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平成19年 6月号
真ハタの薄造り
「高級魚」の名に相応しい、「真ハタ」
普通その辺のスーパーの魚売場で、その姿を見ることはほとんどない。
それは、店の担当者がその高額な仕入れに見合った儲けを、そのまま計算出来る自信がないので仕入れないからである。
過去に体長190cm、重さ128kgという大きさの真ハタが、平成15年4月28日に、
高知県室戸岬沖で釣り上げられたという記録が残っている。
それほど巨大になることもある「幻の魚」が、この日魚体重量4.6kgと比較的小振りながらも、ハッキリした縞模様のある「天然真ハタ」が手に入った。
その姿を紹介しよう。
ハタ科の魚の種類というのは「あまりにも紛らわしい・・・」と表現してしまうほど「似たようなもの」が多い。
30種類近くもある「ハタ、クエ、アラ」の魚達をどのように区別して良いのか、ハッキリ言って「ワカーンナーイ・・・!」なのである。
この真ハタは「スズキ目スズキ亜目ハタ科マハタ属マハタ」と区分され、非常に紛らわしいものに、
「スズキ目スズキ亜目ハタ科マハタ属マハタモドキ」というのもいる。
「もう、いい加減にせーよ!・・・」と言葉を吐きたくなるが、この区別は何かというと、横縞の中に小さな斑点が少しあるのが「真ハタ」で、マハタモドキはその斑点がないらしい。
ハタ科の親戚約30家族ほどを、一つ一つ厳密に区別する必要というのがあるのだろうか、筆者は、要するに「地方の呼び名に合わせる」のが一番と思う。
長崎で「アラ」と呼ばれているものが、関西で「クエ」になり、それが関東で「ハタ」と呼び名が変わり、果ては南西諸島にまで行けば「ネバリ」、沖縄ではミーバイと称されようと、その地方の呼び方が、つまりは「正解」なのである。
ところで、上の写真の目玉が飛び出しているのは、深海から釣り上げられて「浮袋」が膨張し、目玉や内蔵を身体の外へ押し出てしまったために生じた現象なのである。
これは、まさに天然物の「動かぬ証拠」だ。
胃袋も浮袋の膨張によって、口の方へ押し出されて反転してしまっていた。
下の写真はその反転して、中の方が外側になった写真。
元に戻した下の写真がまともな形。
写真左側の鰓(エラ)の部分がちょうど裏返しになっているのを理解出来れば、胃袋が反転していると分るはずである。
この真ハタを刺身にするにあたって、鱗取りは包丁を使う「すき引き」という方法で行った。
すき引き完了
魚に関連していても、この「すき引き」という技法を知らない人がいるに違いない。
こんな面倒くさい包丁での鱗取りの方法をやる意味があるのか、と感じるはずである。
大量販売を前提とするならば、確かに作業面では「罪悪」かもしれない。
しかし、「コケ落とし」とも別称される鱗取りの道具で、強い圧力をかけて魚の表面の鱗を取れば、鱗の下の身は相当な圧力を受ける可能性がある。
例えば甘鯛のように柔らかい魚の身を潰さない目的や、ヒラメやハタのような高級魚を薄造りにしても身が割れないようにするために、優しく鱗を取る方法として「すき引き」という方法はあるのである。
そして、すき引きにした皮は軽くボイルして刻み、下の写真のように添付すると良い。
その味は、格別そのものが旨いというわけでもないが、そのゼラチン質の食感は独特で、ポン酢と紅葉おろしとの相性が良い。
皮だけではなく、内蔵も十二分に商品として活かすことことによって、高級魚真ハタは損をしない程度のお金に替えることが出来る。
基本的に真ハタというのは、安く手に入る魚ではないので、その分「手間ひま」をかけて、お客様にその価値感を買っていただくべきだろう。