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平成22年 8月号 No.80
シロサバフグ
フライ用
これは今の時期に魚売場であまり見かけることがない、シロサバフグのフライ用商品である。
シロサバフグはフグの仲間としては毒がなく、地方によっては、カナトフグ、キンフグ、ギンフグといった名称でも呼ばれているが、店頭でこの姿を見ることはほとんどなくなってしまった。
その原因は、毒のないシロサバフグであっても姿のまま仕入れるためには、原則として各都道府県のフグ取り扱い免許をもっている人が、その店に所属していることが必要となっているからである。
シロサバフグには毒がないのだが、以前クロサバフグによる毒サバフグ事件が発生して以降、サバフグを小売店が扱う時は「むき身」が基本となったからである。
サバフグのなかでも「クロサバフグ」は、フグ毒として名高いテトロドトキシンが肝臓や卵巣だけでなく、筋肉にもあることから、取り扱いに気をつけなければならないのだが、その見分け方としての特徴は、尾ビレの先端が下の写真のように白くなっているということだ。
また、尾ビレが二重に湾曲していることや、背中のトゲが背ビレまであることなども毒サバフグの特徴とのことだ。
フグというのは「冬食べるもの」という常識があるかもしれないが、例えば、このシロサバフグは例年8月頃から、秋にかけての時期に水揚げが多くなり、価格もこなれたものになる。
しかし、冬場の鍋用としてのニーズは高いが、この時期にフライ用で食べるという発想は少ないことから相場も低迷するようである。
大漁で価格が安いとなると、それらは専ら加工原料として冷凍に回り、加工メーカーの儲けへとつながっていくのが落ち着く先だ。
でもそれでは、冬場の鍋シーズンは高くなるのが、せっかくこの時期は安いのに、これを活用しないというのはもったいない話ではないか。
最近は毒サバフグ事件以来、丸の姿のままの原魚での流通がほとんど行われなくなり、下の写真のような、商品化するための簡単なおろし方である、通称「ブリムキ法」を知っている人も少なくなっているようである。
この方法は慣れると本当に簡単で、頭部の後ろの背骨まで、バツ印に浅く切り込みを入れ、この切り込みを境にして、胴体部分の背中を下に向けて「くの字」に折り曲げ、背骨が折れたら、そのまま頭部を左へ引っ張って、胴体部分を切り離すと、まさに一瞬にして上の写真のようになるのである。
写真の内蔵部分にある、クリーム色の大きな肝臓は栄養の塊であり、シロサバフグは毒もないので食べることが出来ることから、煮たり揚げたりすると最高に美味しいのだが、各県の条例などで販売自粛が求められているので、胴体以外の部位は捨てざるを得ないのは残念なことである。
むき身となったシロサバフグは三枚におろすのだが、身が柔らかく、骨もあまり硬い方ではないので、大名おろしの要領で一気におろした方が簡単で楽である。
三枚におろした身は、出来るだけ水分を抜くために、
水切りシートなどに上下を挟んで暫く時間を置く方が良い。
これは三枚おろしの身を水切りの目的で紙のシートの上に並べたものであり、もちろん鮮度の良いものは刺身も出来る。
しかし、シロサバフグは水切りをしただけでは水っぽく、刺身をするには紙塩などを行って更なる水切りをした方が良いようだ。
次に行うのは「観音開き」である。
「フグの唐揚げ」にする場合は、このように開く必要はなく、三枚におろす必要もない。
この工程は、あくまで「フライ用」の商品化であり、そのアピールポイントは「骨なし皮なし」なのだ。
魚を求める消費者ニーズの一つに「骨なし皮なし」というのがあるが、シロサバフグのフライというのは、身質が水々しいこともあって、料理した時にジューシーさが残ってなかなか良い味になる。
ただしシロサバフグのむき身を冷凍にすると、身の色が黒ずんでしまい、とても食欲の湧く色ではなくなってしまうのでお勧め出来ない。
鮮度の良い生のシロサバフグをフライで賞味して欲しいものである。
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