魚種・テーマの索引
 
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No.143-2 海を隔てた魚食の違い
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平成30年 9月号 177

メイチダイ

メイチダイ

メイチダイ刺身&鮨


目に特徴のある魚

下の画像がメイチダイである。この魚は頭の部分に褐色の帯のような模様がある。この画像ではそれはもう一つハッキリしないけれど、その帯が瞳の上下にも続いていて、眼球の黒と一緒になって眼の中を貫いているように見える。

もう一つ下の画像の方で円形に囲んでそれを誇張しているので理解してもらえると思う。このように眼球のなかを一筋の帯が貫いているように見えることから、メイチダイ(眼に一筋の鯛)という名称がつけられているらしい。しかしこの帯は死んでしまうとほとんど消えてしまう。

メイチダイ

 

メイチダイ

眼に特徴があることから、全国の地方でもメの字がついていることが多く、福岡市の近辺や関西地方での呼称はタマメ、徳島地方はメイチ、宮崎県南部ではメテなど、他にもメがついた地方名称で呼ばれている。英名は Grey Large-eye Bream であり、やはり眼に特徴がある表現となっている。

眼球に特徴があるだけでなく、この盛り上がった大きな眼は傷つくと一種独特のカルキ臭のような臭いを発するということであり、筆者はその臭いを嗅いだことはなく興味あるところだ。釣り人のなかにはメイチダイが釣れても、クーラーボックスに入れておくとボックスの内側が臭くなるので捨てる人もいるらしいけれど、もったいないことだ。


メイチダイの仲間

実はメイチダイが入荷した時、同じフエフキダイ科フエフキダイも手に入ったので以下の画像のように並べて撮影してみた。同じフエフキダイ科の魚でも並べてみると違いが良く判る。

メイチダイ

並んだ画像を比較すると、フエフキダイ科の仲間は左右に平たく側扁した、いわゆる型の体型を持っているが、特にフエフキダイはメイチダイよりも上画像のように吻が前方に大きく突き出した特徴があり、強靭な両顎と歯を備えていて、甲殻類や棘皮動物などの底生生物を捕食するためにこのような形になっているらしい。

さて、今月号ではメイチダイのついでに同じ仲間のフエフキダイを紹介したので、そのまたついでに区別するのが紛らわしいフエフキダイ科の仲間の魚を紹介しよう。

イソフエフキ

ハマフエフキ

さて、上画像の魚の違いを明確に答えられる人は、沖縄及び南西諸島の水産関係者か、もしくは南方系の魚に強い釣り人だろう。たぶんそれ以外の地域の人は、どこかどう違うから何という魚なのか、しどろもどろのレベルの説明しか出来ないではないかと思う。

特に上下に並んだ2尾の内の上画像は、フエフキダイだと言って譲らない人もいるのではないかと思うが違うのである。この魚の名は「イソフエフキ」である。やはり南方系の魚でフエフキダイ属に属していて、沖縄ではクチナジと呼ばれ、比較的安値で手に入る白身の大衆魚である。フエフキダイよりも眼球の大きさが目立ち、全体的にヒレの赤みが強く、特に尾ビレの先の赤い縁取りはフエフキダイと区別する大きなポイントとなる。イソフエフキという名前は磯にいるフエフキダイという意味であり、海岸近くの岩場や珊瑚礁の浅い海に生息しているのが名称の由来となっているようだ。

そして下の方の画像の魚は「ハマフエフキ」である。やはりフエフキダイ属であり、沖縄ではタマンと呼ばれている。この魚は沖縄だけでなく比較的北の海も含めた西日本から南日本にかけて広い海域に生息していて各地で独自の呼び名があり、タマミ、クチビ、タマメなど他にも色々な名称がつけられている。

ハマフエフキはフエフキダイ属の中でも最大全長が90cmに達する一番の大型に成長することから、沖縄では石垣島や伊江島などで養殖が盛んにおこなわれ安定した流通が可能となっていて、全国的に見てもフエフキダイ科の中では一番一般的で馴染みのある魚だと言えるだろう。


「フーテンの寅さん魚」は、晩夏から秋口限定、旬の味

さて、このように似たような形の南方系の仲間が数多くいるメイチダイは、フエフキダイ科メイチダイ属に属し比較的暖かい海の沿岸の浅い海でに生息している。メイチダイ属は必ずしも南日本の方だけに生息しているということではなく、比較的北の海の玄界灘や対馬海峡付近などでも漁獲される。しかし、そもそも漁獲される量が非常に少なく、その味の評価が高いことから鮮度の良いものが市場に入荷すると、その価格は5,000円/kgにもなることもあるようで、基本として量販店の売場に並ぶことはなく、もっぱら料亭や高級鮨店などが先を争って購入する高級魚として位置づけられている。

メイチダイの別名は「フーテンの寅さん魚」とも呼ばれているらしい。その理由は「夏になるとふらっと現れて、秋の11月頃になるといつのまにかいなくなってしまうから」とのことだ。旧盆を過ぎる頃になると突然魚市場への入荷が多くなり、特に多くなるのは8月から9月の頃であり、それ以降は徐々に減り始め、11月頃から翌年の夏まではほとんど獲れなくなる「晩夏から秋口限定、旬の味」なのである。

