ようこそ Fish Food Times へ
The Fish Food Retail Net
平成23年 4月号 No.88
アカマンボウ平造り
これはマグロの刺身ではない。
見た目はまるで生のビンチョウマグロのようであるが、これはマンダイとも呼ばれる「アカマンボウ」である。
マンボウ? と聞いて、あの可愛い姿で尾ビレの短いマンボウを思い浮かべる方もいると思う。
マンボウはフグ目マンボウ科マンボウ属に属し4種の仲間がいる。
ところが、このマンボウによく似たアカマンボウは、アカマンボウ目アカマンボウ科アカマンボウ属アカマンボウであり、マンボウの仲間ではなく、太刀魚の巨大な化け物のような、リュウグウノツカイという魚と親戚だということだ。
大きくなるとこういう扁平な形になるが、小さい時は太刀魚のようなひょろ長い形をしているらしい。
大きくなるに従って、丸くて扁平な形に変っていくということで、ちょうど鰻は成長過程でレプトセファルスから、長く変身するけれども、その変身と全く逆の形と思えば理解しやすいだろう。
この写真は、沖縄県那覇市の魚市場に転がっていたのを撮ったものだ。
大きさは、魚体に貼った紙に手書きされているように37.6kgである。
これでも大きい方ではなく、比較的小柄なサイズだと思うべきで、大きいのになると200kgを超えるということだ。
こういう平べったい桁外れの大きさなので、取り扱いがとても難しく、商品として扱うところに運ばれてきた時はこの姿ではなく、魚市場で三枚おろしや背身・腹身に分けられたものが入ってくる。
だから、普通は小売店の店頭で消費者が見ることの出来ず、魚市場に行っても運が良ければ目にすることが出来るという代物だ。
これが魚市場から店に運ばれてきた状態である。
上は皮のほうから撮ったもので、下は身の方からの写真である。
表面上はこんなもの誰でも簡単に調理出来ると思うかもしれない。
ところが、背ビレ腹ビレを動かす分れ身がとてつもなく大きく、この分れ身の部分が平べったく斜めに広がっているなど意外と複雑だ。
身質も形も部位によって大きな差があり、マグロよりずっと手強い。
これは切身用にカットしたもの。
フライ、唐揚げなどの油料理に向いていて、まさに当世流行の骨無しであり、クセもない淡泊な味である。
価格も比較的こなれていて、500円/kg前後で仕入れることが出来るので、さぞや価格の魅力で引っ張りだこだと思いきや、誰も扱いたがらないのだ。
ニーズが低い分価格もこなれているのかもしれない。
誰も好んで扱いたがらない原因というのは、桁外れの規格外だからである。
マグロの場合は棺桶のような容れ物にスンナリと納まるのだが、アカマンボウは扁平で駄々ッ広い形なのでマグロと同じ容れ物では難しい。
しかも、消費者がアカマンボウという名前を聞いて、本マグロのように涎を垂らす訳でもなく、扱いに苦労する割りには、その身入りは少ないから疎んじられるようだ。
それでは刺身にすればどうなのか、ということで冊取りにしてみた。
冊取りにした見た目は、生マグロそっくりではないか。
これを使えば非常に安くてコストパフォーマンスの高い「マグロのような赤い刺身」が大量に出来る。
だから巻頭のアカマンボウ刺身の写真は17切れも入っているのだが、これでも300円台の売価で充分お釣りがくるのだ。
アカマンボウは全国的な観点からすると「未利用魚」の一つである。
沖縄ではマグロと一緒に混獲されることが多いので、比較的よく知られていて、一般的にも食べられる事が多いのだが、本土では、まさに「珍魚」扱いだ。
しかし、冷凍メカジキを解凍してムニエルにする位であれば、間違いなく生のアカマンボウを使った方が美味しい。
冷凍メカジキを刺身で食べようとは思わないが、生のアカマンボウの刺身はビンチョウマグロと比較すると、その味も決して負けているとは思わない。
養殖サーモン、養殖ブリの味も悪くはないけれど、たまには、アカマンボウのステーキと刺身もご賞味あれ。
更新日時 平成23年 4月 1日 |
ご意見やご連絡はこちらまで info@fish food times