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平成19年 3月号
スルメイカの湯霜造り
これはスルメイカの刺身である。
それも皮つきであり、もちろん「薄皮」ではない。
イカのむき身と言えば、真っ白か透き通るような身、というのが常識かもしれないが、スルメイカの場合、白いが少し黄色味がかっている。
しかし、上の写真はそれらのどれでもなく「灰色の斑模様」、その理由は皮を取らずに「湯霜」しているからだ。
上の写真は「半杯分」であり、下の写真は「一杯分」なのでこれだけのボリュームになる。
スルメイカの刺身というのは「硬い身質」というイメージがあるので、皮つきとなると更に硬くなると思う人もいるだろうが、食べてみると意外に皮の硬さを感じることはなく、皮の存在によって「味わいが増す」と感じる。
ところで、あなたは「アタリメ」が好きだろうか。
酒の肴にアタリメという組み合わせを好む人は、この刺身を食べたらそんな味わいを思い出すはずである。
干したスルメイカが、何故「アタリメ」なのか知っているだろうか。
それは、スルメの「スル」という部分が、「金を擦る(使い果たす)」という意味を持つため、ギャンブル好きな人が縁起をかついで、「アタリメ」と言い換えたということのようである。
皮つきの湯霜でもなく、アタリメでもない、普通のスルメイカの刺身を食べたいという人は、以下の写真のような形になるが、比較的安い価格で一杯分をタップリ食べることが出来るのも、スルメイカの良さの一つであろう。
スルメイカは秋から冬に九州近海で生まれ、太平洋側では黒潮、日本海側では対馬海流に乗って、
夏には北海道まで北上し、その後また逆戻りするらしい。
三陸では北へと回遊中の上りイカと、北海道付近で餌を食べ、子孫を残すために九州近海へと帰る下りイカの、2回も漁ができるということだ。
つまり、今の時期はまだ九州近海から対馬沖にかけて比較的多く漁獲され、夏の頃には「真イカ」として、北海道近海が賑わうのである。
スルメイカに関しては多くの情報があふれており、ここで似たようなものを繰り返しても面白くないはずだから、スルメイカの湯霜造りを紹介したメリットを最後に紹介しておこう。
それは、食べる立場からは、「皮の味わいがプラスされる」という点が挙げられるが、
逆に造って提供する側からのメリットとしては、しつこく、へばり付いて、なかなか取れないこともある、あの皮むき作業が「免除される」ことにある。
作業軽減によって味が不味くなるのであれば問題だが、そんなことはないと思うので、やってみる価値はあるのではないかとお勧めする。