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平成21年 4月号
お祝い鯛姿造り
天然鯛焼霜姿造り
4月は「お祝いの季節」である。
新入学・就職など新しい門出をお祝いする行事が、この季節全国のアチコチで繰り広げられているはずである。
昨年来、あまり歓迎出来ない不景気風が吹きすさんでおり、そんな時少しでも華やいだお祝い気分は、自分に関係なくても嬉しくなるというものである。
そこで、お祝いには「めで鯛」というわけで、豪華な姿造りをどうぞとなるのだ。
姿造りなのだから高くて当たり前、とはいかないのが今の世の中で、少しでも「買い易さ」をだすために、天然鯛を使ってみることになった。
売価は680円。
これなら、お客様もあまり躊躇なく「買える」のではないだろうか。
300gから500gまで、平均400g位ならば、値入れ率は無理のないレベルで可能なはずである。
天然鯛としているが、これは確かに天然鯛は天然鯛だけれども、姿造り写真の魚は「黄ビレ赤レンコ鯛」なのである。
黄ビレ赤レンコ鯛というのは、一般的なレンコ鯛とどう違うのか、下の写真で確認してほしい。
黄鯛(レンコ鯛)
黄ビレ赤レンコ鯛
パッと見た目には、どう違うのか分らないと思う。
しかしよく見てみると、違いが見えてくるのだ。
その一つはその名前の通り「黄鯛と黄ビレ」である。
黄鯛は「ヒレが赤くて、肌が黄色っぽく」
黄ビレ赤レンコは「ヒレが黄色くて、肌が赤っぽい」
というように、対照的な特徴を備えているのが理解出来るだろう。
たぶん100人中99人はこの違いを確認することは出来ないと思う。
その身質の違いはと言うと、黄鯛より赤レンコの方が、水っぽさは抑えられ、あまり柔らかくもなく、身はしっかりしている。
どちらかと言えば、赤レンコの方が刺身に向いているようだ。
魚売場では、黄鯛(レンコ鯛)の刺身を見かけることは少ない。
一般的に「レンコ鯛は刺身には向かない魚」と言われているが、それは何故かと言うと、身の中に比較的多くの水分が含まれていて、その食感が少しビチャッとしたものがあるので敬遠されるからである。
だからその特徴を活かした料理用途としては、塩焼きが1番向いていると言われている。
それは、焼いた後に適度な水分を含んでいて、あまりパサつかず、シットリとした味わいがあるからである。
同じように、身質の水っぽさからどんなに鮮度が良くても、刺身にはなかなかしてもらえない魚としては、甘鯛、糸ヨリ、カマスなどの魚種が挙げられる。
しかし、これらの魚は甘鯛をその筆頭として、味の良さでは、数ある魚の中でも比較的上位に位置している。
美味しいという評価の魚を刺身にしないのは、もったいない話なのだ。
そこである工夫をして刺身にしたのが、巻頭の写真である。
ある工夫とは何か。
それは「紙塩」と「焼き霜」である。
三枚におろしたレンコ鯛
「紙塩」
三枚におろしたレンコ鯛を、皮すきをせずにキッチンペーパーの上に並べ、
更にレンコ鯛の上からキッチンペーパーを被せる。
そして、キッチンペーパーの上に塩を振る。
これを「紙塩」と言う。
塩の浸透圧作用で、レンコ鯛の水分が紙の方へ滲んでくる。
処理時間1時間ほどで、レンコ鯛の身はカチッとしてくる。
つまり水分が多少抜けて、身の締まりが良くなったのである。
こうなればしめたもので、刺身も切りやすい固さになる。
これで「OK」なのだが、これにもう一つ手を加えると最高になるのだ。
それが「焼き霜」である。
水分が少し抜けて身が締まったレンコ鯛の皮目に焼き目を入れると、刺身を口にした時、皮の焦げ目の風味がホワーッと口の中に広まることになる。
この焼き霜の風味というのをしっかり味わうためには、実はチョットしたコツがあるのだが、
ここでそこまで言ってしまうのは止めにしておこう。
何もかも言ってしまうと「奥ゆかしさ?」がなくなるではないか・・・。毎月このサイトを訪問している勉強熱心な人で、多少とも「やってみよう」というチャレンジ精神のある人ならば、自分でそれなりに工夫を加えてみる位のことはするはずだからである。
天然鯛の焼き霜姿造りというのは、レンコ鯛に限らず、春が旬となる「天然小鯛」でももちろん使える。
レンコ鯛とはまた違った味わいとなるが、たぶん、こちらの方が時期的な意味では安く手に入るはずだ。
面倒臭がらずに、手頃な価格の「祝い鯛」を実現してみてほしい。