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平成28年 2月号 146

オヒョウ刺身


上の画像は「オヒョウ」との説明がなければ、たぶん非常に高い確率で誰でも「ヒラメ」だと勘違いするのではないだろうか。

これは間違いなくヒラメではなくカレイの仲間のオヒョウであることは、この刺身を自分の手で作った筆者自身が証明するし、写真も筆者が撮ったものだから間違いない。

この刺身の元となったのが以下の画像のオヒョウである。

大きさは確か1.5kgほどだったと記憶しているので、オヒョウとしては非常に小さい大きさであり、たぶん幼魚の段階ではないかと思われた。

上の画像の底面にあたる方の白い魚体表面は見事に綺麗な白色をしており、養殖ヒラメ独特のあのパピロームというアザのような模様を見慣れたものからすると、この白さを見るだけでまさに天然の美しさを感じるものがあった。

オヒョウという名前の由来は「大兵(オオヒョウ)」 から来ているようで、その名の通り性格は兵士のように勇猛な激しい気性のようで、大きくなるとマダラなどの大型魚も襲うということであり、漁師も釣り上げた時は噛みつかれないように気を使うとのことである。

オヒョウという魚をネットで検索すれば、釣り自慢が仕留めた超巨大サイズオヒョウの画像が次々と見つかるので、それがどれだけ大きくなるのかを筆者が説明するよりもそちらの方を参考にされるのが良いと思われる。

大きなもの全長は2m以上にもなり、このような大物の重量は200kgを超えることもあり、こんなに大きくなるのはメスだけで、オスの方はメスの1/3程度にしかならないらしい。オスの平均寿命は20年前後でしかないのに対して、メスは成長が早くて寿命も長く、40年以上の長い年月を経て巨大になっていくようであり、その年齢は耳石と呼ばれる耳の骨の層を数える事で正確に判定することが出来るとのことだ。

オヒョウはカレイ目カレイ科オヒョウ属に属し、日本の北海道付近からオホーツク海、ベーリング海などの寒い海の海底に生息していて、11月〜3月にかけて水深200m〜400mの大陸棚で一度に400万個もの卵を産み、他のカレイの仲間同様に冬から春にかけてが旬となる。生後6ヶ月までの幼魚は何百kmの距離を自由に泳ぎまわりながら甲殻類や小魚を食べて成長し、成魚になるとマダラやスケソウダラなどの大きな魚を食べるために海底を離れて活発に動き回るようになる。


巻頭画像のオヒョウは、筆者の指導先スーパーの水産部門に北海道から直送された他のカレイ類と一緒に仕入れられていたもので、下の画像の中にあるアサバカレイやソウハチカレイなどと一緒に筆者が同時に調理して商品化を行った。

上の画像はその北海道から入荷した3種類のカレイで、画像の左側がオヒョウ、右上はアサバガレイ、右下がソウハチカレイである。

 

上は左から順に、頭を除去したアサバガレイ、ソウハチカレイ、オヒョウ。

 

  

上のアサバガレイを切身にすると左画像のようになり、ソウハチカレイは右画像のようになった。

 

そして、アサバガレイを1切れずつ切身として商品にすると上のようになった。

北の北海道近辺の海に多く生息しているアサバガレイはカレイ目カレイ科ツノガレイ属に属し、一般的には上画像のように鮮度の良い生のカレイ切身としてよりも、冷凍カレイとしてスーパーの店頭でもお馴染みの魚であり、アサバガレイという名称よりも「子持ちカレイ」などの商品名で、下画像のように解凍されたカレイ切身として売られていることが多く、消費者には馴染みあるカレイの一つである。

  

 

一方、ソウハチカレイはカレイ目カレイ科アカガレイ属に属し、アサバガレイよりも南の北日本から日本海にかけて多く生息し、西日本では「キツネカレイ」とか「エテカレイ」などの名称で良く知られており、こちらは冷凍よりも下の画像のように専ら鮮魚のまま各地方独特の商品名でスーパーの店頭などで売られていることが多い。      

 

 

アサバガレイとソウハチカレイは両方とも比較的安価で庶民が購入しやすい大衆的な惣菜魚として人気があり、アサバガレイは比較的関東以北の地域で多く消費され、ソウハチカレイの方は主にキツネカレイという名称で西日本地域で馴染み深いという特徴がある。


日本でオヒョウは北海道の近海でわずかに獲れるだけで、専門の漁はなく主要な食用魚種としては位置付けられておらず、その料理は煮付け、ムニエル、フライなどが主で、北海道などの一部で鮮度の良いものが刺身や鮨などに使われることもある程度である。しかし米国や欧州では日本のように軽い扱いではなく食用魚種としての重要度はかなり高い地位にある。北米では19世紀末の頃からオヒョウの漁獲が始まって、今や重要な食用魚の一つとなっており、シアトルなどの北米の地域ではどこのレストランにも普通にあって、フィッシュ・アンド・チップスなどにもよく利用されている。

