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平成20年 4月号
テングハギモドキ刺身平造り
この魚は、スズキ目ニザダイ科テングハギモドキと呼ばれている。
テングハギにそっくりなので、「モドキ」という、不名誉な尾ビレをつけ加えられているようだ。
では、本物のテングハギとはどんな魚なのか・・・。
よく見ると、確かに全体の姿は似ているが、一つだけ大きく違うのは、テングハギには目の先に飛び出している角があることである。
角は成長するともっと大きくなるらしいが、この角を天狗の鼻に見立てて、日本では「テングハギ」という名前が付けられたらしい。
西洋では「ユニコーン・フィッシュ」と呼ばれ、あの一角獣に喩えられているということだ。
また沖縄では、このテングハギのことを「ちぬまん」と呼んでいるらしい。
下の写真は、沖縄県那覇市にある「ちぬまん」という名前を冠した居酒屋である。
店の屋外には、このようにテングハギそのものをイラストした大きな看板がある。
そして、店の中は観光客だけではなく、地元の人も含めて大いに賑わっている。
今月号も先月号と同じく、このテングハギモドキで皮の取り方を遊んでみた。
この魚を二枚におろすと、腹腔の奥が長く尾の方へ伸びている面白い特徴が確認出来る。
そして、二枚おろしにした骨付きの身の方を、先ずは「ハギ」という名前がつくということで、手を使って固い皮を剥ぎ(ハギ)取る方法を試してみた。
するとこのように皮の下からは、無理に強い力で引き剥がしたことが原因と思われる、
表面に繊維のようなものが残った身が表れた。
この身の表面の状態を見て「刺身に使うのは難しい」と判断した。
たぶん繊維状のものが口の中に残るだろうと思ったからである。
ということで、今度は普通に包丁で皮を取る実験をしてみた。
下の方の「下身」が包丁を使った皮すきである。
この場合は上の「上身」のような繊維状のものは残らず、これなら刺身に使えると判断した。
このように包丁を使って皮すきをした身を使って、刺身の平造りをしたのが今月号の冒頭写真である。
先月号の左巻き(鷹の羽鯛)では、鱗付きのままで皮すきをすると、どんなデメリットがあるかを伝えた。
そして今回は包丁ではなく、手を使って皮を剥ぎ取るとどうなるか、テングハギモドキを材料にして、その現象を確認した。
テングハギモドキは皮ハギ(フグ目皮ハギ科)の親戚のようなもの、と勝手に判断して「手を使う」と、こういうことになってしまう。
実は親戚ではないのだ、ということを理解してもらえたと思う。
アジの皮すきでも、手の方法と包丁によるものとの2種類があり、どちらもたいして違いはないと見ている人も多数いると思う。
ところが、上の二つの写真をよく見ていただきたい。
左は手によるもの、右は包丁の皮すきである。
アジの場合は魚体が小さいので「粗は目立たない」けれど、その表面をよく見ると手による方法は、やはり明らかに無理をした痕跡があるのを確認出来ると思う。
少しでも刺身を美しく仕上げたいのならば、あなたは迷うことなく「包丁を使うべき」なのである。
「刺身」というのは、その仕上げの美しさで売れ行きも変わる。
「切る」という以前の、工程の一つ一つを大事にすることが重要なのだ。
その工程の中でも「皮すき」は最右翼の重要工程なのだから、出来るだけ慎重に、そして丁寧に行いたいものである。