ようこそ Fish Food Times  

The Fish Food Retail Net

The Fish Food Laboratory Inc.


平成23年 9月号 No.93



生さんまの炙りにぎり鮨

今年のサンマは難しい。

例年と違うのは、あの「3.11」で東北地方の港や魚製品の工場などが、壊滅的な被害を受け、冷凍や塩サンマなど製造の見通しが不透明だからである。


今年のサンマ漁獲状況はというと、8月後半迄の時点では、昨年より出足は良いが一昨年よりは悪い。

以下は昨年の幣紙9月号に掲載したグラフである。昨年は一昨年と比較して、サンマの水揚げは極端に悪く、相場も高めだった。

2010.8.sannma shohichi

そして、今年のサンマの水揚げはどういう状況になっているかというと、

今年は根室への水揚げは非常に少なく、その分花咲に集中しているので、釧路・根室と分けず、北海道を一括のデータとした。これは今後東北全体の水揚げ推移を見守り、比較していく目的があるからだ。


いっぽう、産地ではなく消費地の代表である東京と大阪の状況は、8月31日までは以下のグラフのような状況である。

以上のように、単純にグラフを比較すると今年のサンマ水揚げ状況は「昨年と比較すると比較的良い」というのが多少理解できると思う。しかし、8月中はサンマの主漁場が東経160度以東と遠かったため、港に持ち帰って水揚げするには多少日数がかかっていて、生鮮用の生さんまとして販売するには必ずしも良い環境ではないようだ。

宮城県水産技術総合センターが8月4日に発表した、「サンマ長期漁海況予報」では、下の図のように今後の予報が示されている。

今後どのようになるのか、まだ見通しは難しいが、8月の1ヶ月間を、一昨年の3年前まで遡って比較すると、9月以降どのように推移していくのか多少は推測出来なくもない。

ちなみに上のグラフは消費地の代表として東京を選び、3年間のサンマ入荷量と相場を比較したものだ。8月31日までの中身をよく比較して分析してみると、「昨年より出足は良いが一昨年よりは悪い」というのが理解できると思う。

昨年はサンマの水揚げが少な過ぎて、相場は売値頃から外れていたことから、とてもサンマが売り易い環境とは言えなかった。しかし今年は8月後半の調子でこのまま水揚げが増えていけば、昨年とは違って「サンマの販売には良い環境が期待できる」とも言える。そういう意味では、今年の場合チャンスだと捉えることも出来るが、やはり難しいのは震災による甚大な影響を受けた東北のサンマ関連企業の動向だ。

サンマ関連商品の一大産業集積地である東北三陸海岸地方が、この秋にどれだけ操業を回復できる状態なのか全く想像の域を超えている。冷凍や塩漬けに留まらず、サンマの様々な派生商品を製造するために、獲れたサンマを工場へと向かわせていくことが出来ないとすれば、大半はそのまま冷凍保管するしかないことになる。

ところが一度に大量に獲れるサンマを、鮮度の良いまま冷凍をする能力がどれだけあるのであろう。ご存じのようにサンマは「足が早い」ので、鮮度劣化が急速に進む。冷凍するのをモタモタとやっていたのでは商品にならない。鮮度の良いサンマを前提とした商品をつくるには時間との勝負でもある。短時間に大量のサンマを処理する能力のある設備を持った工場が、東北及びそれ以外の地にどれだけあるのか・・・

現時点で処理能力の限界という側面を考えると、否応なく生鮮のままで消費する「生サンマ」の流通に向かわざるを得ない、とするとその結果として、特に消費地市場の需要と供給のバランスから、漁獲高の実態以上に相場は弱含みの傾向を辿ることもあるかもしれない。

昨年の2010年はサンマの不漁により「無いもの高」で販売不振となった。2011年の場合は、8月末の段階では昨年のような不漁にはなりそうもないが、2009年ほど大漁となるかどうかはまだ明確な見通しは難しい。しかしサンマ漁が2009年ほど大量にまとまらなくても、相場は一昨年に近い展開となる可能性もあるのではないだろうか。

もう一つ相場の不安定要因として、輸入サンマの存在が挙げられる。例年は全国で7万トンから8万トンの冷凍サンマが在庫保管されていたのだが、昨年はサンマが不漁だったためにその半分ほどの4万トン強の在庫しかなかった。そこへ東北地方の倉庫に保管されていたサンマが津波で2万トンほど流出した。そこで政府は通常の輸入枠とは別に昨年の輸入実績の3.6倍の追加輸入枠を設定。この結果、今年は1月から7月までの輸入実績は既に3,688トンに達しており、台湾や韓国からの輸入量は前年同期の320倍に達したということだ。このような事情から冷凍サンマの卸価格は急落しており、以前は250円/s当たりしていたものが、200円/sほどに下がっているようだ。

昔はサンマといえば「塩サンマ」が常識だった時代があったけれども、近年は次第に「生サンマ」での消費が全国的に増加しつつあり、今年の場合はその傾向に拍車をかけることになるかもしれない。それは、最近の生サンマ商品が流通や保管方法の科学的進歩によって、南の沖縄でも刺身で食べるのが普通の姿として可能になっており、もちろんサンマの鮨も同様に人気度を増している。

巻頭写真の「生サンマ炙りにぎり」について、特に説明の必要もないだろう。今年は販売チャンスとなり得る生サンマを売るためにも、付加価値を高めた商品アイテムの一つとしてとり組んでみてはいかがだろう。


 更新日時 平成23年 9月 1日


ご意見やご連絡はこちらまで info@fish food times


その他、過去に掲載した商品化例


The Fish Food Retail Net

The Fish Food Laboratory Inc.

(有)全日本調理指導研究所


<home>