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平成23年 11月号 No.95-2
この魚は、ナマズ目パンガシウス科ギバチパンガシウス属バサ と呼ばれ、学名はPangasius bocourti 東南アジアでは一般的にBasaで通用するとのことだ。
ナマズ目パンガシウス科ギバチパンガシウス属のチャー と呼ばれている、学名Pangasius hypophthalmus というそっくりな魚もいるということなのだが、実は現段階で正式には写真の魚がどちらなのか、明確な判断基準はなく、端に「魚屋のオバチャンの言葉」を信じているだけというレベルなのだ。
そういうことで、以下はバサだと信じて読み進めていただくしかない。
バサはカンボジアにおいて今でも重要な食用魚とのことなのだが、ベトナムでは市中を歩き回って、そうでもないようだと感じた。
バサというのは、元々カンボジアでの呼び名らしく、ベトナムでもそう呼んでいる。メコン川に棲息していて、大きな物は250キロにもなる超大型の淡水魚とのことで、カンボジアなどでは天然ものが絶滅の危機にあるとも言われている。
ベトナムでは重要な養殖魚で、アメリカなどへの輸出産品となっているのだが、これは昔、アメリカでよくナマズが食べられているのに目をつけたベトナム人が、アメリカへ輸出することを前提として養殖を始めたのがスタートらしい。
アメリカにはナマズ目イクタルルス科イクタルルス属 アメリカナマズ channel catfish(チャネル・キャット・フィッシュ)学名 Ictalurus punctatus という食用の白身魚ではとても人気のあるナマズが流通しているけれども、アメリカ国内では、このナマズとの価格差から輸出軋轢を起こしているとのことだ。
日本では給食やお弁当屋さんの白身フライなどに使われたりしているらしく、我々は知らず知らずの内に食べさせられている可能性もある。
筆者も巻頭写真の三つの料理を実際に食べてみたのだが、クセのない白身でフワリとした食感はそれぞれがとても美味しかった。
上記したようにバサという魚を、ほんの1尾だけ見つけるのに大変な苦労をしたし、これを食べさせてくれるレストランを見つけることも出来なかった。
ところが、何とかしてこの味を知りたいと願う筆者の気持ちが通じたのか、バサを試食するための商品は、ある所で偶然にも見つけることが出来たのだった。
それは筆者が泊まったREX HOTELの前の、大きな道路を挟んだ向かい側にある、国営百貨店2階にあるTAX SUPERというスーパーの冷凍食品売場にあったのだ。
上の画像のように、他の冷凍魚と一緒に無造作な形で転がされていた。
これを早速購入し、三階のティーショップのテーブルで撮ったのが以下の写真だ。
これを見て、料理の出来上がりはだいたい想像できたのだが、どうしても試食してみたくなり、幸いにも真空袋入りの冷凍だったので、そのまま冷蔵もせず半日ほどの時間をかけて日本に持ち帰り、翌日の昼にフライ等数種の料理を作り、巻頭写真を撮ったということである。
ベトナムではこういう真空袋入りといったコストをかけた商品を、庶民は絶対に間違いなく購入しないだろうことが推測された。
何故ならば、ベトナムはまだ「日本の戦後」のような状態であり、貧困と無法のなかで、経済成長が始まっているという印象だったからだ。
なにしろ日本と比較すると、あまりにも物価が安く、100円が約25,000ドン(VND)、1ドン(VND)は0.004円、という通貨単位の使い方は計算にまごつき、帰国する直前まで苦労した。
ベトナムで何が驚いたかと言えば「交通の無法ぶり」だ。
何百万台なのか数も分からないバイクの群れが、津波のように押し寄せてくる様は、とても映像で理解できる物ではなく、実際に体験してみると「異常」な世界だった。
歩道を歩いている人がいても、これを全く無視して我先に歩道に乗り上げてくる、数え切れないバイクがうごめく姿は、交通法規などあったものではなかった。
道を渡ろうとして、横断歩道の前に立って渡ろうという仕草をしても、車もバイクも全く横断歩道を渡らせてあげようという気配はなく、スピードを緩めず、人の存在を無視して無数の車やバイクが突っ込んでくるだけだ。
道路では1日中、車のクラクションが鳴り響いて絶えることはなく、歩道には道路まで溢れるほどはみ出して駐車したバイクと車があり、歩道に少しでもスペースがあれば、椅子だけそろえた簡易食堂があり、人々は子供用椅子と言われてもおかしくない椅子に腰掛け、テーブルがあればましな方の場所で何時でも何処でも平気で麺類などを食べるのだ。
更に、隙あらばと寄ってくるあらゆる種類の物売りの多さ、道路で客待ちする無数のバイクタクシーの至る所での声かけ、シクロと呼ばれる人力自転車タクシーのしつこい勧誘など、最後には「少しは放っといてくれ・・・」と言いたくなるほど町歩きに疲れ、本当に「猥雑で容赦がなく遠慮のない環境」には辟易してしまった。
社会主義国から「ドイモイ」と呼ばれる開放政策によって経済改革したベトナムは、自由に金儲けをして良いとの言葉を、人々は間違って解釈をしているのでは、と筆者が感じてしまうような場面も多数あったことは間違いない。
今のベトナムという国は、自由主義とはどんなものなのかを体験し学びつつある、言わば「自由主義途上国」のようなものだと感じた。
発展途上国とはこの活気こそが元気の源なのかもしれないが、成熟してルールを守る大人の雰囲気の日本に帰国するとホッとするものがあった。
しかし、成熟した日本のような国での「チャンス」というのは限られているが、ベトナムのような発展途上国を見てみると、未知の魚だったバサに出会えたように、国の違いを踏まえた発想をすれば、例えば「魚の市場間格差」のような、面白いビジネスチャンスが見いだせるのかもしれない。
読者の中にビジネスチャンスを捉えて行動できる人がいるのかどうか知らないが、ベトナムはまだ「大きな可能性」を秘めていることは間違いないようである。
良い面も悪い面も色々と学ぶためにベトナムにでも出かけてみてはどうだろうか。
きっと何か得るものはあるはずである。
更新日時 平成23年11月 6日 |
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