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鮮魚コンサルタントが毎月更新する魚の知識と技術のホームページ
令和 4年 1月号 217
魚売場が生き残る道
元気の良い魚屋さん
以下の文章は、先々月の11月号で記したことであり、繰り返しになり申し訳ないけれど導入部分として必要と判断したので目を通して欲しい。もちろん既読の方は読み飛ばしてもらって結構である。
10月18日(月) 奈良市を訪問した時、面白い店が見つかったので入ってみることにした。それが以下の画像の「大紀水産 街のみなと奈良店」だった。 画像のように大紀水産の魚売場があり、その横に併設して「街のみなと食堂」と称した魚惣菜を売りとするレストランがあった。その店は自分でお好みの惣菜をとってお金を払い、自分でテーブルに運ぶセルフサービス方式なのだが、これが何とも安いのである。 ビール中瓶は普通に500円するけれど、刺身盛り合わせが300円、アジ南蛮漬けが100円、マグロ煮付け100円、これらが合計で1,045円で済むのである。味付けも美味しく、男性二人の従業員の愛想も良く、結局は100円惣菜を2皿追加し、瓶ビールを2本追加したのだった。 そして実に面白いことに、これは奇遇としか言いようのないことだが、筆者が座っていたテーブルの真後ろに男性3人組がやってきて、食事をせず仕事の打合せを始めたのである。話の内容は聞き取れなかったが、一番年配の偉そうな人がしきりに「700円、700円・・・」と繰り返しているのだけは耳に残ることになった。 二人の従業員の内の一人が、偉そうな人に向けて「会長・・・!」と呼びかけ話をしたのを見て、これはもしかすると大紀水産の会長なのかなと推測することになった。そして三人の打合せが終わって、そこからいなくなった後、その推測の真偽を年配従業員に質問してみると、その人は間違いなく佐伯保信会長自身だったのだ。その人のことを偉そうなと表現したけれど、偉そうにふんぞり返っているという意味ではなく、明らかに一番年配だったので偉そうに見えただけで、話しぶりは上から目線の威張った口の利き方ではないと感じた。 FISH FOOD TIMESの9月号で筆者は東信水産の方向性に疑問を投げかけていたけれど、大紀水産の方向性は「街のみなと奈良店」を見る限り、筆者の考える方向性に近いものがあると感じた。筆者は関東では角上魚類の方向性に賛同できるものを感じているが、関西では今回大紀水産奈良店を見たことで、その考え方に同感できるものがあると思った。このことは今月号ではなく、改めて別の機会にテーマを設け深く言及してみたいと思う。 |
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この店は2000年11月に「大紀水産クイーンズマーケット」(現在 街のみなと奈良店)として新規オープンし、同時に併設して天然活魚回転寿司「だいすきや」をオープンした。その後2006年3月にだいすきや奈良店を大起水産回転寿司奈良店に改装し、2011年8月には更に増設して街のみなと食堂をオープンし、現在に至っているようである。
大起水産株式会社は1975年に大阪府堺市の堺卸売市場で塩干類卸売業としてスタートし、1980年に鮮魚の卸売りを開始、1988年には大阪府堺市の環状線沿いに「堺活魚流通センター」をオープンして鮮魚小売業に進出した。そして1955年には大阪市鶴見区に「すしらんど・大寿紀屋」をオープンしている。
その後、百貨店テナント、回転寿司店、テイクアウト寿司店、海鮮レストラン、鮮魚小売単独店など、さまざまな店舗展開をおこなって、大起水産グループとしては直近で227億円を売り上げている。
大紀水産は鮮度の良い魚を扱う「魚屋さん」としてのイメージを柱にして、そこからテイクアウト寿司や回転寿司店に力を入れ、更には魚惣菜やイートインにも商品の幅を広げ、それらを面白い店名をつけて店舗展開し売上げを上げているようだ。
例えば「街のみなと」という店名は、街の中に美味しい魚が集まる「みなと」をつくるという考えからきているということであり、昔からの「鮮魚店」という名称を使わないところがユニークである。本来「街のみなと」は街中の鮮魚小売が主目的だったはずだが、最近の出店状況を確認すると繁華街の中にテイクアウトを中心とした小型店が多くなっているようであり、これも鮮魚店の新鮮イメージをそのまま活用した戦略が伺える。
