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No.212 カツオ・イカ紅白刺身盛り合わせ  令和3年 8月号
No.211  肝なしウスバハギ刺身&鮨  令和3年 7月号
No.210  でかいタチウオ   令和3年 6月号
No.209 モンゴウイカ商品   令和3年 5月号
No.208 ビンナガ若魚平造り  令和3年 4月号
No.207  テングニシ刺身盛り合わせ   令和3年 3月号
No.206  ホウボウ姿造り   令和3年 2月号
No.205  鮭を二日に一切れ  令和3年 1月号
No.204 ハタハタ刺身&にぎり鮨 令和2年 12月号
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No.202 ツムブリ刺身
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No.201 チカメキントキ皮揚げ
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令和元年 5月号
No.184 ヨコワで作る刺身と鮨
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No.183 スルメイカを美味しく
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平成31年 2月号
No.181 魚売場の活性化
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No.179-2豊かな自然と多民族都市バンクーバー
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No.179-1成長企業がシアトルの未来を変える
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No.178ヒラスズキ鮨&切身
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No.177 メイチダイ刺身&鮨
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125 メバル薄造り(平成26年5月号)
124 旬のアマダイの鮨と刺身(平成26年4月号)
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118 生秋鮭焼霜刺身(平成25年10月号)
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114 イサキ姿造り(平成25年6月号)
113 ウマヅラハギ薄造り(平成25年5月号)
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110 生アナゴにぎり鮨(平成25年2月号)
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令和 3年 10月号  214

正露丸で安心、胡麻サバ


サバの刺身が売られていない

ここ10年以上にもなるだろうか、筆者は水産物小売関係者の一人として苦々しい思いを引きずって来た一つのことがある。それは、サバ、サンマ、アジなど、いわゆる青魚と呼ばれている魚種の刺身が、全国のスーパーの魚売場から次々と姿を消してしまったことである。

晩秋のサバ、初秋のサンマ、初夏のアジなどは、脂がのった旬の時期には価格も手頃となり、季節の風物詩として刺身や塩焼き、その他様々な料理となって、これまで日本人の舌を楽しませてきた。ところが、これらの魚の刺身が魚売場から姿を消してしまっているのだ。その理由は、近年アニサキス中毒事件が多発することによって、小売事業者はその事件を誘発する当事者として責任を執りたくないので、その責任回避の方法として魚売場での販売を止めてしまったのだ。

厚生労働省のまとめによると、2019年に国内で発生した食中毒事件数は1061件で、前年と比べて269件減少した。患者数は4264人減の1万3018人、死者は1人増え4人となった。2人以上の患者が出た事例は689件で、全体の64.9%だったが、患者数は1万2646人と全体の97.1%を占めた。500人以上の患者が出た食中毒の発生はなかった。病因物質別の発生件数では、この数年急増が目立ったアニサキスが減少に転じたものの2年連続最多となり328件(30.9%)、2位がカンピロバクター286件(27%)、3位がノロウイルス212件(20%)の順。これらで全体の8割近くの77.9%を占めた。アニサキス食中毒は2016年に124件だったが、2017年は230件に急増。2018年は468件と倍増し、カンピロバクターを抜いて最多となっていた。2019年は前年比で140件減少したものの2年連続して最多だった。           (ニッポン消費者新聞記事より抜粋)

 

FISH FOOD TIMESは、平成26年10月号 No.130 でその問題点を採り上げていた。しかし、筆者の問題提起は魚の小売関係者の耳に届くことはなく、ますます青魚の刺身商品での販売停止傾向は強まり、一部のメーカーが工場で青魚を解体し、アニサキス不在を証明した調理済み真空商品以外、小売業者が丸魚から調理して商品化した刺身は全国の魚売場からほぼ姿を消してしまった。

サバもサンマもアジも、魚売場に冷凍をしていない生の状態での刺身が品揃えされることはなくなり、本来は水産部門において利益の源泉となるはずの青魚刺身が品揃えされていないのは、部門の運営面にも大きな影響を与えたはずである。

筆者は職業柄、これまで数え切れないほど多く青魚の刺身を食する機会があったが、特に福岡出身であるがゆえに郷土の食文化の一つとも言える「胡麻サバ」が、小売業者の危険回避策として福岡のスーパーで販売されなくなったことに非常に強い違和感を覚えてきたのである。


