まで皮を引いて、そのまま皮と身を分離する。 11,すべての不可食部分を除去した後、短時間でウロコや汚れを水洗いし、水気を除去する。
クロムツ クロムツ
6,分離した半身の小骨上部を刃先で削り、そのまま腹骨の下に刃先を切り入れ、腹骨部分を除去する。 12,キッチンペーパーなどで水気を除去したら、仕上げとして小骨の残りを引き抜けば完璧だが、実はクロムツの小骨は頭部側に少ししかなく、柳刃の調理で既にほとんど切り落としているので、小骨抜き作業は省略し、これをそのまま食べても小骨は口の中でほとんど気にならない。
クロムツ
小さいサイズのクロムツなので、半身を鮨ダネ1カンとして商品化した。

 

ここで紹介しているスピーディー調理の方法は、小さなサイズで比較的安い魚を調理する際に、@ウロコ取り、A内臓の除去、B頭部の分離、C三枚おろし、D皮引き、E小骨引き抜き除去、など一つ一つの作業を別々におこなうのではなく、大胆に一部の作業を省略しながら、一連の流れとして効率的におこなう方法である。

これは実にスピーディーな作業ではあるが、ウロコ・内臓・血など魚身に付いて残っている不可食部分を手早く水洗いして洗い流し、さらにしっかり水気を拭き取ることを最後の作業工程として、きちんとやらなければならない。この最後の仕上げさえ丁寧におこなうことが出来れば、比較的安く手に入る可能性が高い小魚を素晴らしい値入率のある商品とすることが出来る。


福岡県で手に入れたクロムツの商品化

今年の11月22日に、いつものお馴染みで親しくさせてもらっているスーパーの魚売場で購入したのが約250gの大きさのクロムツである。かつて5年ほど筆者が水産部門の指導を担わせていただいたこの店の魚売場は、この11月度に売上高が4,700万円を超えそうな勢いというのだから驚きである。魚売場にはクロムツのようなどちらかと言えばマイナーな魚を含め、全国から仕入れした様々な生魚を、これでもかとばかりに裸売りの形で品揃えしている。あの角上魚類を例に出すまでもなく、魚売場のこのような数多くの生魚の品揃えに惹かれて、広い商圏から長い時間をかけ、この店にわざわざ魚を購入しに来店されるお客様がますます増えているようなのである。だからこそ大きな規模とは言えない約300坪ほどのスーパーで、これだけの水産部門売上高を示しているのだろうと推測したのだった。

その店で約250gのクロムツを2尾購入した。これらを刺身と鮨にはしてみたいと決めていたが、サイズ的には塩焼きにも手頃であり、塩焼きでも食べてみたいと思った。そこで、半身を塩焼きとすることにして、以下のように調理作業をおこなった。

クロムツの塩焼き用作業工程
クロムツ クロムツ
1,約250gのクロムツ 7,刃先をそのまま頭部に切り入れ、半割にする。
クロムツ クロムツ
2,ウロコを取り、内臓を除去し、水気を拭き取った後、頭部を残したまま下身の尻ビレの際に切り入れ、山高骨まで切り進む。 8,口先部分が切り離せない時は、刃先をまな板に圧力をかけ押し込む。
クロムツ クロムツ
3,下身の背ビレ際に切り入れ、山高骨まで切り進む 9,口先を切って分割する。
クロムツ クロムツ
4,頭部まで中骨の上を切り進める。 10,尾ビレの近くを切り離す。
クロムツ クロムツ
5,尾ビレの近くに切っ先を切り入れ、中骨の上を貫通させる。 11,上身側の中骨付き半身を、尾ビレの長さは計算に入れず、斜めに二分割する。
クロムツ クロムツ
6,貫通させた穴から、刃先を頭部に向けて切り進める。 12,クロムツの塩焼き用商品

 

