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平成27年12月号 144-2

ボラの洗い造り


さて、次はボラ本体の魚肉についても触れていこう。

ボラを三枚におろすと、以下の画像のような透明感のある白身が現れる。

何の考慮もなく、これを外引きで皮をすくと以下のようになる。

皮下の表面は皮すき直後でもこのように赤黒い感じであり、あまり赤い華やかさがない状態である。しかもボラは時間が経つと皮下の身の赤い色が飛んで次第に黒ずんでくるという欠点を持っている。変色スピードも早いので、この変色による取り扱いの難しさが魚関係者のボラを嫌う原因の一つとなっている。

しかしこのマイナス要因は包丁技術によって除去することができるのだ。それは以下の画像のように皮すき方法を外引き技法ではなく、厚皮取りの「内引き技法」を使えば解決に近づけることができるのである。

上の画像で内引き技法を示しているが、このことは両手が必要なので物理的に一人でその画像を撮影することが出来ず言葉で説明するしかない。要するに左手は尾ビレの方に置かず、頭部の方を抱えるように左手を置いて、包丁を左側の頭部の方にずらしていくという技法なのだ。

言わば意図的な「皮すき下手くそ技法」とでも言える方法であり、こうすれば上の画像のように外引きで普通の感覚で皮をすいた時とは比べ物にならないくらい赤い色が目立つ白身らしい地肌が現れてくる。

しかしもしあなたの腕が良すぎて・・・(?)以下のような普通に上手な皮すきをしてしまったらどうするか、それでも心配することはない。

まずは背身と腹身を分離する。ちなみにボラの血合い骨は頭部側の一部分にしか目立つ大きさは存在しないので以下の画像のような感じで包丁を入れることになる。

背身と腹身に分けたら、裏返して以下の画像のように血合い部分を包丁で削り取る。

 

このように赤黒く変色する血合い部分を削り取ると白身が目立つ部位が残ることになる。


これを「氷洗いのお造り」にする時は下の左画像のように薄造りしていく。

 

薄造りにしたら氷水の中に入れて、細胞収縮による縮み現象で丸くなるのを待つ。

 

しかし既に活魚を通り越して死後硬直状態になっていたら、湯温がお風呂の温度よりも少し熱い程度の50℃ほどのお湯を準備して、上画像のようにお箸とかお玉などを使って、身を洗うようにする「湯洗い」という方法を使うと、縮みに似た現象が多少は期待できる。

上画像の左側が氷洗い、その右側は50℃のお湯を潜らせた湯洗いだ。右の湯洗いで白くふやけたようになっている身はお湯の温度が高過ぎるというミスをしなければ、少し時間が経つと元の赤い色に戻る。

活魚の「縮み現象」に似た感じ雰囲気をだすために、薄造りの身を指で丸めて盛りつけると、巻頭画像や上の画像ような商品になる。


次にボラの表面の血合い部分を削った身を鮨種にしてみる。

そのボラを使った以下の画像のにぎり鮨は、まるでヒラマサのにぎり鮨のように見えないこともないではないか。

一見するとヒラマサのにぎり鮨だと見間違えるほどの美しい白身の姿となったのは、以下の左画像のように表面の血合い部分を大きく削ったことによって可能になったのである。

それでは「一般的な外引きで上手な皮すき」をした場合、これをそのまま活かすにはどうすれば良いか 、それはやはり以下の画像のように切身商品にして、ソテーやフライの料理用として提供するのが一番適切だと考えられる。


さて今月号の2ページ目は、ここまでボラの魚体そのものの利用の仕方について記してきたが、まだボラの最高の価値である「魚卵」についてはまだ何も記していない。しかし筆者が10月末に準備したボラを使って作成を始めたカラスミは、残念ながら11月末の時点でまだ最後まで完成していないので、今は中途半端なことしか記せないのである。

また別の機会にカラスミのことだけを取り上げるということも難しいので、読者の皆さんには今月号の執筆時点ではカラスミがまだ未完成の作成途中であることをご承知の上で以下の記事をお読みいただきたい。

さてカラスミは歴史的に言えば元々地中海沿岸で作られていたものが、シルクロードを通って中国を経由し日本に伝わったものであり、日本ではその形が唐から伝わった墨石に似ていたので「唐墨」となったとのことである。

本場イタリアではカラスミをボッタルガ(Bottarga)と呼び、パスタ料理の材料としても使われるとのことだが、この料理は現地でとても値段の高い高級パスタとのことである。地中海沿岸のスペイン、イタリア、ギリシャ、トルコなどではボラだけでなく、マグロ、タラ、メルルーサなど色々な魚の卵でカラスミは作られていて、イタリアではボラのカラスミはBottarga di Muggine、マグロのカラスミはBottarga di Tonnoと言うらしい。

