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平成21年 8月号
ウツボ薄造り
7月というのはウナギだけではなく、ハモもよく食べる機会の多い季節であり、この時期はこのような長ものが注目される時期でもある。
そして、今月は同じように長ものの一種ウツボを取り上げてみよう。
この写真が刺身の元の姿である。
体重はでっかい約8kg。
まともにまな板に乗せたのでは写真を撮れないくらいの大きさなので曲げているが、肌目の蛇のような模様や、その青い色をした眼光、そしてその目と比較して特に大きい口の大きさ、長さの割に太い胴のズシリとした重々しさなど、その見た目は、やはり「ど迫力」があった。
先月7月度は、半夏生でタコが一つの注目株であったが、このウツボは蛸の天敵としても知られている。
ちなみに、そういう関係を見る上では、この動画も面白い。
YouTube - Gymnothorax vs Octopos(タコを捕食するウツボ)
ウツボには鰓蓋らしきものはなく、黒い部分に耳のような穴が空いており、その穴の下が鰓のような場所になっている。
写真の白い部分は、捕獲された時に出来た傷のようで、特に意味はない。
さて、ウツボの解体である。
先ずは「頭を落とす」となるのだが、ここでてこずった。簡単に包丁が入らないのだ。
切るという表現などではなく、まさに力任せに「叩き切る」ということになった。
次は腹を開く段階だが、これまた分厚い皮に覆われた腹を切り裂くのに一苦労。
そして、腹を開けるとこのウツボは子持ちであった。
産卵の時期の卵はこんなものではないのかもしれないが、魚体の大きさからすると、まだ成長途上と思われる卵巣であった。
この写真は二枚におろした後で、背と腹を分けようとしているところだが、これも「魚をおろす」というような繊細なものではなく、叩き切りながら解体するという「力勝負」だった。
背や腹を更に細くして、これを叩いてブツ切りにしていった。
これはブツ切りの商品化。
このブツ切りを「唐揚げ」にしたのが下の写真。
この唐揚げ、試食会では「大好評」だった。
事前には、煮つけ料理がメインとなると予想していたが、この唐揚げがダントツの評価だった。
特にプリプリとしたゼラチン質が何とも言えず。まさに独特の食感であった。
次は刺身である。
刺身では気をつけなければならないのが、皮膚の下の小骨だ。
上の写真の包丁の先で指し示しているのが小骨で、表面からもその存在を確認出来る。
これは小骨といっても、大きな小骨なのでとても骨切りなんかは出来ない。
刺身にする時は上の写真のように「ハモの刺身」と同じ要領で、小骨を避けるようにして、正肉を取りださなければならない。
または骨抜きで一本一本抜くしかない。
こうやって薄造りにしたのが巻頭の写真であるが、刺身はそれほど「旨い」という感激はなかった。
「フム・・・、こんなものか・・・」という印象で、特に表現するべき特徴もなかった。
ハモの刺身はとても美味しいが、ウツボの刺身はハモより格下であった。
やはりウツボは、生の刺身ではなく、あの皮下のゼラチン質が最大の特徴である。
コラーゲンがタップリと含まれている、そのプリプリ感は刺身では味わえないのだ。
これをキッチリと味わう料理は唐揚げが一番である。
ウツボというのは見ただけで恐がられる存在であり、魚屋の店頭に出る事は基本的にない。
高知や和歌山の方では名物料理となっているようだが、これは、いわゆる「未利用魚」の一つである。
こんな魚まで食べたくないと言ってしまえばそれまでだが、魚資源の枯渇という独り歩きしているような言葉は、こういう未利用魚は対象にしていないのである。
間違いなく、ウツボの唐揚げは鶏のそれより美味しいと感じた。
そんな希少な味は、ほとんど誰も食べた事がないに違いない。
皆さんも、一度ご賞味あれ。
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