魚種・テーマの索引
 
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No.143-2 海を隔てた魚食の違い
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124 旬のアマダイの鮨と刺身(平成26年4月号)
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121 うなちらし(うな重)平成26年1月号)
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118 生秋鮭焼霜刺身(平成25年10月号)
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114 イサキ姿造り(平成25年6月号)
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104 活鱧の刺身(平成24年8月号)
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平成30年 8月号 176

タコ

タコ

店内手作り煮ダコ


タコの価格がどんどん上がっている

煮ダコの小売価格は今や398円/100gで販売している店も出てきている。もちろん100g当たり300円以下の売価で売っている店もあるけれど、それは小さな小ダコと呼ばれている元々評価は高くなく以前から安く売られているサイズであり、鮨ネタや刺身などに使いやすい1kg以上のサイズの売価は今や300円/100gを超えることを覚悟しなければならなくなっている。

最近の築地の生タコ平均卸売り価格は以下のグラフのような推移をしている。これはあくまで生ダコ全般の平均価格というもので、当然ながらマダコの大きいサイズはこの平均価格よりもずっと上のはずであり、ヤナギダコ、ミズダコはマダコより価格は低く、テナガダコ、イイダコなどは更に下の価格だと推測できる。

タコ

これは日本がアフリカのモーリタニアやモロッコといった海外の国から輸入する冷凍タコの輸入価格が軒並み上昇していることによって、日本の生タコもそれに影響を受けて価格が上昇しているのである。

例えば直近のモーリタニア産の日本向け輸入価格は以下のようになっている。

タコ

上の表はモーリタニア水産物通商協会(SMCP)が最近公表した2018年8月20日までの日本向け販売価格である。この表の説明をすると、価格が一番高いツボ漁3番サイズは、2017年2月15日までに漁獲された冬漁物は1トンあたり10,400ドルだったのが、2018年2月15日までに漁獲された冬漁物は14,600ドルへと1年前より40%値上がりしているのだ。そしてツボ漁物で一番小さい8番サイズで比較すると、これが何と1トン当たり5,985ドルが10,285ドルへと1年間で約72% も値上がりしているのだから、まさに異常な値上がりと言って良いだろう。

ちなみに、冷凍タコの規格は3番とか5番という番号でサイズが分かるようになっており、以下の表がそのサイズ分けの目安となる。

タコの規格 (10kg当たり)
2番 3〜5匹 2.0〜3.3kg
3番 5〜7匹 1.4〜2.0kg
4番 7〜9匹 1.1〜1.4kg
5番 9〜12匹 0.8〜1.1kg
6番 12〜16匹 0.6〜0.8kg
7番 16〜22匹 0.4〜0.6kg
8番 22〜30匹 0.3〜0.4kg
9番 30〜40匹 0.2〜0.3kg

 

冷凍タコで一番美味しいのは一番大きい2番だと言われているが、日本では業務筋にとって商品化の際に色々と使い勝手が良く好まれるのは一般的に5番であり、8番以下はブツ切りのコロ状にしかならないと考えて良いだろう。

つまりタコはサイズが大きいほど美味しくて価値があるので大きいほど高い価格で取引されるのだが、最近 その大きいサイズを価格を気にせず積極的に仕入れているのがヨーロッパを地盤とする水産会社であり、ここ数年はヨーロッパ勢の旺盛な買い気に後押しされてアフリカ産タコの価格が暴騰しているのである。

タコはかつてデビルフィッシュ(悪魔の魚)と呼ばれ、日本や韓国、南欧以外では見向きされなかったが、最近は和食ブームや健康志向でヨーロッパや米国のシーフードレストランなどでの消費が増えつつあり、なかでもスペイン勢のタコを買う勢いが強いとのことである。これは相次ぐ中東のテロや緊迫化で、地中海沿岸国の中ではトルコ、エジプトなどへの旅行が敬遠される一方、スペインの人気が高まってパエリアやオリーブ煮などに欠かせないタコの需要が旺盛になっているからだと言われている。

このようなヨーロッパ勢を中心とした旺盛な需要の高まりを背景としてタコの価格が上昇しているのだが、モーリタニアは水産物通商協会(SMCP)がタコの相場をいかにして下げないかを画策をしており、過去にはタコ相場が世界的に弱くなれば資源枯渇を理由として何ヶ月間も休漁期間を設けて供給をタイトにすることで相場下落を止めるなどの手を打ってきた。そのような国家的なタコの価格安定化政策からすると、タコの相場は今後も簡単には下がらないと覚悟しておくべきであろう。