1975年に塩干類卸売業としてスタートして以降の大紀水産は、まさに変幻自在とも言えるような変わり身の早さで店名を変更しているし、出店スタイルにもあまりこだわりはなく変化を惜しまない姿勢が感じられるが、そこには「新鮮な魚をあつかう魚屋」としてのイメージは基本的な柱として大切にしていると思われる。
大紀水産の商品の中で一番の売上げは、たぶんテイクアウト寿司、回転寿司などを含む寿司商品群だと推測される。それらは本格的な従来型寿司店よりも安く、しかも「魚屋があつかっている新鮮な魚」から派生した寿司という商品イメージである。実際のところ、現在そのような魚屋大紀水産からの魚を使った寿司がどの程度使われる仕組みとなっているのか知る術はないが、魚屋の商品を単に素材として売るだけではなく、魚屋の新鮮イメージを大切にしながら、付加価値の高い寿司や魚惣菜といった即食商品に力を入れているのである。そのことが、関西を拠点として旺盛な出店を続けている「元気な魚屋さん大起水産」を形作る基本となっているのであろう。
西の大紀水産、東の角上魚類
関西の元気な魚屋の代表が大紀水産とすれば、東の関東では角上魚類がその筆頭であろう。筆者は一昨年長い歴史に幕を閉じた商業界が発行していた旧版の月刊食品商業誌から、2012年9月号に「逆襲!魚レボリューション」というテーマで初めて原稿を依頼され、表題「丸魚対面販売と調理サービス強化」、副題「改装導入で実現した前年度比200%」を執筆し、それは4ページにわたって掲載されたが、その前のページまで4ページは先進事例として角上魚類日野店が紹介されていた。そういう縁があって、その時から角上魚類のことには注目をしていた。
角上魚類に関してはマスコミなどで数多く採りあげられていて有名なので、今更筆者が色々と詳しく記す必要はないと思われ、ここで必要なポイントだけに絞って記述することにする。
2012年当時、筆者は同じ9月号で角上魚類のことが掲載されるとは知らず、自分が書いた記事以外の角上魚類に関する記事を読んで、その内容に驚かされることが幾つもあった。その一つは、店舗面積130坪の魚屋が単独出店して年間に魚だけで16億も売るということであり、二つ目はロス率が0.6%という桁違いの低さに仰天した覚えがある。
そのことを可能にしているポイントは、新潟県から直送し販売される生魚が新鮮なことはもちろん、その仕入れた魚を無駄なく売り切る仕組みが素晴らしいからだと思った。例えば日野店ではいかにも魚屋さんらしい丸魚の対面販売をおこないながら調理サービスをすることから始まり、切身、刺身の商品化に留まらず、付加価値の高い魚屋鮨も展開し、更には仕入れたけれど少し売れ行きの悪い計算違いの魚があったら、その日の内に店内厨房で魚惣菜へと変化させ、出来るだけ早い内に魚を売り切ってしまうようにする「徹底した売切り手法」が魚の鮮度を保つことになっている。そのことが店の評価を高め、結果的に驚異的なロス率の低さへとつながっているのであり、その「徹底した売切りの仕組み」が角上魚類を成り立たせている真骨頂だと思われる。
角上魚類株式会社の年間売上は、当時の2011年度で228億円と記されていたが、2021年3月の決算発表で店舗数22店で売上高は394億円となっており、売上は10年間で173%増となっているのだから、魚屋企業としては驚異的な伸びの数字と言えるであろう。
スーパー水産部門の売上推移と部門構成比
それでは、大紀水産や角上魚類がこのように売上げを伸ばしてきた、同じような期間に全国のスーパー水産部門はどれだけ売上げを上げていたのであろう。
以下は2019年11月から直近2021年10月まで、約2年間のスーパー部門別売上推移である。2020年初頭から2021年初めまでの1年間はコロナ禍で巣ごもり消費の恩恵を受け、水産を含む生鮮部門は惣菜部門以外すべて順調だったことがグラフで示されている。
次はその前の2019年10月までのスーパー部門別売上推移を、2012年1月から8年間数値グラフとして示している。
両方を合わせた10年間の動きを見てみると、この期間の水産部門は売上げを伸ばすことに苦しんでいたことがグラフから判断できる。
そして、以下は上が2012年4月、及び下が2021年4月の全国スーパー売上げ調査結果である。
