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The Fish Food Retail Net
平成19年 5月号
セミ海老の姿造り
「市場魚介類図鑑」によると、この写真のセミ海老を知っていたら、「達人級の魚の物知り」だそうである。
筆者も初めて目にして感激した。
まだ見たことがない人のために、全体像を紹介しよう。
上部
(頭部と目のバランスが愛らしいのだ)
腹部
左側面
脚を伸ばすと、これだけ広がる
これは敵の攻撃から自分を守る完全防御体制
時は4月30日。
翌日から伊勢海老及びこのセミ海老も禁漁となり、販売も禁止されるので、この日、売り切るために筆者の手によって刺身へ解体となった。
解体行程1
硬い甲羅で覆われた完全防御外側の反対の腹側の方に、死刑執行の刃を突き刺したのだが、セミ海老の場合は伊勢海老と違って、愛くるしい顔つきなので、これまで数多くの活魚を締めてきた筆者としても、何か後ろめたい気持ちにさせるものがあった。
更には、伊勢海老よりも非常にしぶとく生きていて、身体が分断されても、まだ長い間尾ビレが跳ねていたのには、解体している本人としては次の行程になかなか移れず、扱いに困ってしまった。
解体行程2
解体行程3
解体行程4
解体で苦労したのは「蛇腹」、腹部の蛇腹は伊勢海老と違って、外側の甲羅同様にとてつもなく硬く、出刃包丁の刃元で叩くようにして切り、それから料理鋏を両手で押し切るようにして、やっと切れたのである。
このセミ海老は、漁獲してきた潜りの漁師さんによると、伊勢海老が100に対して、1の割合しか存在しない希少な海老であり、取引価格も非常に高く、売価は500gもので8,000円は覚悟しなければならないらしい。
上の写真の姿造りは、600gのものを5,800円の売価をつけたので、丸のままの8,000円の売価に比較すると非常にお買得なのだが、誰がその価値を認めてくれただろうか。
(当日、値引きなく売れたという報告あり・・・)
その食味はというと、売物なのでほんの少ししか味見出来なかったが、海老特有のあの甘味が強いというわけでもなく、伊勢海老と大差はないと感じた。
読者の皆さんがこの海老を刺身で食べる機会というのは、なかなか簡単ではないと思うけれども、南の島の行く予定があれば、どこかの店で探してみてほしいものである。
間違いなく、貴重な経験となるであろう。