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平成23年 3月号 No.87


夜光貝の姿造り盛合せ

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貝が美味しい季節となった。

アサリ貝を始め、トリ貝、北寄貝、ホタテ貝、ミル貝、ハマグリ、サザエなど、多くの貝類が1年で一番美味しい季節を迎えることになる。

この夜光貝もその例外ではなく、夏の産卵期を前に栄養を溜め込んでいる時期だ。


巻頭の写真は、夜光貝を使った刺身盛合せである。

・・・夜光貝? そんな貝は見たこともないし、もちろん食べたこともない、という人も少なくはないのではないかと思う。

そこで、夜光貝というのは、下の写真のこういう形の貝である。

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上の写真は、まだ生きている状態のもの。

これでは、その大きさが全く分からないと思うので次の写真を見ていただきたい。

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定規は20cmのものなので、これなら大きさを理解できると思う。

こんなに大きな「巻き貝」であり、同じ巻き貝のサザエと親戚である。

元の生きていた時のこの夜光貝の重さは軽く1kgは超えていた。

殻だけの写真は、上の生きた夜光貝から中身をとったものなのだが、約3週間経過しているので表面が乾燥し、見た目の印象が違ってきている。

サザエ科の中では最大の大きさとなる夜光貝は、日本の南西諸島の鹿児島県種子島より南の方に棲息している。

夜になると自分で光るからこの名前がついた・・・、という訳ではなく、自分の力で夜になって光ることはないということだ。

昔は「ヤクゲー」と呼ばれていたようで、これは「屋久貝」のことを指すらしく、当時は屋久島地方でとれる貝のようなことを意味する名称だったようだ。

このヤクゲーの表面を磨きあげると光沢がでるので、夜光貝(ヤクーガイ)になったとも言われている。

このように現在「夜光貝」と呼ばれている理由は、磨けば真珠色の美しい光沢がでるからのようである。

縄文時代以前から装飾や細工ものとして使われ、奈良時代になってくると、弦楽器の一つである琵琶の装飾として、螺鈿(ラデン)細工などにも使われるようになっていったということだ。

現在は装飾品はもちろん、洋服の高級ボタンの原料としても使われているらしい。


下の写真は夜光貝の外側に磨きを施した小さめの夜光貝である。

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何も手を加えていない夜光貝と、磨きを入れたものとの違いは下のようになる。

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では、このでっかい夜光貝を解体するにはどうするのかというと、小さなサザエとほぼ一緒であり、その大きさが違うだけだと考えたら良い。

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貝起しを「螺旋の巻き終わり」のところに入れて左に回す。

貝起しがなければ、マイナスドライバーの大きめのヤツで代替はOKだ。

サザエもいったんフタを閉めてしまうと、フタを開けるのに後がやっかいだが、この夜光貝は大きさが大きさだけに、モタモタしていると全く歯が立たなくなる。

「瞬間勝負」でササッーと処理してしまわなければならないのだ。

ちなみに上の写真は、作業として既に処置をして殻を外せる目処をつけているので、写真を撮るために格好をつけているだけであり、最初から貝起しを右手でこんな持ち方をして作業したのでは、間違いなく夜光貝の大変な抵抗にあって全く歯が立たなくなることを保証する。

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解体後はこのようになるのだが、写真では大きさが分からないので、中身の形も、サザエとどこがどう違うのかと言われそうだ。

その身もサザエと同じように硬く、刺身は薄く切らなければとても噛みきれない。もちろん、固さは部位によって随分と違っていて、殻とくっついた足の部分は固く、内蔵に近い部位は多少柔らかい。

また、筆者はこれを煮たのは食べたことはないのだが、これを煮たり焼いたりすると、更に固さが増すということだ。

夜光貝は5月から8月までの4ヶ月間は、産卵期のために禁漁となる地域が多く、この時期は食べたくても食べられないので気をつけてほしい。

まさに3月から4月は、産卵前の栄養を溜め込んだ最高に美味しい時期なのだ。

アサリ貝など夜光貝以外の貝類も美味しい季節であるのは違いないのだが、たまには、夜光貝なども食べてみてはいかがだろう。

サザエ刺身のボリュームの物足りなさを知っていれば、夜光貝のボリュームにはたぶん満足できるはずである。



  更新日時 平成23年 3月 1日


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