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平成20年 2月号



甘鯛皮霜造り




甘鯛のお造りを食べたことがお有りだろうか。

たぶんその経験のある人は、あまり多くないのではないだろうか。

甘鯛は刺身で食べるものではないと決めつける御仁もいらっしゃる事と思う。しかし、鮮度の良い魚は基本的にどんな魚でも(例外あり)、生の刺身で食べられるものである。



これは一番多く見かける赤甘鯛という種類で、この他に数は少ないが白甘鯛、黄甘鯛がいる。

甘鯛はご存知のように水っぽくて柔らかい身が特徴である。

だから美味しく食べるには、先ず一つの方法としてその水っぽさを抜いて旨味を凝縮することである。

例えば、一番に思い浮かぶ一般的なものは「ぐじの干物」と呼ばれている、甘鯛開きを干したものである。

基本的には一度立て塩につけて少し水分を抜いてから更に乾燥をさせる。


乾燥させて水分を抜いているので、旨味成分が凝縮し美味しさが増している。

ぐじの干物はウロコがついたままが基本であり、ウロコも焼いて香ばしさと歯触りを楽しむ。



だが刺身で食べるのには、乾燥させたのでは意味がない。ではどうすれば良いのか。

次に考えられる方法は塩で水分を抜くことだ。

浸透圧作用で水分は抜ける。

でも、塩分は残るので塩抜きをしなければならないのが面倒である。

その塩抜きをしないで済む方法もある。

それはピチットシートなどの脱水シートを使う方法だ。


ピチットシートを使えば余分な水分だけを除去できる。

塩分が残ることもないから、刺身に使えるという訳だ。

甘鯛はいくぶん水分が抜けるとネットリとした感じになるが、鱗をとった皮付きの半身を湯霜をして冊取りし、


これを平造りにしたのがトップの写真の作品である。

皮霜造りという皮にお湯をかける作業を加えているが、これは皮の美味しさを同時に味わう刺身の食べ方である。

甘鯛という名は、鯛よりも甘い味がする美味しさというのを表したもののようで、「甘い」という表現は「最高に美味である」の意味のようである。

その最高の美味しさを味わうには、その特徴となっている水分を抜きにしては語れない。

甘鯛の水分を出来るだけ残したまま本来の美味しさを味わうには、フライや唐揚げという水分を閉じこめる方法がある。

 フライ用


唐揚げ用(湯霜処理済み)



本来甘鯛というのは、日本で昔から「上品な味の高級魚」として親しまれきた魚である。

しかしこのところ資源の減少で、なかなか値頃な価格では店頭に並ばなくなってきた。

高級料亭でしか食べられないような時代にならないことを願うばかりである。

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