正露丸はアニサキスを死滅させる特効薬となる

生きたアニサキスは胃酸や胃の消化酵素に耐性があり、消化液中でも1週間近く生きることができる。アニサキス症の予防にはアニサキスをマイナス20度で24時間以上冷凍、もしくは60度で1分以上の加熱が有効とされ、これまではその特効薬はなく、胃アニサキス症の場合は内視鏡を使って摘出されてきた。

ところが、最近この問題に関連する重大な発表があった。それは大幸薬品から市販薬として発売されている「正露丸」がアニサキスを死滅させる特効薬となるというのだ。

ドイツ薬理学の国際専門誌Hepato-Gastroenterology vol58 に掲載された論文では、アニサキス症を疑われた患者が正露丸を服用したところ、鋭い腹痛は1〜2分で消失した。患者の胃の中には動きがないアニサキス幼虫が見つかり、アニサキス症と診断されたが、患者は処方箋を与えられることなく回復したとのことである。

このことは高知大理工学部の松岡達臣教授らの研究グループが公表したもので、胃腸薬の正露丸を通常の服用量で溶かした液にアニサキスを30分間浸す処理をすると、ほぼ全てのアニサキスが運動を停止し、24時間後には死んだことが確認され、胃と同じ濃度の消化酵素のペプシンに浸すと、24時間以内にアニサキスの分解が始まったということだ。正露丸が1回服用量でアニサキスによる胃の激痛を和らげ、アニサキスを殺す世界初の特効薬になる可能性があると発表されている。論文発表 DOI:10.17352 / ojpp.000017「木材クレオソートを含む市販薬(正露丸)がアニサキスの幼虫を殺す」 高知大学理工学部生物科学科 松岡達臣博士 公開日 2021年7月1日

正露丸は我が家でもイザという時の家庭常備薬となっており、これまで海外旅行でも絶対に欠かせない必須の携行薬として持参し、訪問した外国でも活躍してきたのが正露丸である。その効能は、軟便、下痢、食あたり、水あたり、吐き下し、くだり腹、消化不良による下痢、むし歯痛などであり、アニサキス症への効果は効能外となっている。大幸薬品は現段階でアニサキス症への効能を表現することはできないけれど、あらかじめ服用しておけば予防できるだろうと発表している。製薬会社としてアニサキス症への効能を追加するには臨床研究が必要なのだが、アニサキス症患者を研究に必要なだけ集めること自体が難しく、効能を実証する臨床結果を発表するのは簡単にはいかないようである。

しかし大幸薬品は、アニサキスの活動を抑える効果があるとして、正露丸の主成分・木クレオソートの活用に関する特許(特許第5614801号)を2014年に取得している。木クレオソートというのは、ブナやマツなどの原木から得た木タールを精製した液体であり、腸内細菌のバランスに影響を及ぼすことなく、腸の調子を整えることができるとのことだ。

筆者は正露丸の主成分がクレオソートということを知って実は驚いた。なぜなら、DIYが趣味の筆者はこれまで木材防虫防腐剤のクレオソートを14kg缶で数多く購入し、自作した長さ20m、高さ5m、広さ53u、のウッドデッキや高さ2mの板塀などに何度も塗布してきた経験があるからであり、倉庫に常時ストックしている馴染みの名称のなのである。

今回の情報で、正露丸と防腐剤クレオソートが基本は同じ成分で出来ていることを知り、なるほど・・・あの独特の臭いは確かに何か似たようなものを感じる・・・、と合点のいくものがあった。


朗報を活かす

さて、この朗報を読者の皆さんはどう活かすであろうか。上記してきた情報は2021年7月1日に公開されたばかりであり、まだ誰もが知っている常識的なものではない。

サバ、サンマ、アジなどの青魚刺身は当然好き嫌いはあるものの、基本的に「安くて、美味しくて、ボリュームたっぷり」と三拍子揃った刺身であり、販売する側は値入率を高めに設定しても売価はそれほど高くはならず利益の点でも優等生である。こういうお客様と売り手側がウィン・ウィンの関係にある刺身を全国の魚売場は何年もの長い間品揃えしないできたのである。何とももったいない話ではないか・・・。