筆者は九州の博多を基盤として行動していることから、極北の非常に冷たい海に生息している鮮度の良いオヒョウの刺身や鮨というのを実はこれまで一度も食べたことがなく、巻頭画像のオヒョウ刺身は初めて自分で手がけた作品であり、しかも初めてオヒョウの刺身と鮨を食すことになったのだった。

オヒョウをヒラメの時におこなう5枚おろし技法で解体するのではなく、片面おろしの技法で三枚におろしたところ、天然のヒラメだと言われてもその言葉を疑わずに信じてしまうような身が出現した。

 

そしてこれを皮すきすると、下のようにこれまた天然ヒラメとどこがどう違うのだと言えるほど身が皮下から現れた。

 

にぎり鮨にすると以下の画像のようになった。見た目はまるでヒラメではないか・・・。

 

更に包丁を進め、このオヒョウを以下の画像のようにすべて刺身とにぎり鮨の商品にしてみた。

約1.5kgのオヒョウから、このように全部で6パックの商品が出来上がった。


これらの鮮度の良い3種のカレイ類を仕入れたスーパーでも、オヒョウの鮨と刺身の商品は初めて見るということで、アサバガレイとソウハチカレイの切身は商品として魚売場に出したものの、オヒョウの刺身と鮨だけはすべて初体験ということで、魚の味の勉強のために皆んなで試食となったのだった。

試食とは言っても当然ながら限られた人数にしかそれは行き渡らず、試食の幸運にありついた人たちの意見を聞いてみると概ねなかなか好評であり、筆者もオヒョウの味はとても気に入った1人だった。

その味は基本的に「サッパリ」としているが、その身を噛んで味わうと天然魚らしい旨味がジワーッと出てくるものがあり、この味はやはり同じ白身のヒラメと似ていて、赤身の魚のようなドンと直接的に感じられる旨みとは違うものだと感じた。

オヒョウの刺身と鮨を比較すると、刺身は直接的な旨みに欠けるので少しもの足りないものがあるけれど、その点にぎり鮨の方は銀シャリの甘みと絶妙にマッチして、刺身とは違うバランスの良い美味しさが引き出されると感じるものがあり、オヒョウはにぎり鮨など鮨との組み合わせで食べるのが良いと感じた。

このようなオヒョウの刺身や鮨というものは、やはり何と言ってもいつでも誰でも食べられるようなものではなく、このスーパーの魚売場の作業場で筆者自身はとても貴重な体験をさせてもらうことになったし、試食の場に居合わせた人達も今後同じようなことがそれほど多く経験出来るとは限らない貴重な場となったのではないかと思う。

なぜならオヒョウという魚は基本的に刺身に出来るような鮮度のものは簡単に手に入らないと考えておくべきであり、そのほとんどが冷凍魚という形で流通していて、それも大半がアメリカのアラスカや北欧のグリーンランド、アイスランドなどからの輸入魚だと見て間違いないからだ。

ウィキペディアによると、英語でオヒョウは halibut(ハリバット)であり、それはタイヘイヨウオヒョウが学名 Hippoglossus stenolepis 、英名 Pacific halibut 、そしてタイセイヨウオヒョウは 学名 Hippoglossus hippoglossus 、英名 Atlantic halibut なのだが、このhalibutという言葉の中にはカラスカレイ属のグリーンランドハリバット 学名 Reinhardtius hippoglossoides(標準和名:カラスガレイ)や、ヒラメ科ヒラメ属のカリフォルニアハリバット 学名 Paralichthys californicus など、正確に言うとオヒョウ属でない魚も含まれていて、halibutという呼称は「カレイ目の大型魚」に幅広く付けられた呼び名と考えるべきなのである。(以上はウィキペディアのオヒョウの内容を筆者なりに解釈して表現したもの)

つまりオヒョウと表現をされている輸入の冷凍魚が必ずしもオヒョウ属ではなくカラスカレイ属やヒラメ属のhalibut(ハリバット)である可能性も否定しきれないし、その逆にカラスカレイだと思っていると実はオヒョウのことだったりということがあっても、今の日本の現実としては何ら不思議なことではないということである。

例えばカラスカレイというのは、下の画像のような冷凍カレイ切身の商品としては近年日本国内でも非常に人気が高まってきており、更に中国での人気の高まりからカラスカレイ資源は引っ張りだことなっていて、その流通価格は900円/kg 近くにもなっていて、その価格は何年か前からするとほぼ2倍くらいになってしまっている。

