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平成22年12月号 No.84


アオリイカ鳴門造り

aoriika


イカ類の中では「美味しさ」という点で、最高の地位を与えられるのが、このアオリイカであり、その味は「甘いほどの旨味」を感じることが出来る。

そのアオリイカに、海苔を貼り付け、マグロを巻いて商品化したのが、この「鳴門造り」という刺身である。

こうすると、更に海苔の風味が加わり、マグロの旨味がミックスされ、まさに「絶品の味わい」となる。


アオリイカは透き通るような透明感が特徴で、水揚げされた直後は、全身が水のように透き通っているので、別名「水イカ」とも呼ばれている。

 aoriika

 

ちなみにアオリイカの名称の由来は、その特徴となっている大きなヒレを、大きく煽るようにして泳ぐからだと言われている。

いっぽう、このアオリイカを沖縄地方では「シロイカ」と呼んでいるが、このような「白」がつく名前になった理由というのは、時間が経つと下の写真のように全体が白く変身していくからのようである。

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更に時間が経過すると、以下の写真のようになる。

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アオリイカというのは、一般的に夏が旬と思われているようだが、冬場になると暖かい南へ移動するようで、旬というのは「繁殖の産卵前で魚体が充実している時」という前提でいくと、北の常識は必ずしも南の常識ならず、南の方では、アオリイカの旬は夏ではなく「冬」となるのだ。

それは何故かと言えば、アオリイカの寿命は僅か「1年限り」でありながら、驚くことに繁殖行動は、その内の「半年」もの間続くということで、北においても、移動した南においても、実は人間と同じように「いつも旬」の繁殖期のようなのだ。


僅か1年しかない短い一生のアオリイカは、刺身にすると甘さを感じるほど最高の旨味がある。

ところが、日本の南に位置する南西諸島や沖縄では、不思議なことに、これを普通は「刺身にしない」のである。

どういう食べ方をするかと言うと、イカ墨を使った料理に使うのが普通で、イカ墨ジューシーやイカ墨汁などの、イカ墨料理に使われる。

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イカ墨汁の例

紋甲イカ類のコブシメなどのイカ墨は、アオリイカと比べるとはるかに大きいので、この方が割安で使い勝手が良いのではないかと思うのだが、やはり「味が違う」ようで、アオリイカのイカ墨が断然好まれるようなのだ。


このような食習慣の違いは、ある意味でカルチャーショックのようなもので、それを知った時は「所が変ればその食べ方も随分変るものだ」という感想だった。

しかし、それにしてもアオリイカを刺身にしないというのは、あまりに「もったいない」のではないかと思った。

巻頭の「鳴門造り」は、アオリイカの刺身として絶対お勧めの食べ方なのだが、実はその地方の人達は、刺身での色んな食べ方を、あまりよく「知らない」のではないか・・・、という素朴な疑問を持ったのである。

「白イカはイカ墨料理で食べるもの」という思い込みによって、アオリイカを刺身にするという発想につながらないのではないか。


アオリイカを刺身で食べる美味しい楽しみ方には、鳴門造りの他にも、以下のようなものもある。

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そぎ造り           糸造り

 

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   細造り                松毬造り   

 

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 花造り               耳の和え造り


南西諸島や沖縄地方では、なぜアオリイカを刺身で食べないのか。

それは大量に安価で手に入るソデイカ(セーイカ)というイカが、安価でボリュームある故に、アオリイカの刺身の出番を摘んでいる、ということが推測出来る。

なにしろ、ソデイカはアオリイカと同じく1年の寿命なのに、その魚体は10kgから20kgにもなる成長スピードがあるので、まさに大衆的な価格でイカの刺身市場を席巻しているのである。


イカの刺身といえば「セーイカの刺身」というのでは、イカの本当の美味しさを味わうことが出来ない。

アオリイカの他にも、もっと大衆的なレベルのイカ類として、スルメイカ、ヤリイカ(剣先イカ)、紋甲イカなど、数々のイカの親戚はあるけれども、何と言ってもアオリイカは、その美味しさという点で、最高位と言って良いはずであり、これを刺身で食べようとしないのは「もったいない」のではないだろうか。


イカについて取り上げるのは、スルメイカの湯霜造り(平成19年3月号)の時以来である。

アオリイカのイカ墨料理は、とても美味しい素晴らしい料理だと認めたい。

しかし、刺身も最高に美味しい。

アオリイカを刺身でしか食べたことのない人は、是非とも「お歯黒」になって、イカ墨料理をたんとご賞味あれ。その旨さに脱帽することであろう。

ただし、翌日の朝のウンチの黒さに、決して驚かないこと・・・。

その一方、白イカとして刺身には適さないと思い込んでいる地方の人は、その思い込みは「偏見」であることを、自ら体験してほしいものだ。


  更新日時 平成22年12月1日


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