これまで胃アニサキス症の場合は内視鏡を使って摘出するしかなかったが、正露丸を服用すれば激しい痛みの腹痛が生じても、それは1〜2分で消失する可能性が発表されているのである。どうしてもアニサキス症の怖さが先立つならば、酒席や宴会に顔を出す前に悪酔い防止剤を飲む人がいるように、正露丸を先に服用しておけば中毒の可能性は限りなくゼロに近づくことになるのだ。

サバ、サンマ、アジなどの青魚刺身の全国での売上可能性はいったいどのくらいになるだろう。地域によって売上高は大きく違うと思われ、サバやアジが多く漁獲され、よく食べる習慣がある西日本では相当大きな金額になるはずだが、これに比べ東日本での青魚刺身の存在感はたぶん高くはないだろうと推測される。やはり何と言っても、西日本の中でとりわけ福岡県は昔から胡麻サバ刺身など、サバの刺身を食べる食文化がある。これが隣県の佐賀や熊本、大分では、筆者の経験的感覚からすると福岡ほどにはサバ刺身の存在感はなくなるのだが、いっぽうでアジ刺身に関してはどの県も似たような大きな存在感を示している。

筆者は、安くて、美味しくて、ボリュームたっぷりで利益面にも貢献してくれることが多い青魚刺身の販売を、アニサキス中毒を引き起こす当事者となるのが怖いからと言って止めてしまうスーパーマーケットが次々と出てくる現象に「アホか・・・、それでも魚の販売のプロか・・・」と、こんな過激なことを口には出さないものの、心の中では本当に苦々しい思いを抱えてきたのだ。

そして、そのような判断を下してきた魚売場を運営する経営責任者は今回の正露丸情報をどのように活かすのであろう。例えば「胡麻サバ刺身」が食文化の一つとして知られている福岡のスーパーの魚売場はどう対応するのであろうか。今時は福岡のスーパーの魚売場であっても、昔だったら堂々と「刺身用サバ」として販売していた玄界灘獲れ(日本海側対馬暖流系群)であり、しかもカッチリと死後硬直状態にあるマサバであっても、あえてそれを隠すがごとく刺身用の表示はなく、もちろんサバの刺身も品揃えされていない状態が続いている。

以下の囲いの中の文章は、FISH FOOD TIMES平成26年10月号 No.130 で記していた内容だが、アニサキスと胡麻サバとの問題を紐解くために要約して敢えて掲載する。この中身はその時と重複することになるので、既に読んでいる方は読み飛ばしてもらって結構である。

そもそもアニサキスはカイチュウ(回虫)目アニサキス科アニサキス属に属する動物の総称であり、サバだけでなくアジやイワシなどの青物一般に多い。アニサキスが寄生するのはイカにも少なくはなくタラやマグロでもよく見つかっている。海の中ではクジラやイルカなどがアニサキスの最終宿主であり、これらが食べるアニサキスの中間宿主はオキアミや甲殻類なども含めてほとんど全ての魚がその対象になると言われている。極論を言えばアニサキスを怖がっていたら基本的に生魚を刺身ではまったく食べることが出来ないことになり、すべて冷凍をするか火を通すかでしか魚は食べられないことになるのだ。

保健所による「営業停止という恐怖政治」の影響で、スーパー各社はサバの刺身を禁止しているところがほとんどだが、実はそれほど恐れるほどのこともないことを、ある調査結果の発表によって明らかにされている。 それは東京都安全研究センターという機関が、2007年から2009年の3年間にわたって全国のサバのアニサキスの実態を調査したところ、太平洋系群サバから発見された8割以上のアニサキスが「アニサキス・シンプレックス・センス・ストレクト」という種類であり、この種類のアニサキスは内臓から肉への移行率が約11.1%あり、国内のアニサキス患者の100人中99人はこのシンプレックス種だったそうだ。

いっぽう対馬暖流系群(日本海側のサバ)に宿主する「アニサキス・ピグレフィー」という種類のアニサキスが、内臓から肉へ移行する率は僅か「0.1%」というものであり、日本海側で獲れるサバの80%は、このピグレフィー種のアニサキスだということなのである。 つまり日本海側のサバについてはアニサキス症による危険性はほとんどなく、業界関係者の経験からしても「内臓にアニサキスがいたとしても身につくことはほとんどなく、内臓をしっかり処理すれば大丈夫」というのが大半の意見なのである。