   

カラスカレイは価格が高くなってしまった今でもカレイの切身としては高い人気を維持しているが、海外での人気の高まりから一部の冷凍魚の中で例えば銀ダラのようにドレスの価格が2,000円〜2,400円/kgもの相場となって、惣菜用冷凍魚としては価格があまりにも暴騰して大衆魚とは言えなくなってしまっている魚もあるが、カラスカレイもそれと同じようになってしまう恐れがないとは言い切れないのである。

こういうカラスカレイのような冷凍惣菜魚は、世界中に冷凍で流通できるから世界中の何処にでもニーズがあるところに運ばれていくので、世界的なニーズを日本で読むことができず、価格高騰の行き着く先が見えない側面もあるのだ。


ところが一方で、カレイ類と似たような形をしている高級魚のヒラメは、その全く反対に近年は流通価格下落が止まらず、活魚でも養殖ものは平均すると1,000円/kgを少し超えるくらいの市場相場となってしまっており、天然物でさえも独歩高をとても謳歌出来ない価格レベルとなってしまっている。

過去に FISH FOOD TIIMES の平成21年3月号においても、ヒラメの相場暴落を伝えていたけれども、その後も相場下落の基調は続いていたのである。

ヒラメの価格が下落した大きな要因は、20年以上前から韓国の養殖ヒラメが活魚で日本に輸入されるようになり、まだ輸入が始まって間もない1993年当時天然ヒラメの相場は、下の表にあるように 2,700 円/kg前後はしていて、養殖ものでも 2,200円/kgほどであり、韓国の輸入養殖ヒラメでも1,600円/kg ほどだったのだが、その後韓国からの輸入の増加に伴って国産の天然物も養殖物も輸入価格に影響を受けて下落し、2011 年以降の相場は両方とも平均 1,100 円/kg前後で低迷することになっている。

さらに記憶にまだ新しい2014年4月には、魚の筋肉に寄生する粘液胞子虫のクドアが寄生したヒラメを食べて一過性の嘔吐や下痢が起きた「クドア中毒事件」が起こってヒラメ相場はガタガタになってしまったことがあるが、このクドアは多毛類(ゴカイ)と魚類との間を行ったり来たりして各々に寄生しているといわれているけれども、まだその生態はよく判っていないようである。

クドアという寄生虫は、ー15℃ 〜 ー20℃で4時間以上冷凍するか、または中心温度75℃で5分以上加熱することにより病原性が失われることが確認されている。しかしヒラメは基本として生食が前提となっていて冷凍や加熱をするとその価値は半減してしまうので、その後国内のヒラメ養殖場では宿主となるゴカイ等の環形動物が存在しない飼育環境を整え、出荷前検査を厳密に行って寄生が無いことを確認してから出荷するようにして価値を落とさないようにしていたけれども、2015年8月には大分県で韓国からの輸入の活ヒラメに大量のクドアが検出されてヒラメ相場を再び冷やしこませたのだった。

上記したように、ヒラメは昔から刺身や鮨での生食が料理主体となっていて、そのために活魚での流通が基本となって高い価格での取引が当たり前の高級魚として扱われてきたので、従来はカレイ類のように一般向けの「切身」として小売店の店頭に出ることは価格的に無理な面があった。

しかしヒラメの価格がここまで下がってくると、切身での販売も決して無理ではないことになり、高品質商品を得意とするスーパーの魚売場では、以下の画像のような養殖ヒラメの切身はそれほど珍しいものではなくなってきたのである。

  

 

更に養殖ヒラメだけではなく、以下の画像のように天然ヒラメも比較的小さなサイズのものや相場状況次第では、小売店の店頭において天然ヒラメ切身の品揃えが可能になってきているのだ。

出来ることならば、近くの店で上画像のような鮮度の良い天然ヒラメが、勇気を振り絞らなくても買える適切な価格で売られていたら嬉しい、と思うのは筆者だけではないと思う。


さて、今月号はオヒョウに始まり、アサバカレイ、ソウハチカレイ、カラスカレイ、そしてヒラメ、など何種類もの底魚について色々触れてきたが、食用とされているカレイ類の仲間だけで30種類ほどもあると言われる中で、今月号で扱ったのはほんの僅かなものでしかない。

カレイやヒラメのような底魚は何十種類もの仲間がいるけれども、スーパーやデパートの魚売場や魚小売店で売られているのは、その中のほんの一部の種類が絞り込まれて店頭に並べられているのだというのが理解できるのではないかと思う。

食用魚としての底魚はこれらの他にも色々あるのだから、底魚はまだまだ「底なし・・・?」の可能性を秘めているようである。


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更新日時 平成28年 2月1日