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平成22年 4月号 No.76
メダイ焼き霜造り
先月とは違って、今月は「旨い」魚である。
この魚を見て「なあんだ、これか・・・」と落胆される方もいるかもしれない。
この魚は「刺身なんか出来ない魚」として、一部では蔑まれているようであるが、実はそんなにバカにされるような味ではないのである。
スズキ目イボダイ亜目イボダイ科に属する魚で、ダルマ、タルメ、メブト、アゴナシなどの別称でも呼ばれている。
漬け魚の材料として、加工筋から重宝されている魚で、一般的にもフライや照焼などで美味しい魚なのだが、あまり高くは評価されていない。
普通は刺身にして食べないのが「常識」となっている。
本紙では、イボダイ科の仲間である本種のイボダイを、平成17年10月号で「シスの背越し」として紹介している。
この時も、普通の感覚でのイボダイは常識的に刺身としては食べないけれども、飛びっきり新鮮なイボダイは、骨が柔らかく、鱗らしいものはほとんどないことを活用して、「背越し」にして食べると美味しいことを紹介した。
やはり、このメダイも似たようなもので、鱗は目立たないし、骨も比較的柔らかい。
イボダイがクラゲなどを好んで食べるように、メダイも同じようなものを食べるのかもしれないが、柔らかいのは骨だけでなく、身も柔らかいので、これも刺身が敬遠されている一つの原因でようなのだ。
しかし、刺身敬遠の理由はそれだけではない。
更にまた、下の写真の事実も刺身が敬遠されてきた理由のひとつのようである。
皮を除去した後の上の写真を良く見ると分かるのだが、黒い斑状のものが表面に残っているのが確認出来ると思う。
滓のような黒いものが、皮をとった跡の身の表面に残りがちなのである。
これは上手下手というよりも、身質の問題であり、意識的に身を厚く皮を引くようにしない限り、誰がやっても似たような結果となる。
これをこのまま刺身にすると、下の写真のようになってしまう。
半身で二つ、平造りの刺身にしたのだが、
黒い滓のようなものが表面に残ったままであり、やはり見た目に限界があることから、その価値感としてはもう一つになってしまう。
これでは刺身の造り手もメダイの刺身を造ろうという気にもならないはずである。
そこで考え出したのが、巻頭写真の「焼霜」である。
氷の上で皮目をバーナーで焼き入れる。
すると、下のようにコンガリと表面が香ばしく焼ける。
これを背と腹に分けて、表面に浅く飾り包丁を入れる。
そして出来上がったのが下の二つだ。
これで、皮のない刺身のあの見かけの悪い状態からは脱すことが出来た。
元々は1尾500g程度のメダイだから、原価は1尾300円前後である。
資材費込みの商品原価は、一つ100円から130円程と見れば充分だろう。
価格的には非常に魅力ある存在なのだから、後は味の問題だけである。
これは、食べてみないと「美味しいかどうか判断は出来ない」に決まっている。
どうか頭から偏見で判断するのではなく、率直に味わって欲しい。
しかし、刺身はコリコリプリプリしていないとダメという人は止めておいた方が良い。
元々メダイにそんなことを求めても無理なのである。
魚にも色んな味があることを知るべきである。
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