そして、焼き上げたクロムツが以下の画像である。

クロムツ

食した感想は「実に旨い・・・、冷めても固くならず、ずっと美味しさを味わえる」ということだった。

クロムツという魚は「素材そのものとして美味しさのレベルが高い」ということが、塩焼きに限らず、火を通さずに食した刺身や鮨でも感じられた。

以下が、クロムツの刺身と鮨の作業工程である。

クロムツの刺身とにぎり鮨作業工程
クロムツ クロムツ
1,下身側の頭部をたすき掛けに切り離す。 7,皮を除去した下身の表面は脂肪がたっぷりと付いている。
クロムツ クロムツ
2,下身の腹骨下に切り入れ、切り進める。 8,左の姿勢のそぎ造りで刺身と鮨ダネにする。
クロムツ クロムツ
3,腹骨の下を端まで切り開き腹骨を除去。 9,もう1尾分の下身を炙りにする。
クロムツ クロムツ
4,腹骨と小骨を除去した下身。 10,氷の上に皮付き下身を置いてバーナーで炙る。
クロムツ クロムツ
5,尾ビレ側から皮と身の間に刃先を切り込む。 11,炙りにした皮付き下身
クロムツ クロムツ
6,頭部側の端まで皮引きをして皮を除去する。 12,左の姿勢でそぎ造りをするが、皮下の脂肪が多く皮がめくれるため、形良く切って仕上げるのが難しい。
クロムツ
この刺身は左上の7切れが皮なし、右下に炙りを5切れ盛りつけた。
クロムツ
にぎり鮨は上の7カンが皮なし、下の3カンが炙りである。

 


クロムツはアカムツに劣らない

クロムツはどのように料理しても美味しいように思えた。とにかくこの魚は料理素材としてのレベルが高いのである。いっぽう、クロムツという魚名を耳にすると、誰しもが美味しさで全国にその名を轟かせているアカムツ(通称ノドグロ)のことを反射的に思い浮かべるのではないだろうか。

そのアカムツとクロムツは、形そのものは似ているけれど、赤いか黒いかだけでなく基本的に別の魚として括られる。クロムツはスズキ目スズキ亜目ムツ科クロムツ属であり、アカムツはスズキ目スズキ亜目ホタルジャコ科アカムツ属 である。

この際だから、画像で比較してみよう。

上の画像にあるクロムツとアカムツを並べて比較すると、クロムツの方が細長くスマートで、アカムツはクロムツより体高が高くて丸みを帯びている。形が似ているとは言っても別の魚種であることは明白であり、兄弟でも何でもないことは誰でも理解できると思われる。

10年前に扱ったこのアカムツの重量は、ほぼ450gほどで間違いないと思われる。なぜなら、これは以下の画像の中から取り出した1尾だからである。

このアカムツが入れられていたスチロール箱には、以下のような表示がされていた。

これは筆者が14年前から水産部門の指導をさせていただいている、長崎県対馬市に所在しているスーパーの鮮魚部門作業場で、2015年6月8日に入荷したアカムツを撮影したものである。その仕入れ原価についてはほとんど記憶していないけれど、産地だからといって必ずしも飛びっ切り安いというわけではなく、アカムツに相応しいそれなりの価格だったような覚えがある。

クロムツとアカムツを食べ比べてみると、脂肪の違いを感覚的なレベルで表現すれば、アカムツは濃いめの脂肪であり、クロムツのそれは全体的にバランス良く散っていて、アカムツよりも薄めのようだと感じた。

クロムツとアカムツは同じムツという名称がくっついているが、これは脂肪のムッチリ感から派生したものだということを既に上記したけれど、どちらもその脂肪が美味しさを際立たせている別の科に属する魚種である。たぶん一般的な評価としては、アカムツの方が赤い見栄えの良さもあり高く評価されているかもしれないが、クロムツはアカムツに決して劣らない味の良さがあることを改めて強調しておきたい。

クロムツはこれから寒い季節を迎え、さらに脂肪を蓄えてどんどん美味しくなっていく。春の産卵シーズンを迎えると、ムツコと呼ばれる魚卵が珍重されるようになる。魚卵が大きくなればなるほど魚体の脂肪分は卵に吸い取られる仕組みを考えると、真冬の魚卵がまだ成長し切れていない時期にこそ、お客様がクロムツを購入し賞味されるようにお勧めしたいものである。


SSLで安全を得たい方は、以下のURLにアクセスすれば、サイト内全てのページがセキュリティされたページとなります。
https://secure02.blue.shared-server.net/www.fish-food.co.jp/

水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新している
このホームページへのご意見やご連絡は info@fish food times

                 更新日時 令和 6年 12月 1日