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平成20年 6月号
ノドグロの焼き霜姿造り
筆者はこの魚の刺身を食べたのは初めての経験だった。
ほとんど底引き網で獲れたものが入荷し、よく見かけるのは、鱗が剥げて白っぽく、身の固さもそれほどでもないものであり、普段は最初から「あまり鮮度は良くない」だろうと決めつけていて、
あまり刺身で食べてみようという思いはなかった。
しかし、たまたま非常に鮮度が良いものに出会ったので、試しにこれを焼き霜の刺身で食べてみた。
すると、そのあまりの美味しさに驚いてしまったのだ。
旨味を凝縮した、品の良い脂の乗りは、まさに「白身のトロ」の味であった。
このノドグロという魚、正式にはアカムツが正しい呼び方らしいが、その他に、オオメ、メッキン、メキン、金魚、ダンジュウロウ、など多くの名前で呼ばれている。
この魚は底引き網、はえ縄、刺し網などで漁獲し、そのほとんどが底引き網のものらしい。
隠岐島周辺から対馬にいたる日本海南西海域の大陸棚はアカムツの好漁場で、8〜10月頃には中・大型のものが、冬から春にかけては小型のものが多く漁獲される。
季節を問わず脂の乗りが良いので「白身魚のトロ」と呼ばれている。
料理法としては、一般的に煮付けや焼きものだが、
上の写真のように皮の表面の部分をあぶって造る、焼き霜の刺身は皮の風味がプラスして本当に最高の味なのである。
一般的に魚は色・艶の良いものを選ぶが、アカムツの場合、釣りなどで漁獲された鱗の付き具合や色艶が良いものは、見た目と反対に脂の乗りは、もう一つのものが多いようだ。
漁師の「ノドグロは泥場のものに限る」という言葉にあるように、底びき網などの方法によって「泥場で漁獲されたアカムツ」は、鱗がはげて白っぽくなっているため、見た目には鮮度が悪く見えてしまうことが多いが、実は皮下脂肪が多いがために白っぽく見えるのであって、決して鮮度が悪いわけではない。
今回筆者は、魚体表面の鱗や色艶による見た目でもなく、更には身の締まり具合による触感でもなく、エラ蓋をこじ開けて「エラの色」で鮮度判断をした。
エラの色が鮮紅色に近い色を残していたので、刺身にいけると判断したのである。
アカムツの本籍はスズキ目スズキ亜目ホタルジャコ科アカムツ属に属し、背ビレが連続していて、赤いのが特徴である。
いっぽうムツとかクロムツと呼ばれている本ムツは、背ビレが第一と第二の二段にハッキリ分れているのが特徴で、ムツ科ムツ属に属していて仲間はなく、一科一属である。
ホタルジャコ科アカムツ属のアカムツとは親戚でも何でもないのだ。
また本ムツの旬は冬ということだが、アカムツの産卵期は8月から9月であり、一番美味しいのは産卵前に魚体が充実する5月後半から7月にかけての頃のようだ。
しかしこのノドグロに関しては、まさに一年中脂が乗っている状態なのだから、美味しい最適な時季を無理に選ぶ必要はない。
それよりも、どちらかと言えば比較的柔らかい身質であるから、写真で紹介しているように、歯応えを増すために皮をつけたまま、焼き霜など一手加える方法が、更に美味しく食べることになるようである。