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平成23年 6月号 No.90


トビウオ平造り三種

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皮すき              焼霜

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湯霜


初夏はトビウオが旬を迎える。

これはトビウオを美味しく食べるための三種の刺身である。

常識的には他の魚と同じように皮をとって刺身にするのが普通だが、トビウオの皮は非常に薄く、除去する時途中で切れることもあることから、いっそのこと皮を取らずに食べるという方法が、焼霜と湯霜である。

トビウオの皮は薄いだけでなく柔らかく、熱を加えると美味しさが増す。

身質は脂肪が少なくサッパリとした味なので、こうした一手間に、生姜やネギなどを加えると更に美味しくなる。


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ダツ目トビウオ亜目トビウオ科ハマトビウオ属のトビウオ(英名/Coast flyingfish)は、世界中に50種類ほどの仲間がいて、日本では便宜上、角トビと丸トビの二つに大きく分けられている。

角トビとは一番大型で断面が角張っている「ハマトビウオ」のことを指し、冬から春の頃が旬の角トビは、トビウオでは一番高い価格で取引される。

いっぽう丸トビは初夏に入る6月頃から産卵期前の旬を迎え、比較的小型で体長の短かい「ホソトビウオ」が丸トビと呼ばれている。


九州北部から山陰地方ではトビウオのことを「アゴ」と呼び、角トビは「角アゴ」で、丸トビは「メアゴ」(丸アゴ)という。

トビウオのことをアゴと呼んでいる地域は、出汁としての利用が多い。

特に炭火で焼いて乾燥させた「焼きアゴ」は、西日本では高級な出汁の素として、イリコよりも高い価格で取引され、昔から博多では正月の雑煮の出汁に使うのはこの「焼きアゴ」である。

北部九州ではそうめんのツユなどにもアゴ出汁を使うのが基本であり、北部九州の人達の食生活にアゴは深く溶け込んでいる。


トビウオはもちろん出汁としてだけではなく、身はサッパリと脂質は少ないけれども、刺身や塩焼き、フライでも美味しく食べることが出来る。

例えばメアゴ(丸トビ)刺身の場合魚体も小柄で小骨も小さいことから、小骨は無理に骨抜きなどで完全撤去せず、包丁で浅くV字カットするだけで、食感に大きな問題はなく、私見としては、そのまま残して刺身にしても美味しく食べられる。

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刺身・フライ用       唐揚げ用背開き


いっぽう、トビウオの美味しさでよく知られているのが、「とびっこ」とも呼ばれているトビウオの卵である。

トビウオはカツオと同じように季節に沿って回遊する魚であり、南の方からやって来て、日本近海で産卵をしてまた南へと戻っていく。

だからメアゴの旬の夏には、腹にいっぱいの卵を抱えることになる。

トビウオの卵は食べるとプチプチと弾けるような食感が特徴で、高級な数の子の代用品的な位置づけとしても重宝がられている。

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「とびっこ」という名前は兵庫のかね徳が商標登録をしているとのことで、かね徳では以下のような、お馴染の使用方法を提案している。

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他社では「とびっこ」の名前が使えないので「飛卵」などと呼び、e-nagasaki.com では、魚住商店の飛卵を写真のように、明太子のようなパスタ風サラダ料理での使用を提案をしている。

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本号では、ここまで「食べるトビウオ」としての側面を記してきたが、やはりトビウオがその面目躍如とする所は「飛ぶ魚」ということだろう。

トビウオはマグロやカツオと同じ回遊魚であることは先に記したが、マグロやカツオは「エサ」としてトビウオを追いかけて北上する。

この必然的な側面が「飛ぶ魚」たらしめているようなのである。

そもそもトビウオが飛ぶようになった根本的な原因というのは、マグロやカツオから逃げるために「海中から飛び出した」のだ。

トビウオがカジキマグロから逃げる様子を撮った動画を、You Tubeの中で見つけたので、興味があれば下をクリックしてほしい。

トビウオが飛ぶ様子

生存の必要性から必然的に出てきた「飛ぶ」という事実は、魚が海中から陸へと上がり、今の人間へと進化していったように、トビウオの飛ぶ姿も、まさに生物の進化の一つと言えるであろう。

さて、現在「人」の進化の方はどうなのだろうか。

トビウオのように「飛ぶ」ことは出来ているのかというと、物理的に機械を使って飛ぶことは出来ているとしても、トビウオのように「自力」で飛ぶことは出来ていないのだから、まだ「人の進化」の可能性は残っているに違いない・・・?



  更新日時 平成23年 6月 1日


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