そういった世界的な動きの中で、日本は2017年にモーリタニアからは1.5万トン、モロッコから1.4万ト、中国から0.9万トン、ベトナムから0.4万トンほどのタコを輸入し、世界中から合計5.6万トン輸入した。しかし高騰したタコの価格をそのまま手をこまねいているわけにはいかず、新たなタコの供給元の開発を模索し始めている。

もともとモーリタニアが今のような世界一のタコ生産国になったのは、1977年に日本人の中村正明さんという人が日本の海外漁業協力財団から弱冠29歳という年齢の時にモーリタニアに派遣され、たった一人でタコ漁のノウハウを現地で指導することからスタートしているのだ。

そして西アフリカには、モーリタニアと同じようにプランクトンが豊富で深層水が発生する好漁場を持つセネガルという国があり、JICA(国際協力機構)はこの国に着目し、これまで8年間無償でタコ漁の技術や物流までを支援してきたということであり、そのうちにセネガルがモーリタニアやモロッコに次いでタコを日本に供給する国になってくれる日が来るかもしれない。

タコ


日本での食用タコの製造と販売

モーリタニアなどの海外から輸入された冷凍タコは日本の工場で煮ダコや蒸しタコに製品化して水産関係者に販売しているが、以下のグラフにあるように年度別の時系列で比較してみると、昨年から輸入冷凍タコが急激に値上がりしているのが理解できると思う。

タコ

こうした原料価格の急騰をそのまま卸売り価格に転嫁できなかったことなどが原因となり、福岡市東区にあった食用タコ加工の(株)マルミツは2017年11月17日に事業を停止し、自己破産を申請することになった。

この倒産した食用タコメーカーも、以下の図のような製造工程に近い形で煮ダコと製造していたと思われ、製品を出荷する時は原料から内臓を除去した製品歩留まりが70〜75%になるらしい。

タコ

煮ダコのメーカーはこのような工程を経て製品を製造し、これをチルドや冷凍の形にして卸売店や小売店に販売しているが、当然ながら製造コストや物流費、その他の経費が各流通段階で上乗せされて消費者が目にする末端売価が決められている。

例えばスーパーの魚売場では、上に記したような煮ダコメーカーで製造したものを、メーカー直接なり問屋を通しての間接なりで仕入れているが、基本的に大量販売を前提としているので、いかに安く仕入れていかに安い売価に出来るかは重要なこととして執着していると思われる。

だが今時このような考えを前提とした煮ダコの販売方法というのは、これだけ仕入れ価格が急激に上昇してくると、これまでのような安い価格で特売を仕掛けて量をさばいて売上を作るというスタイルが維持できなくなってしまうと考えざるを得ない。


海外産冷凍タコに頼らざるを得ないのか

現時点ではタイやブリのようなタコの養殖ものは存在せずすべて天然物に限られているので、例えば本マグロのように養殖ものの台頭によって次第に価格がこなれて売り易くなるといった現象を期待をすることは今のところ出来ないのである。

ところが、ニッスイ中央研究所大分海洋研究センターでは2015年に少数の稚ダコの人工種苗の生産に成功し、さらに2016年4月に孵化した浮遊幼生数千尾のうち数十尾が7月に稚ダコとなり、稚ダコの段階に入ると比較的安定して飼育できるようになり、孵化から7ヶ月で1kgを超えることになった。そして孵化後9〜11ヶ月で交尾や産卵する複数の個体が見られ、2016年4月に研究センターで孵化していた成魚由来の卵が2017年4月には孵化して数万尾のマダコ幼生が得られ、極めて困難とされるマダコの完全養殖に成功したというのである。

完全養殖マダコを実用化するにはまだ大きな課題が残されており、事業化にはこれから多くの研究が必要のようで、やっとタコ養殖の量産化に向けた大きな一歩を踏み出したと言えるが、完全養殖マダコが商品として姿を見せるのはもう少し先のことのようである。

つまりこの先しばらくは、世界中で拡大するタコの需要の高まりに対して、どこかの地域でタコが異常発生するといった何らかの急激な供給増でも起こらない限り、タコの価格が安くなることはあまり考えられないということであり、嫌でも現時点の高いタコの価格を前提とした販売体制を構築しなければならないということになるであろう。