水産部門の売上構成比は2012年4月の9.0%から、2021年4月は8.7%へと0.3%低下し、畜産は10.0%から11.8%へと1.8ポイント増加、惣菜も8.9%から10.3%へ1.4ポイント増えている。
スーパーの水産部門売上高は2012年4月の717億円から2021年4月には 830億円となっているので、伸び率は115.8%ということになるが、これは店の数が増えて嵩上げされた数字も含まれ、単純に既存の数字が伸びて売上げが高まったと捉えることはできない。
これらの数字の実績速報を回答しているのは全国のスーパー270社であり、最新版は既に2021年10月分も以下のように発表されている。
直近の発表数値である2021年10月の水産部門売上構成比は8.4%まで落ち込んでいる。
魚屋企業の隆盛とスーパー水産部門の凋落傾向
どうしてこうなってしまったのか・・・。スーパーの水産部門売上高の凋落傾向は歯止めがかからず、いったいこの先どこまで落ち込むことになるのかと思ってしまう。その原因を単純に「日本人の魚離れ」という一言で片付けてしまうのは簡単であるが、その一方で大紀水産や角上魚類のような魚屋さんが隆盛を極めている事実を知るならば、そのことをどう説明すれば良いのかとなるのだ。
その最大の要因は、
「効率化、合理化、省力化」路線を進め過ぎた結果
であると考えている。
スーパー各社が「効率化、合理化、省力化」を実現するために、お客様が喜ぶ施策を次々とカットしたからであり、商品性格上からどうしても手数が必要な水産部門で、効率化のために省力化され、上位職などから求められる様々な要求を満足させる魚売場を実現するために、手間のかかる丸魚の対面裸売りなどは真っ先に売場から撤去され、昔ながらの裸売りされた生魚の光景はなくなり、一見すると非常に合理化が進んだように見える魚売場にしてきたことなどはその典型的な例である。
さらに、お客様は魚売場に何を求めているのか、どんな魚が欲しいのか、魚のどんなところに困っているのか、魚のどんなことを知りたいのか、魚をどう扱ったら良いのか、といったお客様が口には出さない潜在的なニーズに応えることなく、水産の作業場には人がいないので「面倒なことは出来ない、やらない」という魚売場が増えてしまったから、そうなったのである。
そしてそういう路線を執るスーパー経営者はこれを確実に実現するためにプロセスセンターという工場を作り、前日にその工場で作って時間が経って表面が乾燥した美味しくない刺身を翌日魚売場に並べ、店の省力化が出来たと喜んでいるのである。そんな美味しくない刺身をお客様がリピーターとして喜んで何度も購入し続けるとは考えられず、こんなことをやっているスーパーの魚売場がお客様から高く評価されているかどうか、考えてみれば分かるはずだ。
筆者は過去に月刊食品商業誌2012年9月号で「逆襲!魚レボリューション」というテーマで原稿を依頼され、表題「丸魚対面販売と調理サービス強化」、副題「改装導入で実現した前年度比200%」で執筆したことを上記したが、もちろんその主旨は「魚売場では丸魚の対面販売と調理サービスが重要である」ということだった。しかし、その同じテーマの元で筆者とは全く反対の論理展開が同じ9月号で以下のように記述されていたのである。
以下は上のコピーを読者が読めるように抜粋して拡大した部分。
この中で魚売場での丸魚の品揃えは、アジ・サバ・サンマ・イワシ・イカという五大魚種があれば良く、10から15アイテムの魚種があれば十分であり、その替わりに魚の天ぷら、魚のレトルト、塩干品の品揃えを強化すれば水産部門の売上げや部門構成比を高められると記されていたのだ。筆者の考えとはまさに対極を成す文章を読んで「こんなことをやっても魚の売上げは絶対に上がらない」と呆れかえったものである。
これは、ある魚コンサルタントが記したものだが、こういうコンサルタントの指導を受けたスーパーの水産部門が真っ先に売上げ不振に見舞われたに違いない。そして、そんな不甲斐ない魚売場を展開するスーパーを横目にして「シメシメ・・・、ドンドンそのやり方で行け!」とほくそ笑んでいたのが、大紀水産や角上魚類などを筆頭とする企業化して大規模化した一連の魚屋企業である。
