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平成28年 4月号 148

ミンク鯨の畝須スライス


今年3月に入って、あるところで生のミンク鯨を扱う機会に恵まれた。

ミンク鯨そのものを直接見たわけではないのだが、長崎県のある場所の定置網に全長約5メートルのミンク鯨が入り込んで水揚げされたとの連絡が入り、翌日解体された一部が筆者の関係先企業に送られてきたことから、その商品化を任される機会を得たのだった。

この画像はミンククジラが氷水に入れられて送られてきて蓋を開けた直後のもので、赤身11kg、畝須4kg、白皮3.4kg、黒皮4kg、胃袋4kg、という内容で、合計重量は26.4kgだったので、獲れたミンククジラのほんの一部でしかないと思われる。


ミンククジラとはいったいどんな鯨なのか、との疑問を抱く方がほとんどではないかと思うが、筆者も元の姿をこの目で見たわけではないので、結局文献や資料に頼るしかないということで俄かに鯨について勉強することになった。

ミンククジラはこんな大きさと形をしているらしい。

イラストの人間の大きさと比較するとその大きさは多少想像できると思うが、大きさとしては全長8m、重さ8t ほどになるということだ。

この大きさでも鯨としては大きい方ではなく比較的小型の部類であり、他の鯨はいったいどんな大きさをしているのかを理解できるイラストがある。

クジラ類は世界の海に87種類いるとされイルカも同じクジラの仲間であり、体長が4m以上をクジラ、それ以下をイルカと呼んで区別しているが、上のイラストはその中でもよく知られている主なクジラの仲間である。

このイラストは1995年10月に福岡市にある福博総合印刷から発行された「FUKUOKA STYLE」Vol.12で特集された「西海の捕鯨」の中に記載されている。

  

上の左画像が季刊誌「FUKUOKA STYLE」Vol.12 であり、その他に今回は鯨料理について筆者が勉強する目的で、大西睦子著「徳家秘伝 鯨料理の本」さらに小松正之著「日本の鯨食文化」などを購入し、これらの資料をホームページ記述の参考にさせていただいた。

これらの本は、クジラの歴史や料理、そして国際環境など、様々な観点から貴重な意見が記されており、クジラについての知識はこの3冊だけでも相当幅広い内容を吸収できる。

今回筆者が記述する内容は、それらの本に記された事実を吸収したり、述べられている意見に影響を受けており、そこに記されていることを自分なりに解釈し、自分の経験と現場での商品化実務などを含めて一つの形としてまとめたものである。


長崎県の定置網で混獲されたミンククジラは世界の海に約76万頭生息しているとされ、その数は今もどんどん増え続けて勢力を伸ばしており、同じヒゲクジラ類のシロナガスクジラやナガスクジラが、餌の奪い合いでミンククジラとの生存競争に負け、生息数を増やせない遠因ともなっていると言われていて、ミンククジラはクジラ類の中でも比較的大きな勢力のようである。

1982年の国際捕鯨委員会(IWC)で「商業捕鯨モラトリアム(一時停止)」が採択され、IWCが指定する15種類のクジラについては商業捕鯨ができなくなり、その後クジラは生息数を伸ばし続けることになっているのだが、今回のミンククジラは銛で捕獲する商業捕鯨ではなく定置網に迷い込んで入って漁獲されたものなので「混獲として処理」されることからモラトリアム違反ではなく、小売店での販売に何も後ろめたい思いをすることはない。

またクジラを鯨肉として合法的に市場に供給できるのは定置網での混獲の他に「調査捕鯨によるもの」が認められていて、例えば下のみなと新聞2016年3月25日号の記事には、前日の24日に下関漁港に帰港した日新丸の南極海での調査捕鯨が順調だったことが記されており、南極でのミンククジラの繁殖状況が健全なレベルであるという捕獲調査結果とともに、目視調査の方法によって過去に総生息数が3,000頭にまで減っていたとされているザトウクジラ資源量が急速に回復していることも報告された。

以下の表は、昨年12月1日より115日間にわたり4隻の調査船による総探索距離5,272海里(目視専門船及び目視採集船の合計約9,763km)の鯨類発見群頭数(往復航海の目視調査を含む)である。


調査捕鯨で捕獲されたミンククジラは財団法人日本鯨類研究所が、学校給食用の公益枠と一般消費者向けの市販枠に分けて全国各地の中央卸市場卸売会社や一般業者向けに販売される。

市販枠については入札という形で販売されるが、最終売り渡し価格は公にされないことになっているので、どの部位がいくらでどうなっているのかを知ることはできず、過去の事例としてはあまり人気のないニタリクジラなどが売れ残って処分に苦労していたらしい。

つまり今回の調査捕鯨でミンククジラを333頭捕獲して持ち帰ったということは、クジラの中でも味が良いとして人気があるミンククジラであれば売れ残る可能性は少ないとの判断が働いているのではないかと考えられる。

