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The Fish Food Retail Net
平成20年12月号
生カキのカルパッチョ
今年もいよいよカキの季節がやって来た。
冬は生ガキを生で食べるのが最高の楽しみという人もいると思うが、ここ数年、ノロウィルスやA型肝炎の原因としてもカキは数多く取り上げられ、言わばその風評被害によって、カキの生産業界は色々と難しい局面にも晒されているようである。
でも、やはり生で食するカキの味は格別なのである。
あの、ツルッとした食感は何にも替え難い独特のものなのだ。
生の食べ方としては、一般的に「酢ガキ」というのが多いと思われるが、上記写真のように洋風のカルパッチョにしてみると、これが美味しいのだ。
カルパッチョというイタリア料理は本来、赤い牛ヒレ肉を薄切りにして、白っぽいパルメザンチーズを降って、それにオリーブオイルをかけた料理のことで、その料理が赤と白を基調にした画風が特徴の、イタリアの画家カルパッチョの作品をイメージさせることから、その画家の名前を拝借したものらしい。
もちろん生カキに赤い色はないが、カルパッチョと名乗る所以は、酢ガキの酢の替わりにバルサミコを使い、更にオリーブオイルも使えば、カルパッチョになるという訳である。
生カキは殻があると風格がでる。
アワビもサザエも殻なしでは様にならないのに、生カキは殻なしでも良い訳はないのである。
殻つきでザルに盛ればこれだけの迫力がでるのである。
水が入ったパックに入れられて水膨れしているかもしれない裸のカキより、
この方がずっと料理に相応しい格好をしているではないか。
もっと、殻つきカキに注視して欲しいものだ。
ところで、皆さんは「良いカキと悪いカキ」がお分りだろうか。
下の写真を見れば一目瞭然である。
もちろん、上の位置にあるのが上物である。
「白く、大きく、丸々としたもの」が良いのだ。
カキの生産業者は、これを「特上、上、並」の3種類ほどに選別をして、特上と上は自社ブランド、並はノーブランドの無印にして、いわゆる生産をしないで寄せ集めたカキで商品を作る、パッカーと呼ばれる会社に卸しをしているのである。
例えばこれは、創業102年を誇る広島県有数のカキ生産業者である、米田海産という会社が選別をした後に、一級品だけを詰めた5kg缶である。
米田海産は広島県でトップ級の生産量を誇りながらも、選別は敢えて熟練した人間の目に頼っている。
そして写真はないけれども、二級品は一斗缶に名無しの権兵衛の形で、どこかのパッカーへ送られ、何がしかのブランド品となるようである。
生産をしないで各地からカキを寄せ集めて商品を作るということは、そんな少し危うく脆い構造を持っているということを忘れてはならない。
カキ打ちをして、既にむき身になった生カキは食べるのに便利である。
しかし、便利となっている先の方には、チョットよく分らない世界があるのも確かである。
貝起しという道具さえあれば、二枚貝の蓋を開けるのは簡単である。
殻付きの生カキを見直してみてはどうだろうか。
殻付きでカキ料理をすると、究極としてこうなるのである。
この料理が、殻のないカキで成り立つだろうか。
今年の冬は、殻付きカキを売ろうではないか。