特に関東地域では角上魚類の他にも北辰水産や魚力など幾つもの有力な魚屋企業が存在しており、そのような企業の成長を手助けすることになったのは、他ならぬ効率化、合理化、省力化を強化したことで、魚売場の魅力を自ら削ぎ落としていったスーパーの水産部門であり、そのような魅力のない魚売場を店の中に作ってきたスーパーの経営者なのである。
魚屋さん復活の足音
一昔前、筆者がまだ駆け出しの新米として魚の世界に身を投じ始めていた頃、スーパー業界は隆盛を極め、飛ぶ鳥を落とすほどの勢いがあった。そしてそのなかに位置する水産部門は、それまで業種店の一つとして日本各地に所在していた魚屋さんを安い価格で圧倒し、こういうパパママストアの規模で細々と地域に根ざしていた家業の魚屋さんは次々と淘汰され姿を消していった。
それから半世紀近くが経過し、今や家業としての魚屋さんは地域に残っているのが珍しいほど希有な存在となって、消費者が魚を購入するとなれば、スーパーの魚売場に行くしかないという状況になりつつあった。しかし、そこに待ったをかけたのが大紀水産、角上魚類などの魚屋企業である。スーパーの魚売場のていたらく状況に足払いをかけ、今やスーパーから着々と水産物売上げのシェアを奪いつつあり、魚屋さん復活の足音が次第に大きく聞こえてきている。
それではここで、スーパー水産部門は今の歯止めのない凋落状況をどうやって克服していけば良いのかを考えてみることにしよう。一つの例として、筆者が指導して水産部門の数字を大きく改善させた具体例を挙げてみたい。その会社の水産部門売上は、筆者が指導を開始して10年間で200%となり、部門別構成比は約6%から10%になった。もともと部門別構成比6%というのが低すぎるので参考にならないと思われるかもしれないが、そういう見方は間違いで、その地域は肉食文化が根強く競合他社も似たようなレベルの低い水産部門構成比しかなく、10%という数字の方が異例なのである。
実は今月号の巻頭画像にはその会社の魚売場の商品画像を一部使用しているのだが、具体的な企業名は伏せてA社としておこう。13年間継続してきた水産部門指導の契約を昨年2月に解かれ、今は無関係の間柄となっているが、そのA社の魚売場がその地域で一目置かれる存在となったことに対して、必ずしも筆者はやるべきことはやったとは言えず、道半ばの気持ちはあるものの、ある程度の達成感があることも間違いなく、何と言っても長く接して来た関係者たちへの感情移入を伴った強い愛着感は今でも存在している。
この指導先だったA社と今月号の主役である大紀水産や角上魚類の両社に共通している方向性がある。
それは、
魚屋鮨と魚惣菜の商品力と販売力を強化
していることである。
なかでも魚屋鮨の存在感は大きく、A社だけでなく筆者の現指導先では水産部門内クラス別売上構成比で、ナンバーワンの位置づけが当たり前となっている。実は筆者がA社の指導を開始した時、魚屋鮨は1店舗で細々と実験的なレベルの取り組みがおこなわれていたが、それを全店へ拡大する形で魚屋鮨を強化していったことが水産部門売上げ増大のベースとなっていったのである。
魚屋鮨を取り扱う店舗数を増やすだけでは、その内に必ず売上増の限界がやってくるのであり、魚屋鮨の売上げを伸ばしていくために買い易い低単価路線ではなく、生本マグロなどを主体とした高品質高単価路線に舵を執り、その結果魚屋鮨商品クラスの部門内構成比は20%を割ることがなくなり、25%以上が普通で月次によっては30%に近づくような看板商品として育っていったのである。
大紀水産や角上魚類も似たような歴史的経緯が存在するはずで、たぶん間違いなく両社も魚屋鮨が売上げナンバーワンに位置していると推測しているのだが、特に関東地域、及び東日本地域では実に奇妙な現象があり、スーパーで魚屋鮨を強化して看板にしているような企業が見当たらないのである。
筆者は東日本の地域に所在するスーパーを視察するたびに「何でいまだに惣菜寿司で茶を濁しているんだ」と落胆することが多々あるのだ。そういうスーパーの経営者は「惣菜寿司で十分だ・・・」と考えているのかもしれないが、ハッキリ言って「魚屋鮨と惣菜寿司は別物」であることを理解していないのである。
大紀水産の魚屋鮨への力の入れ方は半端ではなく、まさにこれこそが大紀水産の生きる道といえるほど力を入れていると、筆者は最近の大紀水産の出店内容を見て感じているが、これは「魚屋さんが提供している鮨は新鮮で安い」という消費者のイメージを上手に利用しているのだ。回転寿司にしろテイクアウト寿司にしても、大紀「水産」という「魚屋さんのイメージ」が重要であり、やはり国内各地に幾つもの「魚屋さんがやっている」というだけで、中身はたいしたことなくても繁盛している回転寿司店が存在しているのだ、
