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平成23年 8月号 No.92


本マグロのホオ肉炙り薄造り

magurohoho

 

これは普通誰でも簡単には食べられない珍味だ。

ご存じ「本マグロ」のホオ肉を炙りにした刺身である。

下の写真は本マグロであるが、まだ幼魚のヨコワと呼ばれる大きさだ。

マグロの中の高級魚である本マグロは、トロと呼ばれる脂身があるので、この部位を含めて高値で取引されるが、この脂身は何処にあるかというと、主に腹の部分に集中している。


一方下の写真は「全身トロ」のような脂身がある「養殖」本マグロだ。

この写真だけでは、その違いが判らないと思うが、約50sの重さで、養殖魚特有のズングリムックリの魚体をしている。

ついでにお見せしよう。

本マグロにとても良く似ているので、最初は簡単に違いが判らないかもしれないマグロの写真だ。

このマグロは「本マグロではない」のだが、違いが判るかな・・・?

直ぐに分かることは、天然なのでスマートでヒョロ長いことである。

そのほかにも幾つかの違いがあるが、さて何という名前のマグロか?

この解答は、

幣紙 FISH FOOD TIMES 平成20年10月号

をご覧いただきたい。その答えが記されている。


ついでに解っていることだとは思うが、マグロの知識初心者のために、

上は黄肌鮪(キハダマグロ)で、

下は眼撥鮪(メバチマグロ)である。

そして最後は鬢長鮪(ビンチョウマグロ)だ。

ビンチョウマグロに脂身はない、というのが常識だが、白っぽい身質が脂身に似ているということで「ビントロ」という言葉がある。

これは売り手側が勝手に作り出した造語である。

とても脂身とは思えないものを「売らんが為」にトロと表示している。

大トロと言える脂身は、本マグロ、南マグロには存在し、そして、メバチマグロの一部の部位にはトロと言えるものもある、というのが正確なところであろう。


天然本マグロの脂身は、腹部だけでなく背の皮に近い部分にも多少はあるし、胸ビレ下の俗称カマと呼ばれている部位にも脂身は集中している。

ところがあまり知られていないのだが、頭の部分にも脂身はあるのだ。

上の写真は元重量100キログラムに近い大きさの本マグロの頭だ。

元々遠洋の冷凍本マグロであり、バンドソーで切断して半割りにされている。

このような頭の部位は、本来魚市場とか問屋などで処理されているが、今回は自分たちでこれを解体してお金にしようというのである。


まずは頭肉を取り出す為に皮を削ぎ落とす。

ホオ肉も同じように、ホオに当たる部分の皮を包丁で削ぎ落とす。

すると、このように脂身たっぷりの部位が現れる。


ついでに目玉も取り出しておこう。

目玉の後ろのゼラチン質には、

頭の働きを良くする不飽和脂肪酸DHA(ドコサヘキサエン酸)が、高濃度でたっぷり含まれているということなので大事にしたい部位だ。


頭肉、ホオ肉、目玉を除去してしまうとこんな感じになってしまう。

ここまでやれば、もう残りは滓のようなものばかりだ。


さて、いよいよホオ肉である。

表(左)と裏から見るとこういう形と色をしている。

これを見て、美味しそうと涎を垂らす人はあまりいないのではないか。

少しグロテスクで、食欲の湧く色や形ではない。


そこで「炙り」である。

氷の上にホオ肉を置いて、バーナーで表面だけを焼き、氷で冷やす。

こうすれば、グロテスクな見た目は焼き目で隠せる。


これを薄造りにすると、こんな感じにも商品化が出来る。

チョット見は、まるでローストビーフみたいではないか。

しかし、これはローストビーフよりも間違いなく美味しいのだ。

マグロの頭が手に入ったら、マグロの「ローストビーフ?」をご賞味あれ。


 更新日時 平成23年 8月 1日

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