さて海外からの冷凍タコがあまりにも高くなってしまったこの時代に、いっそのことその前提から離れてみて、国内のタコに目を向けてみるというのはどうなのだろう。

国内のタコ生産は2016年に3.7万トン前後の漁獲があったようで、輸入量と合計すると10万トン弱が国内で流通したと見られているが、これは漁協を経由した表面上の統計数字であって、実際は数字に出てこない国内でのタコの漁獲があり、本当の国内のタコ生産量はもっと大きな数字になるはずである。

もともと日本では昔からタコの豊富な資源があったが、過去のある時期からスーパーでの大量販売などのために安い価格のタコを求めてモーリタニアやモロッコなど海外で資源開発をおこなってきたのである。ところが、ここまで記してきたような理由でタコが安くてに入らなくなってきたのだから、例えば昨年南三陸町の沖でマダコが年間で前年の10倍も漁獲された事実があるように、もう一度原点に帰って国産のタコに目を向けるのも一考ではないだろうか。


タコ好きには羨望! こんな店がある・・・

そろそろ巻頭画像の説明をすることにしよう。巻頭画像のタコを販売している店は筆者の指導先の一つであり、その店は長崎県の対馬に立地している。

ポップで表示されているタコの販売価格238円/100gというのは、特売価格でも何でもなく普通のいつもの定番価格である。タコの大きさは小さくて700g、大きいのは1.5kgほどであり、平均するとほぼ1kg弱くらいになるので、冷凍タコの規格ではちょうど使い勝手の良い5番サイズくらいだと見て良いだろう。

このタコは地元対馬のタコ漁を得意とする漁師さんから直接仕入れており、タコ漁は季節的要因があって不安定なので、水揚げされた時には漁師さんが別の所への販売する分を除いた残りの全てを買い取って、店の冷凍庫でストックするようにしている。そして店では必要に応じて在庫しているタコを解凍し、店内で手作りの煮ダコを製造し冷凍をせずにチルド販売をしている。

この店はタコの仕入れ価格を漁師さんと取り決めしていて、年間を通じて常に一定の値段で手に入るようになっているのでタコの相場で一喜一憂する心配はない仕組みになっている。もちろん仕入れ価格は公表できないけれども、店内での手作り煮ダコの売価が238円/100gで販売できるのだから、それなりの有利な価格であることは読者も推測できるはずである。しかし生タコの現状相場から全くかけ離れた仕入れ価格とかではなく、これまではそれなりにお互いが納得出来る価格だったのだけれど、今や海外産冷凍タコだけではなく国内の生タコ相場がこれだけ大きく変化している中で、漁師さんがいつまで現在の卸し価格を維持してくれるのか少し心配な面も出てきていることは事実である。

全国のスーパーで、店内での手作り煮ダコを作って販売している店がどれだけ存在するのか筆者は知るところではないけれど、それほど多くはないはずであり、たぶん希少な数しかないことは間違いないであろう。

その希少な例の製造工程を以下に紹介しよう。

店内手作り煮ダコの製造工程
タコ タコ
1,冷凍庫から取り出したビニール袋入りのタコ 9,沸騰したお湯の中に脚の方からゆっくり入れ、お湯の温度が下がらないように気をつけて、脚をお湯の中に何度が上げ下げして入れる。
タコ タコ
2,ビニール袋から取り出して、その日煮ダコにする分をまとめて解凍する。 10,煮る時間は、タコの大きさや数、そして鍋の大きさやガスの能力などにもよるが、平均4〜5分程度である。
タコ タコ
3,完全解凍するまで流水で解凍する。 11,この画像は能力の高いガスコンロの上に、大鍋を載せてタコを何匹か入れた場合であり、こうすれば効率良く煮ダコがつくれる。
タコ タコ
4,解凍した状態のタコ 12,タコが赤く変色し煮上がったら、胴体をトングで掴んでお湯から引き上げる。
タコ タコ
5,ボールに入れた1匹のタコに、片手一握り分ほどの塩をかける。 13、鍋から取り出した煮ダコ。
タコ タコ
6,ボールの中で塩揉みをしてヌメリを除去する。活ダコの場合はヌメリの除去にとても苦労するが、タコを冷凍するとヌメリの除去は簡単になる。 14,煮上がったタコは直ぐにたっぷり氷を入れたボールやポリバケツの水の中に入れて冷やし込む。
タコ タコ
7,ヌメリがある程度取れたら、流水をかけながらまだ乗っているヌメリや全体的な汚れ、そして吸盤の中に入り込んでいる小さな汚れなどをしっかり洗い流す。 15,氷水の中から取り出した状態。
タコ タコ
8,タコ1匹の場合は鍋の中で沸騰したお湯に大さじ一杯分の酢を入れる。