それらが地中海の国から中国を経由して日本に伝わった時代は、最初はサワラの卵を使用したカラスミが作られていたようで、その後になってボラで作るのが主流になったとのことだ。だから日本でのカラスミの歴史を辿ると「カラスミはボラの卵を塩漬けして天日乾燥させたもの」という説明は正しくないのである。正しくはボラに限ったものではなく、香川県などでサワラやサバの卵で作られているところの、ボラ以外の魚卵で作るカラスミも偽物なんかではなく、これらも正しくカラスミと呼んでいいということになるのだ。

カラスミは塩漬けを4〜5日、天日干しを10日程度しておくとそれらしい形に成るようだが、その美味しさは脱水による味の凝縮がその正体であり、脱水によって味も旨みも濃くなるのであるらしい。

生ハムやチーズなど食材の長期熟成文化を持っているヨーロッパではカラスミも熟成させるようである。カラスミをそのまま風乾し続けていたら、まるで干し鮑のようにカチカチになってしまう恐れがあるけれど、カラスミはネットリ感というのも美味しさの大事な要素である。そのため例えばトルコでは極端に乾燥が進まないようにして熟成させる目的で、カラスミの表面を蜜蝋で覆う作業を加えるとのことだ。この方法で半年とか1年の期間をかけて熟成したものは、味の凝縮とかのレベルではなく、旨みそのものを増加させるということであり、その美味しさは更に倍加するようである。


さて筆者の場合カラスミ作りは素人なので、以下に試作と実験の工程を読者の皆さんに見ていただいて、ご興味のある方は何らかの参考にしていただければと思う。

カラスミの作りの試作と実験
1、ボラの腹から取り出した魚卵。まだ血管の血を抜く作業をしていない状態
2、血抜きした魚卵をたっぷり多めの塩に漬け、冷蔵庫のチルド室に10日間放置
3、10日後チルド室から取出した水分もあまり流れていないカチカチ状態の魚卵
4、取り出した魚卵を流水に入れて塩を洗い流す。
5、約30時間冷蔵庫の中に入れ、何時間かの不定期間隔で水を交換(5回ほど)
6、塩抜きの水から取り出して乾燥に入る前の柔らかい状態。
7、上げ底式容器にカラスミを載せる 7、別にピチットシートを準備する
8、網式の干し籠に容器ごと入れる 8、ピチットシートにカラスミを包む
9、風通し良いベランダに吊り下げる 9、容器ごと冷蔵庫に入れる
10、自然乾燥の分はシワが寄ることなく、水分が抜けているのが確認出来る 10、2日後にシートを開くとシワがつくほど水分が抜けている。
11、水分の抜け具合で大きさに変化 11、皮がシートに付いて一部破ける
12、ピチットシートによる水抜きは問題多しと判断し、両方とも自然乾燥に変更
13、10日間ほど裏返しながら風乾すると、少しずつ色が濃くなってくる
14、右のピチットシート処理分の方が水分の抜けが良く固くなっている
15、左上の最初から風乾で処理している分も黒くなりシワが寄ってきている

自家製カラスミは未だに完成せず進行途中の段階、画像は今後挿入予定


今月号は最後の締め括りが少し中途半端な形で終わらざるを得ない。

カラスミが美味しく食べられるようになるまで、時間をかけて辛抱強く表裏を返しながら、いかにもカラスミらしい色と固さになるのを待ちたいと思う。今後完成までの段階を順次追いかけていく予定なので、読者の皆さん乞うご期待。

現在ボラの評価は毀誉褒貶が激しいが、日本では神代の昔からブリと並ぶ出世魚の一つであり、ボラ漁の盛んな伊勢志摩地方では豊漁祈願の神事や八幡祭などでボラを奉納する縁起の良い魚であり、日本人の生活に深く関わりをもってきた。歴史的に日本書紀や本朝食鑑などにも登場する魚でもある、そんな魚が今の時代の魚売場ではほとんど見向きもされず、まるで下衆の魚のように扱われている事実を知る筆者は悲しい思いをしている一人である。

ボラについては、時代を遡れば今月号の2ページくらいではとても書き切れないまだまだ多くの興味ある事実があるようなのだが、今回の本誌でボラのことを記すことの出来る内容はこの程度のものだろう。

今や日本の何処へ行っても養殖された魚ばかりが目立ち、ボラのような日本人の歴史と深く関わってきた天然の魚がほとんど注目されず、飛びっきり鮮度の良いものでも買い叩かれて驚くような捨値にしか評価されないのは、何かが根本的に間違っているのではないだろうかという気がする。

読者の皆さんたちに是非お願いしたいことがある。それはボラのことを声高に蔑んでいる人たちの言葉を何の疑いもなく信じ、ボラを美味しく食べるための努力をせず、やたらとボラのことを貶めることに加担するようなことはやらないでほしいということだ。 ボラはそんなに下等な魚なんかではないということを是非知ってほしいのである。


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更新日時 平成27年 12月1日