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平成20年 8月号
焼き霜造り盛合せ
刺身の美味しさは、常識的な観点からだけ捉えると味わうことが出来ない。
例えば「刺身というのは骨と皮がないもの」と決めつけるようなこともその一つである。
骨も美味しい刺身として、一緒に食べることが出来ることは、過去に弊紙既刊号シスの背越し(平成17年10月)でも紹介してきた。
もちろん皮も刺身の重要なアクセントになり、皮の湯霜の技法などは、鯛やイサキなどで広く知られているので、ここではあえて触れる必要もあるまい。
今回テーマとするのは、先月号に引き続き「焼き霜」についてである。
焼き霜の刺身として代表的なものに「カツオのタタキ」があり、これは現在最もポピュラーな刺身として代表的な一つとなっている。
カツオのタタキが、現在ずば抜けた名声を確保しているにもかかわらず、焼き霜の刺身がこの他にあまり出てこないのは何故なのだろう。
カツオのタタキは、比較的安価でボリュームがあり、しかも「美味しい」という評価によって、世間では人気の刺身となっているようだが、あの独特の臭いには「ついていけない」と敬遠する人も少なくはない。
カツオのタタキの独特の臭いの原因は、主に血合の臭いが起因しているようで、赤身の分量と比較してバランス的に非常に多いカツオの血合を、除去しないでも美味しく食べることの出来る方法として考えられたのが、「タタキ」だと言われている。
つまりカツオのように「大量の血合」を持っている他の魚があれば、同じような方法が準じて行われる。
筆者の知っているところでは、ハガツオ、シビ、ヨコワなどであり、これらはほぼカツオと同じような扱いを受けているので、私の言う「焼き霜の別種」とは言えないのだ。
今回の焼き霜造り盛合せは、血合も少なく特に焼き霜のお造りにしなくても、充分に美味しく食べられる「白身の魚」を焼き霜にしているのが味噌である。
白身の魚の皮を普通にとって、これを刺身にするのであれば、それはごく一般的なことであり、殊更話題にすることでもない。
しかし「皮を除去せず」皮の表面を焼くことで、一種独特の風味を持つ刺身が味わえるようになるのである。
皮が内包する旨味成分などと共に、その風味を楽しむことが出来る。
風味をしっかりと味わうためには、よく何処でもやっている「焼き霜にした魚」を氷水に入れて冷やす、という方法を「やらない」ことが大事である。
氷水の中に入れるのではなく、皮目を下に向けて砕氷の上で冷やすと、風味が水に流されることはないのだ。
この写真のように、単一の魚種でも焼き霜の刺身を味わうことも出来るが、他の魚も同じ焼き霜で盛り合わせてみると、味の違いがあって面白いのではないだろうか。
ちなみに、写真の赤い皮はアカマツ、黒い皮はホタである。
ともにアッサリ系の味であるが、これが同じ魚かと思うほどの味になった。