16,約1.2kgの店内手作り煮ダコが完成。

 

こうして出来上がった店内手作り煮ダコが、この店では以下の画像のような形で毎日販売されているのである。

タコ

この店でいつも買い物をされている常連のお客様は、この対馬産手作り煮ダコがどんなに美味しいか、しかも他店よりどれほど安いかを良く知っていて、この煮ダコが売れ残るようなことはなく、もちろん値下げすることも有り得ず、仮に製造が間に合わなくて売場になかったら、お客様はタコがどの時間に売場に並ぶのかを尋ねてくるほどの人気商品なのである。

こういう店内手作りで美味しい煮ダコが、こんなに安い価格で売られている店は、たぶん日本全国隈無く探しても見つからないはずであり、その点だけで言えば対馬に住んでいる人はとても幸せである。

この手作り煮ダコは対馬のどの競合店にもない圧倒的な差別化商品となっている看板商品なのだが、店の一番の悩みはタコが多く漁獲される夏場に品切れすることはないけれど、冬場になって漁師さんからの入荷が途切れて、冷凍庫の在庫も底を尽いてしまうという事態である。煮ダコの原料がないとなると、輸入物の煮ダコを使わざるを得なくなり、こうなると他の店と同じなので手作り煮ダコを期待されて来店されたお客様を落胆させることになってしまうのだ。

しかしだからと言って、対馬以外の遠隔地から冷凍タコを仕入れて手作り煮ダコを作るというのも、対馬産の魚にこだわっているこの店の魚売場が目指す方向性とは違うようなので、そこまでは手を広げていないのが現実である。

そのような判断をしているのは、この店の魚売場は離島という立地条件や豊富な魚種が漁獲される漁場を抱える対馬という地域性を踏まえ、生魚は基本的にほぼ100%を対馬近海で漁獲された鮮度抜群の鮮魚だけを仕入れて運営しているからである。例外として対馬で漁獲されない生サーモンなど島外から仕入れなければならない魚は幾つかあるけれど、マグロについても対馬産の養殖生本マグロだけにこだわっているので、養殖場から店に直送された鮮度の良い生本マグロを使った刺身や鮨はまさに絶対的とも言える人気を誇っていて、その高い人気が嘘ではないと裏付けられる証拠は「毎日、鮨や刺身の鉢盛り注文が入らない日はない」という誰もが驚く、嘘のような事実である。

6年前にテナント魚屋の撤退に伴って直営鮮魚売場がスタートし、筆者は最初の段階の売場や作業場の設計から携わって今年で6年目に入っているが、ここまで地元対馬産の鮮度の良い生魚にこだわった売場づくりの方向へと導いてきたことは間違いなかったと考えている。

5年目に入った頃から、売上がスタート時の2倍を超えるようになって、その地域で揺るぎない高い評価を得るようになった大きな要因は、今回紹介している「店内手作り煮ダコ」のような商品を、そこで働いている従業員の皆さんが、まさに「一所懸命に身体を張って」商品化しているからこそだと思っている。

メーカーで製造した海外産冷凍タコを原料にした煮ダコを仕入れることはもちろん対馬でも可能である。しかしこの魚売場ではお客様が手作り煮ダコを買って食べて喜ぶ姿を思い浮かべ、生ダコのあの独特の臭いに全身包まれながらタコを塩揉みし、身を粉にして独自商品を作ることに汗を出しているのだ。その姿は今時のスーパーが省力化、合理化、効率化の言葉に振り回されて、売り手の気持ちのこもった商品が売場からどんどん姿を消している状況とは大きな違いがあると言えるであろう。

魚売場の売上げ不振で悩んでいる部門担当者や水産部門の凋落傾向に歯止めがかからないスーパーを経営している社長さんがこのページを読んでくれているとしたら、6月度も売上前年比110%を超えたこの魚売場が実施している「身体を張った魚売場の運営」を少し参考にしてみてはいかがだろう。

お客様が本当に喜ぶ商品を実現していかなければ先はないと考えるべきである。


P.S.  <タコについて FISH FOOD TIMES では、過去に 67小ダコの唐揚げ用(平成21年7月号) と bV生タコの蛇腹造り(平成16年7月号) でも言及しているので時間があれば覗いてみてほしい。>


水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新してきたこのホームページへの

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更新日時 平成30年 8月 1日