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平成23年 7月号 No.91
ゴマアイゴ薄造り
この刺身、沖縄では「カーエー」と呼ばれている魚で、正式名称は「ゴマアイゴ」である。
スズキ系スズキ目アイゴ亜目アイゴ科アイゴ属ゴマアイゴ(英名/orange-spotted spinefoot)
見ての通り、背ビレと尻ビレに毒のあるアイゴの仲間である。
ゴマアイゴには、シモフリアイゴ、ヒメアイゴ、ブチアイゴ、ハナアイゴ、アミアイゴなどのアイゴの仲間がいるが、沖縄ではこれらはすべてエーグヮーと総称されている。
7月の季節は、これらエーグヮー(アイゴ)の稚魚が注目されるのだ。
今年7月1日は旧暦の6月1日にあたり、毎年丁度この時期に、アイゴの稚魚が群を成して岸辺に集まってくる。
この稚魚のことを沖縄では「スク」と呼んでいて、この頃になると「今年もいよいよスクがやって来たぞ・・・」と、沖縄の本格的な夏の到来を告げる「風物詩」となっている。
下の写真は、昨年7月の沖縄のあるスーパーの店頭でのPOPだが、まさに絶好のタイミングで売込みを図っている好例である。
このポップにも表現してあるように、この時期のスクは生で食べることが出来るのがポイントで、
餌となる藻をまだ食べていない、いわゆる「餌食い」をしていない、腹がペコペコのスクを網で掬い取って漁獲し、これを生のまま酢醤油等でまるごと食べるのだ。
また、一度に大量に獲れるスクは生で食べてしまうには多過ぎるため、これをこのまま塩漬けにして、何日間かに分けて食べる保存食にする。
これは「スクガラス」と呼ばれ、言わば沖縄版季節の「塩辛」だ。
このように沖縄でアイゴの仲間は、稚魚の時から好んで食べられているが、もちろん大きくなってからも良く食べられている。
特にカーエーと呼ばれるゴマアイゴは沖縄で高級魚の一つでもあり、このため活魚は魚市場で下の写真のように活魚水槽に入れられて、他の高級魚と一緒に競られるのを待っているのを見かけることもある。
カーエーは、釣り人にとっても磯釣りなどを楽しめる大人気の魚で、近くの漁港や波止に多く棲息していることや、40aから50aもの大きさになり、釣りの醍醐味も味わえることから、手軽に狙えるウキ釣りの人気対象魚となっている。
上の写真はそんな釣人の一人が魚市場に持ち込んだものらしく、この日魚市場ではそのカーエーの価格は2,000円/kgを超えたので、持ち込んだ釣人は、そこそこの小遣い稼ぎにはなったようだ。
そのカーエーを仕入れて商品化したのが巻頭の写真なのだが、解体の手始めとして、先ずは毒のある背ビレと尻ビレを除去。
次に頭を切り落とし、
三枚に下ろすと、縦に狭くて大きな腹腔が明らかになる。
この腹腔が曲者で、エーグヮーの欠点となるのはこの腹腔の臭いだ。
海藻などの餌をタップリ食ったエーグヮーを切る羽目になると、そこら中に腹腔から嫌な臭いをまき散らす事になってしまうのだ。
だから、腹が痩せたように薄っぺらい方が臭いはしない。
皮をすくと、脂肪層はほとんどない真っ赤な地肌が現れる。
脂肪層が薄くて、身質はサッパリとした味だからなのか、沖縄ではマース煮と呼ばれる塩煮での定番料理に使われるのも、このエーグヮーなのである。
このようにカーエーを含むエーグヮーの仲間は、まだほんの小さなスクの頃から珍重され食べられている魚であり、多種多様の魚が数多く棲息する沖縄においても、まさに地域を代表する魚であることは間違いないといえるであろう。
更新日時 平成23年 7月 1日 |
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