店でサバの刺身を提供したいと考えるならば、対馬暖流系群(日本海側)のサバを選択して仕入れすれば、そのリスクは極端に低くなるということなのである。 昔から経験的に学んできたこういう事実から、日本海側に面した博多では「胡麻サバ」という形で、サバを刺身で食べる習慣が昔から地域の「食文化」として根付いてきたのだ。またアニサキスは主にサバが南方海域へ回遊中に寄生することが多いので、日本海側でなく太平洋側の海域においても、回遊をせずに近海の相模湾・伊勢湾・豊後水道などで生育した個体は比較的安全とされている。

 

こういう知識を踏まえて、地域に根ざすスーパーを標榜する企業ならば、地域の食文化を守る努力をしてこそ、本当の地域の人々に愛されるスーパーとして認知されるのではないだろうか。もし「正露丸効果」という朗報を知ることが出来たら、胡麻サバという福岡の食文化は今や居酒屋に行かないと味わえないなんていう情けない状況は出来るだけ早くなくし、消費者が望む良い方向へと変化させていくべきであろう。


胡麻サバ商品を復活しよう

今回の正露丸朗報は、サバだけでなく、アジやサンマ、イカ類などを含む魚全般に通用することなのだが、やはり中毒事件としてやり玉に挙がりやすいサバを採り上げて、これまで苦しんできたアニサキス禍を乗り越える突破口としたい。

胡麻サバとは「魚種のゴマサバ」のことではなく、刺身の上に「白胡麻」をかけて食べることから、サバの刺身がこのような名称になったのであり、福岡では昔から地域の食文化として親しまれてきた。

9月27日(月)に長崎県対馬市厳原町小茂田の佐須漁協からマサバが2尾手に入ったので、その胡麻サバ刺身のオーソドックスな商品化をまず紹介しよう。

大きさは1kg弱で、鮮度は死後硬直のカチカチという状態だった。解体してみると身は真っ赤で脂の乗りはまだまだのようで、時期的にはもう少し遅い方が美味しくなるのではないかと感じた。

これを3種類の胡麻サバ刺身にすることにした。まず半身で平造りして盛りつけることにした。そのためには血合い骨を除去しなければならないのだが、鮮度の良いサバの血合い骨は骨抜きの道具を使って抜こうとしても、骨がしっかり身にくっついているのでなかなか抜けず、無理をすると小骨が途中から切れてしまうことになる。そこで以下のように柳刃包丁で血合い骨の横にV字型の切り込みを入れ、血合い骨を除去することにした。

胡麻サバ刺身半身盛り
1,血合い骨の左横に皮に到達しない程度に切り込みを入れる。
2,血合い骨の右横にも同じように切り込みを入れる。
3,血合い骨を長い固まりとして骨抜きで掴み除去する。
4,血合い骨がV字型に除去された状態。
5,背側と腹側にそれぞれ一ヶ所飾り包丁を入れ平造りにする。
白ゴマをトッピングした胡麻サバ刺身半身盛り

 

次は、背と腹を分けた胡麻サバ刺身1/4盛りである。

胡麻サバ刺身1/4盛り
1,皮を下にして血合い骨をV字型に長く切り離す。
2,皮を下にして切ることで切り口が鋭くなる。
白ゴマだけでなく刻みネギもトッピングした胡麻サバ刺身

 

以上二つは平造りで商品化をしたが、次は一昔前に福岡を含む西日本各地でまき網漁が盛んな頃、マサバが大量に漁獲され非常に安く手に入った時代の名残で、これこそが博多では典型的な胡麻サバと呼ばれる、少し荒っぽくラフな商品化方法である。

博多胡麻サバ
1,腹身をあまり厚くならない大きさに切る。
2,背身も厚くならないよう適当に切る。
3,厚さも長さも適当に切って寄せ集める。
トレーに盛りつけ、白ゴマをトッピングした博多胡麻サバ

胡麻サバを美味しく食べる

以上の胡麻サバ刺身は基本的にワサビ醤油か生姜醤油で食べることを前提とした普通の刺身であるが、博多胡麻サバはここから先一手間を加えることによって更に美味しく食べることができる。

