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平成19年 2月号
イガー薄造り
Web上にあるサイト「市場魚介類図鑑」によると、これを知っていたら、「達人級」の魚の物知りだそうである。
それによると正式な学名は、スズキ目サバ亜目クロタチカマス科ナガタチカマス属 ナガタチカマスということになるらしい。
実は筆者も初めてこの刺身を口にしたのだが、触ってみると脂がギトギトで、なんと脂っぽい魚なのかというのが第一印象であった。
それ以上に印象的だったのが、以下の写真である。
写真表面に斜めの傷のような線が多数入っているのが確認出来るだろうか。
これは皮の近くに張り付いている「小骨」。
ハモの骨切りの、あのやっかいな「小骨」を、更に大きくしたものと考えてよい。
この魚を刺身にするには、この小骨を避けながら冊を取らなければならない。
ハモの刺身をしたことがある人なら分かることなのだが、やっかいな小骨を避けながら刺身用の冊をとるのは、普通に皮をすく場合と違って、非常にやりにくい。
とにかくこの骨は、ハモのような「小骨」どころではなく、「中骨」のような大きさなのだ。
筆者は上記写真のように冊取りをして、薄造りをして食してみた。
自分だけではなく、周囲の人たち全員が「未知の味」ということだったので、無理矢理に「初体験の味」を勧めてみたところ、これが意外に好評だったことから、更に煮つけと唐揚げにしてみた。
その料理写真はすべて「食べてしまった」ために掲載出来ないが、これが本当に最高の美味しさだったのだ。
美味しく食べるための調理として、あの「小骨の存在」をいかに処理するかにも頭を痛めた。
そして、「よし!えいや!」とばかりに、初めてやってみたのが下の写真。
つまり、このように骨切りにしてみたのである。
しかし、これがまた大変だった。
小骨と軽く見て柳刃で切り始めたところ、あまりに力がいるので、出刃に替えてみたら、やっと包丁の重さで切りやすくなった。
だが実際のところ、半身の骨切りで一汗かくほど苦労してしまった。
その骨切りを適当な大きさに切って商品化したのが以下の写真。
煮つけと唐揚げの味はまさに最高で、刺身以上に大好評だったけれども、小骨の存在は骨切りをしても気になるレベルであった。
小骨は太いけど、非常に短く切っているから飲み込んでも良いのだが、やはりなかなかそうはいかない。
とにかく、骨があることを覚悟して食べるならば、美味しく頂ける魚であることは間違いない。
もうひとつ、この魚の特徴的な部分を紹介しよう。
この鋭い3本の歯を見ていただきたい。
海の中での「どう猛な肉食系暴れん坊」というのが想像出来るではないか。
写真の口の右端の銀色にぼけている金属の一部は、無理矢理に口をこじあけて写真を撮るため、口が閉じてしまわない道具として使った「目打ち」の頭部である。
これと比較すると鋭い歯の大きさも理解してもらえるのではないだろうか。
体長は120センチほど。
色合いは銀系が強いものと、黄金系が強いものとがあったので、こんな色もあることを知らせるために、両方とも一緒に写真に撮った。
解体した時、長い胃袋の中には全く何も入っていなかったことが原因で、腹がへこんだようになっていたのか、
それとも元々こんなにへこんだ腹なのか、それはまったく分らない。
こんなに痩せてスマートだけど、上記したように脂がのって、どんな料理も美味しかった。
美味しさは見かけだけで判断してはいけないのだ。