そのメイチダイを三枚におろすと、透き通って抜けるような白身の下の画像が現れ、小骨付近の血合いも非常に少ないのが判別できる。

メイチダイ

そして皮を引くと、皮の下からどちらかと言えばとても地味な赤い色の紋様を確認できる。

メイチダイ

下の画像にある同じ白身のイシガキダイの皮を引いた後の赤い紋様の濃いめの色合いと比較すると、メイチダイの方はとても上品な透明感のある白身である。両方の画像を比較して見ればその違いは良く理解できるだろう。

イシガキダイ

イシガキダイ


生魚を豊富に品揃えする魅力

さて三枚におろし皮を引いたメイチダイを商品化してみた。

この時仕入れたメイチダイの価格は5,000円/kgなんて高いものではなく、1,000円/kgほどだったので原価は半身で250円位だと計算すれば良く、設定した売価はせいぜい500円強だったと記憶している。この魚の価値が分かる人がこの価格を見ればメイチダイとは信じてくれないかもしれないものになった。

メイチダイの価値を高めるには、その半身を背身と腹身で別々の商品仕上げるのが良いと考えた。先ず腹身については、腹部の厚みがなくボリューム感を出しにくいことから、薄く切って拡げ、にぎり鮨にして商品価値を出すようにした。

一方背身の方は、腹身よりも厚みがあり重量もあるので、平造り刺身にすることでボリュームのある価値感を出すことにした。

以下の画像は、背身と腹身のそれぞれの特性を活かして価値を高めるようにした商品化の例である。

メイチダイ

筆者が指導する魚売場では、こういう価値のある魚が特に高い売価ではなく一般の人でも普通に買える価格で並んでいる店がいくつかある。そういう店は大都会に位置する店ではなくて地方の店に多いのだが、地方だからこそ出来るとも言えるのかもしれない。

しかし確かにそうだとしても、今の時代はその気になれば仮に都会の店であっても、ネットによる配送や集荷の手段が色々出てきており、これらの方法を使って様々な種類の魚を全国からどんどん集めることができるようになってきている。

今時全国どこの魚売場に行っても、メイチダイのようなちょっと珍しい魚に出会えるかもしれないという期待を抱かせる魅力を放っている店は、本当に数少なくなってしまったと感じるものがある。どこも同じような魚が似たような価格で売られていて、筆者のような魚のことが多少とも分かる人間を「ホーッ、なかなかやるじゃないか・・・」と面白がらせるような魚売場はどんどん影を潜めてしまっていて寂しい限りだ。

魚売場だけでなくどんな売場にも共通することだと思うのだが、やはり繁盛する店とそうでない店には明らかな違いがあり、その一つには「品揃えの魅力」があるかどうかは大きな違いとして挙げられると考える。魚売場で言えば、生魚の品揃えの魅力は大きな存在感があり、お客様は買うか買わないかは別として「生魚の品揃えが豊富であればその店を高く評価し、貧相であれば評価しない」のである。

生魚の品揃えが豊富であれば、それはそのまま生魚を使った切身、刺身、鮨へと展開する波及効果があり、その結果生魚の品揃えの乏しい魚売場とは明らかな違いを打ち出すことが出来るようになり、それがそのまま魚売場全体の魅力へとつながっていくのである。

昨今のスーパーの魚売場は、人件費コストの低いパートレベルの人材が誰でも出来るような仕組みを作ろうとして、効率化、合理化、省力化、センター化などを無理やり押し進めてきた結果、魚の技術や知識に長けたベテラン技術者が少なくなってしまった実態がある。魚に詳しく腕もある水産担当者が少なくなってしまったことが、魚売場で生魚の品揃えの魅力を打ち出せない遠因にもなっているようである。

筆者としては、「フーテンの寅さん魚」が年間の中で9月前後2〜3ヶ月のうちに何度かは品揃えされている店であってほしいという願いがある。筆者と同じような思いを抱くお客様に「あの店に行けばもしかするとメイチダイが並んでいるかもしれない」と期待されるようになれば、その店の評価は間違いないものになるであろう。

もしかして、あなたの店は「売れそうなものを、売れそうな価格で、売れるだけ売る」ようなことになっていないだろうか。そんな守りの姿勢が見えるようになると、目に見えない形でいつの間にか少しずつ坂を転げ落ちるように売上は下がっていくことになるのである。

今こそ生魚に注目しよう・・・、とは言っても9月になったら「今年こそ生サンマを売ろう」というレベルの話ではない。最近の情報によると、今年のサンマ漁はここ何年か続いた極度の不漁から抜け出せそうなので、水産担当者は今年こそと手ぐすね引いて構えているかもしれない。

しかしこれまで記してきたように、筆者が言いたいのは9月になってそういう誰でも同じようなことを考えているような当たり前ことに目を向けることではない。今月号で取り上げたメイチダイのような「旬だけどマイナーな魚の販売に努力をする姿勢」こそ大事なことなのである。それが魚売場の差別化である。


水産コンサルタント樋口知康が月に一度更新してきたこのホームページへの

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更新日時 平成30年 8月 1日