それは胡麻サバを生のままで食べるだけではなくヅケにすることだ。

ヅケのタレ 1,醤油 大さじ2 2,酒 小さじ1 3, みりん 大さじ1

 

夕食で胡麻サバ刺身を酒の肴にして一杯傾けたら、胡麻サバを全て食べてしまわず、残りを上画像のようにタレに漬け込む。

このヅケをご飯の上にのせ、白ゴマ、刻みネギ、刻み大葉、ワサビなどをトッピングする。

そこに、熱々で濃いめの緑茶をタップリかけて、胡麻サバ茶漬けにするのだ。

お好みでヅケタレを加えたり、単純に少々の醤油を加えたりして、自分好みの味に仕上げたら良いのだが、いわゆる「締め」としては単純だがなかなかの味である。

さらに、胡麻サバを茶漬けでも全て平らげることが出来なければ、そのままヅケの状態で冷蔵庫に一晩保管し、翌日の朝でも昼でも構わないが、今度はお茶漬けにせず以下の画像のように胡麻サバヅケ丼にすることをお勧めしたい。

筆者が翌日食べる胡麻サバヅケ丼は、胡麻サバにタレの味が充分染みこんでいるので更にタレを加えたりはしないが、風味を加えるために白ゴマをタップリ雪のように散らすだけではなく、擂り胡麻を加えたり、刻みネギや刻み大葉などを多めに加え、サバの生臭みを感じさせないようにしている。


正露丸で青魚の刺身を復活させよう

さて、今月号は正露丸という市販薬が、極端な表現をすれば「水産部門の救世主に成り得る」という感覚でここまで記事を書いてきた。筆者のこのような感覚は過剰反応ではないかと思われるかもしれないが、サバだけでなくサンマやアジ、イワシなど、青魚の刺身がアニサキス禍を恐れて販売されていない事実というのは水産物小売関係者にとってそれだけ大きな問題だと筆者は感じていたということである。

別の観点からすると、そんなこと「養殖サバを売れば何の心配もせずに済むことじゃないか」と突き放されてしまうのかもしれない。しかし、あんなに高価な養殖サバでは水産部門の利益の源泉にはなりにくいのである。また、随分昔から存在する養殖アジは何十年経っても天然アジを質量ともに陵駕出来ないのは、それがやたら脂っぽくて柔らか過ぎる身質であるため天然アジとは全く別物になっているからであり、養殖サバもやはり同じように天然サバとは別物と考えるべきである。

水産物小売関係者にとって非常に影響の大きいこのビッグニュースをどのように捉え、商売にどう活かすことが出来るか、そこに商売感覚の鋭敏さや鈍感さの違いが出てくるであろう。筆者からすると、このビッグニュースを活かしきれない魚関係者は、まさに「商機に鈍感で商売人失格」とでも言えるのではないかと思われる。危険な川を渡るのに身の保全を優先し石橋を叩くばかりで、リスクを執って川を渡ろうとしない弱腰姿勢というのはそろそろ終止符を打ってほしいものである。

例えば、魚売場のPOPに「サバ刺身復活! プロの目で厳選。万が一の時、正露丸が貴方を守ります」という謳い文句で、少しだけ小さい文字と写真で正露丸のアニサキス死滅効果をPOPに添えるというのはどうだろう。

サンマは昨年より多少は増しなものの、今のところは今年も相変わらず不漁が続いている。サンマは昔に比べると取引相場は随分高くなって、安く売ることが出来なくなっているが、それでも刺身や鮨に商品化すれば何とか商品として通用するボリュームと売価が実現できる。コールドチェーンの鮮度管理が発達したことで、南の沖縄でも北の北海道で獲れた生サンマを刺身や鮨で売ることが出来る時代だ。それは今の時期だからこそ旬魚として大いに売り込めるのである。

やる気さえあれば、上に具体例として提案しているPOPのサバをサンマに置き換えるだけでサンマの刺身を販売出来るのだ。10月にサバだけでなく、サンマの刺身も売ってみてほしい!

好機到来! 機を見るに敏、それが商売人だ。


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更新日時 令和 3年 10月 1日