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平成20年 11月号



   フクラギ姿造り




フクラギとは北陸地方の名称であり、この大きさならば、関東でイナダ、そして関西ではハマチ、九州に行くとヤズなど、色々な名称で呼ばれているお馴染の魚「ブリの幼魚」のことなのである。

名前の呼び方が成長途上の魚体の大きさで変わる、いわゆる「出世魚」なので、どの大きさの呼び名はどうなのかと、判断するのに困るだけではなく、上記の写真のように北陸で一般的に通用する名前のフクラギが、ほんの近接した地域の関西に行くと、又違った名前で呼ばれているのである。

ちなみに北陸地方では、フクラギより小さいのを「コズクラ」と呼び、関東ではイナダ、関西ではワカシと名づけられている。フクラギより大きいのを北陸地方でガンド、関東でワラサ、関西でメジロと言う。更にそれより大きくなると、やっとブリで統一出来るようだが、その間にある「ハマチ」などは、各地域で様々な大きさを指して、比較的自由に表現しているのだ。



ブリと言えば、美味しい天然ブリの産地として全国的に有名なのが、富山県氷見の天然ブリである。11月という季節は、ブリが美味しくなるにはまだ少し時期が早過ぎるが、今の季節氷見漁港では、ブリに成長途上のフクラギがどんどん獲れているようだ。

下の写真は10月29日朝、氷見漁港の風景である。


  
 富山県氷見漁港では、フクラギ、サゴシ、カマスなどが通称「大敷」などと呼ばれている定置網で漁獲された魚が、港に次々と水揚げされている。単魚種が何十トンの単位で獲れるアジ、サバ、サンマなど「多獲性の青物」などではなく、氷見漁港ではトンにはならない少量漁獲の魚種を写真のように魚種ごとに細かく分けているのが印象的だった。

 それらの魚は、身を痛めず鮮度を保つ目的からであろう、いわゆる「冷塩水処理」をされた形で、海水入りの大きな黄色いボックスに区別されていた。ちなみに海水が入ったその黄色いボックスには、単魚種でなんと400kgもの魚が入っているということだ。

 思えば、木箱のトロ箱に15kgくらいを入れて、常温に山積みしていた時代と比較すると、まさに隔世の感がある。ブリという魚のブランドを全国に誇る漁港というのは、実はこういう努力をしていたのだった。


ところで、読者の皆さんは下の写真のどれがフクラギの兄弟なのかお分かりか?

3.5kgから4kg程度のほぼ同じ大きさで、見た目は似たような三種類の魚を、同時に並べて撮った写真である。



この写真を見て、すぐに区別がつく人はプロである。明確に区別の付かない人は、魚の知識に関してまだ未熟・・・と心得るべし。

明確に違いを知りたい人(未熟?失礼・・・)は、このページへ飛んでみてほしい。

写真の魚はすべてフクラギの仲間の「アジ科ブリ属」の養殖魚であり、これらは大きさだけでなく種類まで、これ又「紛らわしい」のである。しかし今や、刺身用食材としては欠かせない存在になっているのだ。

いっぽう、フクラギというのはすべて天然のものを指すようである。天然のために、その入荷次第で相場は非常に安くなる時もあり、商品化の方法一つで、売手にはとても「美味しい」メリットのある魚にもなる。

例えば、姿造りにしなければ、


この半身の分量で、


これだけのボリュームになるが、原価は100円から150円ほど。



切身はカマを入れると、同じ半身でこれだけの大きさになるのだ。


フクラギは、まだ成長途上故に余分な脂肪はないけれど、脂分が少ない分、アッサリとした風味が味わえる。

同じように成長途上のヒラゴ(ヒラスの子)や、ネリゴと呼ばれるカンパチの子は、フクラギとは違い春から夏場にかけてが盛漁期だが、やはり適当な脂の乗りが美味しく、サッパリと頂けるのである。

そしてこのフクラギはというと、冬を迎えるこれからが本番である。大きなブリへと大きくなる前に、しっかりと味わって欲しいものだ。



ところで、氷見漁港で美味しいものに出会ったので、これを紹介しよう。


これは、朝食の「かぶす汁」である。

かぶす汁とは、


ということのようである。

アジ、ギリサバ、カマス、チコ鯛、スルメゲソ、ワタリガニなど、ぶつ切りの魚がゴロンゴロンと味噌汁の中に入っていて、まさに豪快な味だった。骨を取り分けるのにそれなりの時間を要し、簡単に短時間で朝食を済ます訳にはいかなかった。しかし、魚の美味しさを味わう醍醐味をここぞとばかりに堪能したのだった。

即席ラーメンの味とは対局を成す「かぶす汁」は、時を急いではいけない。いわゆる「スローフード」みたいな食べ方をしなければ、その本当の味を知ることは出来ないのだ。


ここが、この「かぶす汁」を食べさせてもらえる氷見漁港魚市場食堂「海寳」の入口である。

食堂は2階にあり、この写真は1階の入口。

とにかく、魚好きには一見の価値あり。氷見漁港に行けば、魚のことをもう一つプラスして知る機会があるであろう。



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