自己完結型の魚売場へ
魚屋鮨を強化すれば水産部門の売上げが伸びることは理解できたとしても、そのことに具体的な形で踏み切れないでいる臆病なスーパー経営者がいるのは、鮨商品の値下げや廃棄から生じるロス率を恐れていると推測している。確かに鮨商品は下手すると20%のロス率が出ることも珍しくなく、これでは商売もへったくれもないという苦い経験をしたスーパー経営者もいるのではないかと思う。
しかしそういうロスを恐れてばかりの弱気な考えでは店そのものの売上げを伸ばすのも難しいはずであり、基本的姿勢としては物事に果敢に挑戦し、そのリスクを何らかの形でカバーする方法を考え実行しなければ企業の発展はないはずである。
例えば大紀水産や角上魚類が魚屋鮨をあつかいながら大きく成長しているのは何故なのかを考えてみると、そこには「自己完結型魚売場」があると筆者は考えている。
自己完結型魚売場とは、
仕入れた魚を一つ残らずお金に換えてしまうノウハウを持つ魚売場
のことである。
角上魚類のロス率が10年前の当時でさえ0.6%という驚異的な数字を誇っていたのは、仕入れた魚を最後には魚惣菜として売り切ってしまうことが出来るから実現できることだろう。大紀水産のロス率は知らないが「街のみなと食堂」などで魚惣菜に力を入れていることから、仕入れた魚を売り切るノウハウがあることは間違いないと見ている。
魚を「焼く・煮る・揚げる」という魚惣菜の分野は筆者にとって奥深過ぎて未熟な世界であり、とても指導できるようなノウハウは持ち合わせていない。しかし仕入れた魚を使い切る目的での対処方法は、焼き魚、フライ、煮付け、ヅケ、南蛮、竜田揚げ、など、必要なのはプロの料理人に求められるような高度な料理知識ではなく、このような家庭料理の延長の知識で充分ではないかと考えている。
今や魚屋鮨は生本マグロを使うことが差別化の武器となっている時代である。いまだに冷凍のバチマグロ、キハダマグロで魚屋鮨の商品展開をしようとしているならば、それはもう最初から競争に勝てないと心得るべきである。その生本マグロでさえ、仕入れ価格が高くてロス率が高まる恐れがあるので扱えないと尻込みするスーパーの水産部門があるけれど、そんな弱気ではこの先も売上げは下がり続け、魚売場はテナントに任せようということになるのが落ちである。
仕入れ価格が高い生本マグロを使っても、残らず売り切るノウハウを身につければ魚売場の評価はどんどん高まるという例を一つ紹介しよう。そこは筆者が指導を開始して昨年8年目となった売場面積280坪のスーパーだが、ほんの最近水産責任者から受け取った情報では、年末年始商戦で5,800円から9,800円の鮨鉢盛りの注文が、合計で200台を超えたというのだ。
これは店頭販売の鮨商品ではなく、純然たる高価な鮨予約鉢盛り商品だけの数である。この会社も8年前は真空袋に入れられたキハダマグロの冷凍鮨ダネを袋から取り出して、それをシャリ玉の上にのせ、魚屋鮨と称する「乗せ寿司」を販売していたのだが、今や生本マグロを基本とした鮨商品がお客様から高い評価を受けるようになり、その地域ではどこにも負けない圧倒的な競争力をつけることになって売上げは伸び、魚売場だけでなく店も繁盛しているのである。
さて、この10年間御社の水産部門既存店売上げは伸びているのか、それとも衰退しているのだろうか。売上げ不振の理由を日本人の魚離れなどといった無責任な言い訳ではなく、大紀水産や角上魚類だけでなく、普通のスーパーの水産部門でも売上げを伸ばし続けているところがあるのは上に幾つか紹介したとおりであり、魚売場は考え方とやり方一つで売上げはどうにでもなるのである。
今年どんな取り組み方で水産部門の売上げを伸ばしますか、読者の皆さんのご健闘を心よりお祈りします。
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水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新している
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更新日時 令和 4年 1月 1日