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平成21年 5月号
ニザダイ平造り
(三の字のコスパ盛り)
赤い地肌の紋様が、ひと際鮮やかな刺身は、ニザダイを盛り付けたものである。
身は透明感があり、赤い色の紋様との際立ったコントラストは、他の魚ではなかなか見られない特徴である。この魚は皮が硬くて厚く、鱗らしいものはないが、表面は非常に小さな突起でザラザラとしている。
尾ビレ近くの細く括れた付近には、大きな黒い斑点と鋭い突起がある。
少し危険な尖った突起の部分に注意しながら、その丈夫な皮を取ると現れるのが、透明感のある身質と鮮やかな赤い紋様である。
解体の際に特徴的だと感じたのは、腹の中の豊富な内臓脂肪だった。4月という春の季節に、まるで丸々太った冬場の養殖鯛の腹の中のように、タップリと脂肪が貯められていたのである。そして、脂肪と共に胃袋はパンパンに膨れ、活発な食欲を想像されられる状態であった。
胃の中の内容物は明確に判別出来るものではなかったが、単なる小魚などではなく、石灰質のものがあって、特異な食性を推測させられるものがあった。
そして、そのような特異な食性から派生する臭いからなのか、一般的に、その味は「磯臭い」と言われ、この魚を好んで食べる人は少ないようだ。
しかし、筆者が「締まりの鮮度レベル」のこの魚を食してみた結果、「決してそんなことはない」と表現出来るものだった。もしかするとほとんどの人は、実のところ1度も食べたことがなく、周囲が「不味い、不味い・・・」と言うから、勝手にそうなのかと信じ込んで、食べるのを避けている「食わず嫌い」の人が多いのではないだろうか。
そんな風評があるものだから、市場で取り扱いをされる際の相場は非常に低く、写真の刺身の原価は一盛りで、100円以下にしかならなかった。釣りにおいても「外道(対象外漁獲物)」として扱われるようで、釣り人からも好まれてはいないとのことだ。 ニザダイは、北海道を除いた日本列島の海岸の至る所に棲息し、特に南日本から南西諸島の方に多い。
スズキ目ニザダイ科ニザダイ属という本種の魚であり、近縁には、昨年4月号で下の写真「テングハギモドキ」を紹介したけれども、この魚もニザダイ科の一種である。
外観上からの「チョット見」は、ニザダイにそっくりの魚だが、食べる時の「味」や身質という点では、全く別物である。
そして、下の写真は同じニザダイ科の「テングハギ」である。
こちらは頭に角を持っているが、テングハギという名は、この角を「天狗の鼻」に見立てたのであろう。
これらの3魚種はニザダイ科ということで、姿形は似た者同士ということになるが、それぞれがそれなりに特徴を出している。
いづれもマイナーであり、持て囃される存在ではないが、頭から外道扱いは考えものではないか・・・。
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