日本人がこれまで主に食べてきたクジラの種類というのは、体長の大きいものから順にナガスクジラ、イワシクジラ、マッコウクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラ、ツチクジラ、マゴンドウクジラ、ハナゴンドウクジラの8種類であり、この中で比較的美味しいとされているのがヒゲクジラの仲間のようだ。

ヒゲクジラとは、上顎の歯茎の部分がヒゲに変化し、そのヒゲで水を通過させオキアミなどの餌だけを捕食する構造になっていて、シロナガスクジラ、ナガスクジラ、イワシクジラ、ニタリクジラ、ミンククジラ、ツチクジラ、ザトウクジラ、セミクジラ、コククジラ、などの種類がいる。

 

左はミンククジラヒゲ、右はイワシクジラのヒゲ(長崎県平戸市生月町博物館「島の館」展示物)

いっぽう歯クジラの仲間は歯があり、ゴンドウクジラやマッコウクジラなどイカ類や青魚類のサバやイワシなどの魚を主に食べるクジラである。例えばマッコウクジラなどは深海に潜ってダイオウイカのような大きな生物も餌とするらしく、シャチのようにアザラシを襲うような種類もいるし、賢く敏捷な動きをするイルカも歯クジラの仲間であり、イルカのように泳ぐスピードが速く筋肉が締まっている歯クジラの仲間達は、肉質が固いことからヒゲクジラに比べると美味しさの点で劣るようである。


このようにクジラの中でも一番味が良いとされているヒゲクジラの一種ミンククジラを今回扱うことになったのだが、もちろん筆者はクジラを扱うのは初めてではなく、過去に色んなクジラの部位を生・ボイル・塩漬けなどで扱ったし食べたこともある。

筆者がこの水産物を扱う世界に入った40年以上前はまだ商業捕鯨モラトリアム以前の時代だったのでクジラの価格も非常に安く、何しろ筆者が新入社員だった頃は刺身包丁の動かし方を覚える練習の材料として、今やクジラ肉の中でも高級部位として人気のある畝須(ウネス)をあてがわれるような時代だったのだ。

さて、その畝須(ウネス)とはクジラのどの部位なのか知らない人もいると思うので、福岡市にある昭和50年創業のクジラ専門店ハクエイ産業(有)社のホームページに載せられているクジラ部位図を皆さんへの説明のために参考資料として活用させていただく。


ウネスとは下あごから腹部にかけて縞状のヒダにある脂の部分で、赤い肉の部分の須の子とヒダのある皮下の脂の部分のウネが一緒になった部位のことである。

上記したように、長崎の定置網で混獲されたミンククジラのウネスを生で扱うことができたので以下にその工程を紹介しよう。

ミンククジラウネスの商品化工程
1、ウネスの須の子と呼ばれる赤い肉の部分 5、ウネスを切り離した断面
2、須の子の下の白い脂と縞状のウネが見える断面 6、生のままで、10p幅ほどのウネスブロックを商品化
3、皮側ウネの表面 7、ウネスを他の部位の黒皮や白皮と一緒にボイル
4、ウネは溝4本分程の幅、長さは30pで切り離す 8、ボイルして少し変色し、変形したウネス
10、ボイルしたウネスを薄くスライスして盛り付け商品化

 

ハクエイ産業(有)社ではナガス鯨の生畝須を1,800円/100g(税込)で販売されているようだが、今回のミンククジラ生ウネスは仕入れ価格が5,650円/kgだったので、150g前後のブロックにして、売価は 980円/100g(税別)で販売した。

同時に入荷した黒皮と白皮はどちらも3,000円/kgの仕入れ価格だったことから、以下のように生の短冊とボイルのスライスに商品化した。

ミンククジラの白皮と黒皮商品化工程
1、白皮の皮側表面 1、黒皮の皮側の表面

2、白皮の断面 2、黒皮の内側
3、白皮の内側 3、黒皮内側にある筋状の平たい部分を除去
4、約30pの幅に分ける 4、約30p幅に分ける
5、3p幅の短冊に切り分ける 5、3p幅の短冊に切り分ける
6、白皮短冊の商品化 6、黒皮短冊の商品化
7、沸騰させたお湯に3%目安の塩を入れて15分ほど煮る
8、ボイルした白皮 8、ボイルした黒皮
9、白皮は3gから5gほどの厚さに薄く切って生姜醤油用にし、黒皮は10g〜15gの厚さで煮付け用にする
白皮ボイルスライス 黒皮ボイルスライス

 

これらの商品は以下のような売価がつけられて魚売場に陳列された。

ネットショップで売られている商品と比較してもらうと分かるが、このボリュームでこの売価は相当にコストパフォーマンスが高く、しかも冷凍のクジラ肉ではなく前日獲れたての生クジラのために鮮度も抜群であり、この日来店されてこれらの商品を購入されたお客様の満足度は相当高いものがあったのではないかと思われる。


さて次は赤身商品化の番だが、このままだと1ページがあまりにも長くなりすぎることになるので、ページを改めて引き続きクジラについて記すことにしよう。

次ページへと続く


水産コンサルタントが月に一度更新してきたこのホームページへの

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更新日時 平成28年 4月1日