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平成21年 6月号
赤カマス焼き霜造り
このところ赤カマスの水揚げが順調のようである。
この時期に、こなれた価格となっている赤カマスを、何とかモノに出来ないものかと考えてみた。
カマスについては、弊紙の平成19年2月号で、スズキ目サバ亜目クロタチカマス科ナガタチカマス属ナガタチカマス、別名イガーと呼ばれているカマスの仲間を紹介したが、
写真のこのカマスは本カマスとも呼ばれている、スズキ目サバ亜目カマス科カマス属の赤カマスである。
ほぼ見分けがつかないくらい似た魚に、青カマスと呼ばれるヤマトカマスがいるが、これはあまり大きくならず、名前の通り赤さがなく青っぽいので見分けがつく。
この赤カマスの旬は「秋」と思われていることが多いようだが、腹を開けてみると、5月中頃の時点で既に腹の中は卵巣と性巣が随分成長しており、とても旬は秋なんて言うようなものではなく、もうそろそろ「産卵が近づいている」という状態であった。
この魚を美味しく食べるために「秋まで待つ」必要はなく、秋になったら産卵後の虚弱体質になっていると考えられる。
卵巣の成長を確認する限りにおいて赤カマスの旬は、一般的に言われている「秋」などではなく、「初夏」なのではないのか。
たぶん赤カマスは今が一番美味しい時期なのである。
だが、カマスの身質の特徴としては「水っぽさ」があり、基本的に刺身などにはしない魚として知られている。
このため水っぽさを抜いた「干物」が、その美味しい食べ方の代表なのだ。
干物にする前の一塩をした「頭付き背開き」
一塩をしていない「頭無し腹開き」
しかし、カマスは本当に刺身には出来ないのか。いや、刺身に出来る。
実は刺身にすると最高に美味しいのだ。
水分の多い魚を刺身にするための常道として、このように「紙塩」をして水分を抜くつもりだったが、上の写真は失敗。
塩が多過ぎたようなのだ。
水分はよく抜けたが、少し塩辛くなり過ぎてしまった。
そこで今度は、紙塩をせずに直接ふり塩をしてみた。
するとこの写真ように、30分もしない内に表面に汗をかき始めた。
そう、浸透圧作用で水分が内部から浮き出てきたのである。
そこそこに水分が出てきたと判断した45分後に、表面の水を水道水で軽く洗い流して、直ぐに水分をふき取った。
塩辛さはないだろうと予測したのだが、残念ながらまだ塩辛さは残っていた。
やはり塩辛さを感じさせないためには酢締めにする必要があるのか、とも感じたのだが、やはりそうではないのだ。
酢締めにしてしまうとカマスの持つ味の良さは酢で打ち消されてしまう。
その欠点を補うのが下の写真である。
塩気を洗い流した後は水気を拭いて、氷の上に並べる
これをバーナーで焼いて、そのまま氷で冷やしたままにしておく。
焼いた時の風味を逃がさないために、これ以降は水に浸けない。
そうなのだ。性懲りもなくと言われても仕方がないが、やはりこの魚を刺身で美味しく食べようとすれば、「焼き霜造り」となるのだ。
その身に少しは塩気を感じても、それを上回る焼き霜の風味が、塩味も「旨味」に変えてくれるのである。
普通は水っぽくて刺身にはしない魚もこうやって美味しく食べられる。
とにかく「味」の点では、多くの人に非常に高い評価をいただいた。
カマスの刺身というのは、今のところあまり一般的ではないので、きっと「差別化の武器」になるはずである。
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